傀儡の終わり (15/15)【橙狐は見た】最終回
あらすじ
氷室愛優は、玲子の妹で憑依体質を持つ。危険な式神を二体を封印した彼女を橙狐が見守る。神社の巫女すら躊躇する悪呪鬼来迎、橙狐は自由と引き換えに愛優を裏切れと迫られる。
私は愛優を助けるために、頭を高速回転させる。母親が今の状況を作り上げているならば勝機があるかもしれない。
力を入れて飛ぶ、母親の凪にぶつかって気絶させる。
しかし巨大な腕が目の前にあらわれると、私は横殴りにして壁に激突させた。深大寺真の体が変化していた。代わりに凶悪な赤黒い鬼が立っている。本来の悪呪鬼来迎だ。
「俺はもうこの女とは独立している、この女も贄だよ」
拳を母親の凪の脳天に叩きつけると、人体が潰れる。彼女は肉塊に変わる。その赤黒い塊は腐臭を感じた。彼女はもう呪いで腐っている。
「おい、狐か犬、こいつを壊せ!」
私をゆびさして八夜狐と犬神に命令した。笑いながら余興を楽しんでいる。私はもう力が出ない、でも愛優を助けたい。床をはって愛優に近づく、もし彼女が意識をとり戻せば、式神も戻るかもしれない。
横腹を鬼に蹴り飛ばされるとソファーに激突した。
「愛優ちゃん……」
鬼は面白そうに私を見ている。私の頭を踏み潰そうと片足をあげた。
バン!
鈍い音がすると悪呪鬼来迎の片足が吹き飛んだ。犬神がまずそうに片足を吐き出す。
「こいつは食えんな」
八夜狐が、あっけにとられた鬼に近づいてを蹴り飛ばす。壁をやぶって外に飛び出した。
彼女は悪呪鬼来迎に、ゆっくり近づくと巨大な尻尾で無数の鋼の槍を作り出してズタズタに引き裂いた。尻尾をぶんぶんと振り回すと鬼の体が削れていく、醜悪な叫び声を上げながら鬼は……消滅した。
「こんな奴なんて最初から信用してないよ」
八夜狐は、私を助け起こす。私は力を使いすぎて、ゆっくりと体が薄れる。
「愛優ちゃんを助けて……」
私は笑っていた、愛優はきっと助かる。
xxx
「愛優は、もう大丈夫?」
「おねえちゃんこそ、平気なの?」
クラスメイトも担任も贄にされる前だった。元から愛優狙いだったと思う。姉も武雄も呪詛を払う事で体がもどっていた。私は今は小さい体で愛優の肩の上に乗っている。力の使いすぎで、霊格が落ちていた。
「橙狐も復活させないとね……」
玲子は私を指でなでる。彼女のバイト代に期待しよう。愛優は、私を肩に乗せたまま、ニコニコしながら登校する。今日も愛優を見守らないと。
終わり
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?