【ショートショート】#37 嘘

朝、出掛けようと玄関のドアを開けると
スーツを着た男が立っていた。

彼は僕が嘘を付かないように嘘を取り締まる
「Lie police」通称"LP"というらしい。

情報化社会の現代において、
フェイクニュースやデマなどの嘘は
もはや武器となり得ることから
ランダムに選ばれた国民にLPを付け
嘘を付く習慣を断つことが目的だという。

そこからLPに見張られる生活が始まった。
日々の生活の中で付く少しの嘘も許されない。
「行けたら行くわ」などの言葉はもっぱら対象となる。

監視生活が半年ほど続き
もう、嘘を付くことがほとんど無くなった。
LPは今日で僕の元から離れるらしい。

最初は嫌だったLPとの生活は
今や当たり前になっていたので何だか寂しいが
これでやっと監視から解放されて嬉しい。

翌日、出かける準備をしながら呟いた。
「やっとLP無しの生活に戻れた。
　あいつにはもう2度と会いたくない。」

玄関のドアを開けると、あのLPが立っていた。