SS 顔自動販売機 #毎週ショートショートnoteの応募用
曇天のドライブインに古びた自販機がある。錆だらけの販売機は一つだけ。
「顔自動販売機? 」
何が売られているのか判らない、自販機の全面に銀色のシールが内側から貼られている。何が買えるのかわからないが、好奇心で小銭を出す。
「百円かぁ……」
子供用のお面だろうと思う、ウルトラマンや仮面ライダー、夜店にあるセルロイド製の安いお面。懐かしい、子供の頃を思い出す。
「あんた! 何しているの? 」
ギスギスとした声で俺を呼ぶ、不機嫌な嫁と退屈そうな子供たち。俺は自販機に小銭を入れてボタンを押す、ゴトッっと音がすると商品が出てきた。取り出すと……子供の顔のお面だ。しかめっ面の顔が俺を見ている。
「うんざりだよな」
お面の口がパクパクと動くと声を出す。子供の顔は俺だ、俺は自然にお面をつけた。
「あんた! どこ? 」
彼女が自販機の前にいる子供を見る、その子はにやりと笑うと走り去る、夫はどこにも居ない。
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