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【ショートショート】#132 青春

彼女と出会ったのは3年生になってすぐの

ゼミの歓迎会だった。


元々、大人数での飲み会が苦手なのだが、歓迎会という

スタートダッシュに響くイベントを欠席するほど

僕は周りの目を気にしない人間ではなかった。


1時間ほど経ち、やはりノリについていけず

トイレに行くふりをして少し休憩しようと

店の外へ出ると先客がいた。それが彼女だった。


飲み会を2人で抜け出し、公園のベンチで飲み直した。

好きな歌手も映画も同じ。こんなに話が合う人は

同棲の友達でもいなかった。


2人の距離が縮まるのに時間は掛からなかった。

気づけばどちらかの家でずっと一緒にいた。

授業もサボり、最近始めたコンビニのバイトだって

休んだ。そんなことよりも僕たちには

今この瞬間が大事だったのだ。


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新人のバイトと連絡が付かなくなった。

これでは夜勤のシフトが足りない。


昨日の夜勤からずっと働き詰めだが、

人員が足りないなら

店長の私が埋め合わせするしかない。


今日は娘の誕生日だったのに。

また娘にも妻にも怒られてしまう。

いや、怒るほど期待されてないか...。


もういつから休みを取れてないだろう。

「コンビニのバイト」はなぜだが価値の低いものだと

見積もられている。他の仕事となにが違うのだろう。


まぁそんなこと考えるほどの精神的な余裕も

時間の余裕もない。


休憩室の椅子から立ちあがろうすると

目の前が真っ暗になって床に倒れ込んでしまった。

あれ、おかしいな?体が動かない...。


早くレジに入らな



物書きになりたいという夢を叶えます