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映画『猟奇的な彼女』感想

猟奇的な彼女を観ました。以下、結末までのネタバレを多分に含んでおりますのでご注意下さい。







あらすじ
主人公のキョヌは、酔っているところを介抱したことをきっかけに"彼女"に出会う。失恋したという彼女の抱える深い悲しみにキョヌは寄り添い、二人は友達として交際をする。横暴だがはっきりとしていて正義感の強い彼女に惹かれるが、彼女の傷が癒えれば、自分は必要がないと考えるキョヌ。彼女のお見合いに呼び出された日を境に、二人は別れの準備を始める。手紙を書き、タイムカプセルに埋め、2年後に再会する約束をする。2年後、彼女は訪れず、キョヌは一人でタイムカプセルを開ける。彼女の手紙には、かつての恋人の死、キョヌに恋人を重ねていたこと、過去の恋を清算するために別れたことが綴られていた。その一年後、心の整理をつけた彼女はタイムカプセルを開けにやってくる。すでにキョヌの電話番号は通じず、再会は不可能かと諦める彼女。元恋人の母親が紹介してくれるという男性に会いに行くと、そこには元恋人の母親の甥である、キョヌがいた。


正直、前半部分は観ているのがつらかったです。コメディ作品の中で女性から男性への暴力はギャグとみなされる、という雰囲気は、確かにかつてあったような気がします。2013年の作品なので、そのような感覚が刷新されていることを喜ぶべきかもしれません。
一方で、後半以降は楽しめました。私は非常に鈍いので、彼女にどんな過去があったのか、手紙で告白されるまで気づくことができませんでした。私は、二人がなぜ別れなくてはならないのか、わからず、その理由を誤解していました。あれだけ仲良く(?)過ごしていた二人にとっての障壁は、彼女の両親からの反対にあると、私は考えていました。お見合いや、威圧的な父親が登場したからです。または、若いのにお見合いを急くような事情が彼女の家、または彼女自身にあると。だから、2年の間にそれらを受け入れるのか、または色んなものを捨ててキョヌのもとに戻るのかを考えるということかと思っていました。キョヌは「彼女には悲しい過去がある」ということには気づいていましたが、キョヌは彼女の過去の出来事や、キョヌへの想いに気づいていたんでしょうか。私は気づいていなかったんじゃないかなと思います。彼女を元気づけるまでが自分の役目だと言っており、彼女が「離れよう」といえば離れるまで。彼女に惹かれていたことは確かですが、両親からの反対があり、彼女からも別れを告げられれば、従うしかなかったのでしょう。なぜ自分たちが別れなければならないのか、その理由を考えたり、抵抗したりするような描写はありませんでした。別れたあとの様子を見るに、執着は大いにあったようです。それでもただ状況を受け入れたキョヌ。なぜなんだろうと不思議でしたが、「愛しているなら離してあげる」を体現しているのかもしれません。二人がすれ違う描写が作中何度も繰り返されることからも、キョヌは彼女の気持ちには気づいていなかったのかなと思います。

手紙での彼女の告白からの展開は、非常に面白かったです。過去を忘れたいと考えている彼女にとって、キョヌは未来の象徴なのだと思います。タイムカプセルを埋めた木の下で休むおじいさんを、歳をとったキョヌであると誤読させる演出は面白かったです(本当に未来のキョヌがUFOで来たという説もあるらしい)。彼女の本心が語られたあと、前半部分の様々なシーンが蘇り、その意味がわかっていきます。とくに夜の遊園地で脱走兵に彼女が語りかけた言葉が印象的でした。
そして運命的で、はじめから決まっていた二人の再会は素敵でした。

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