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SS ブーメラン発言道 #毎週ショートショートnoteの応募用
「戻ってくるの?」
「大丈夫」
妻は不審そうに俺を見ている。出張で遠くの島に転勤になると妻は残ると宣言する。当たり前だ、不便で閉塞した土地に住みたいわけがない。「戻ってくるの?」という言葉がブーメランのように頭にこびりつく、本当に戻れるのか……
「いらっしゃいませ」
南洋のホテルで出会った受付の彼女は華やかで美しい、住む場所で人柄が変わるのを実感する。明るくて開放的で親切な彼女は理想的な女性だった。
「戻ってくるの?」
「大丈夫」
彼女から、裸身の肩にやさしくキスされる、俺は元の職場に戻れと言われた。今は現地でコネを作り、自営でも仕事を回せる自信がある。だから妻とは別れて、この島で生活したい。
「戻るの?」
妻が俺を憎しみの目で見る。俺は別れてくれと頼むと包丁で腹を刺された。彼女は捕まり、俺は数か月後に退院できた。離婚は受理される。
「戻ったんだ……」
島の彼女は、俺を怪訝そうに見つめる、島に仕事を誘致させたいから俺と寝ただけだ。用済みの俺は不要になる。
ブーメランは戻る、でも持ち主が望んでいるわけではない。どこかで道を間違えた。頭の中でブーメランのように俺の発言が繰り返される。
「道を間違えた、道を間違えた!」
バールで島の彼女を頭を砕きながら俺は泣いていた、逮捕されて保護房に閉じ込められる。24時間ずっとあかるい部屋は、まるで南国の太陽のようだ。刑事は小窓から俺をみている、俺がくるっていると判ればきっと減刑してくれる。おれは叫び続けた。
「ブーメラン発言道!ブーメラン発言道!」
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