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神社の人形 後編 (02/15)【橙狐は見た】

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あらすじ
 氷室愛優ひむろあゆは、玲子の妹で憑依体質を持つ。危険な式神を二体封印をした彼女を橙狐だいだいきつねが見守る。クラスメイトの前田さんが行方不明になる。

 愛優あゆはニコニコしながら街を探索する。中身は八夜狐やよきつねだ。愛優あゆはクラスメイトを探すために体を貸した。すぐに切り替えられるので安心は安心だが、不測ふそくの事態も注意しないといけない。

八夜狐やよきつねさん。見つかりますか?」
「神社に居る」
 それだけ言うと、ずんずんと歩いて行く。彼女はアイスが食べたいと愛優あゆにねだっていた。昔は味わえないので珍しいらしい。報酬がアイスなら安いやすいものだ。

「アイス、アイス! 」
 やけにはしゃいでいるが、嫌な予感がする。おば……お姉さんは、大食漢たいしょくかんだ。神社に近づくと八夜狐やよきつねは黙る。うかがうように古い神社を見ている。

「なにか居ますね? 」
 ここまで近寄ると私にも判る。奇妙な感じは呪具じゅぐにも感じた。八夜狐やよきつねが歩き出すと神社の裏の方に回る。暗く乾燥した軒下に、段ボール箱があった。八夜狐やよきつねは、箱を引きずりだして開く。

「お人形ですね? 」
 中には小さな市松人形いちまつにんぎょうがある、着物は着ていない。裸の人形の顔はまるで生きているかのように生々しい。

「生き人形じゃな、人身御供用ひとみごくうようじゃ」
 昔は人柱ひとばしらに生身の子供や女を使う。時代が浅くなるとむごい事はせずに人形を使うようになる。ただ人形も長く壊れないと魂魄こんぱくが宿る。それは生きているのと同じだ。

「割るぞ」
 八夜狐やよきつねは、首をひねって人形の頭をくだいた。止める暇もない、人形からかすかに悲鳴が聞こえたがすぐ途絶える。すぐ横でクラスメイトの前田さんが立っていた、ふらふらしているが、人形から解放された。

因果いんがじゃの、友達が欲しかっただけじゃ……」
 人形は前田さんを友達にするために、自分の身のうちに取り込んでいた。人形を破壊することで魂魄こんぱくは破壊されて前田さんは助かる。記憶がない前田さんを連れて学校に行くと騒ぎになるが、なにしろ本人は覚えて無い。よくある家出扱いで事件は終わる。

「アイス、アイス」
 八夜狐やよきつね愛優あゆ小遣こづかいで、小豆あずきアイスをたらふく食った。次の日は腹が冷えた愛優あゆは、学校を休む。


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