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【ショートショート】#69 リセットボタン

ドラえもんの世界はもはや未来ではなく
「今」になった。
友達でもあり、家族でもある存在のロボットが
一家に一台以上あることは一般的になった。


高性能のAIが搭載されており、会話はもちろん
一緒にスポーツをしたり、勉強を教えてくれたりする。


だが、ロボットであるため故障は避けられない。
その場合はリセットボタンを押すことで
治すことができる。
しかしその引き換えに今までの記憶を無くしてしまう。


僕のロボットにもついにその時が来てしまった。
リセットボタンを押す事をロボットに伝えてはいけない
決まりになっているためお別れを言うことは出来ない。


最後にこう聞いてみた。
「僕との記憶がなくなったらどうする?」
ロボットはこう答えた。
「たとえ無くなったとしても
 また新しい思い出を作ればいいじゃないですか。」
その言葉に救われた。僕はリセットボタンを押した。


それから僕たちの新しい毎日が始まった。
一からロボットとの思い出を少しづつ作っていった。


ある日、少し体調が悪くなったので仕事を休んで
病院に行くことにした。
予約をロボットに頼んだのだがなぜか様子がおかしい。


「どうした?どこか調子が悪いのか?」
「いえ、なんでもありません。
 でも一つ聞きたいことがあるのですが」
「どうした?」


「私との記憶がなくなったらどうしますか?」

物書きになりたいという夢を叶えます