失踪するクラスメイト (07/15)【橙狐は見た】
あらすじ
氷室愛優は、玲子の妹で憑依体質を持つ。危険な式神を二体を封印した彼女を橙狐が見守る。深大寺には、他の子供と違う暗い影がある。
(私が見えている)
深大寺は、私の横顔を見ながら薄く笑う。霊視能力がある。それもかなり場慣れしている、彼は成人しているかのように落ち着いて見えた。
「そうね、私は変わってるかも?」
愛優が生真面目そうな顔をする。じわりと冷えるような気味の悪い空気に変わる。のっそりと犬神が顕現した。
(こいつはやばいぞ、喰った方がいいぞ!)
馬鹿でかい声で吠える。犬だから仕方が無いが、うるさい。私は耳をふさぐ。
(ちょっと吠えないでよ)
(うるせえ、小便たれ狐、緊急事態だ)
聞くに堪えない暴言を吐く犬神が吠えまくる、でも不思議に感じる。普段なら躊躇しないで相手を食らう筈なのに、今はワンワン言っているだけだ。
「そろそろ下山の準備するね」
愛優が、その場から離れると引きずられるように犬神も引っ張られた。愛優と式神は縛られていて、許しがない限りは自由にできない。今回は愛優が主導権を持っているので愛優が歩き出せば、犬神も移動する。
(おい! 勝手に離れるな!)
犬がリードを引っ張られるようにずるずると移動する。私もあわてて追いかけた。
「深大寺君が何者でも、勝手に食べちゃだめよ」
犬神に喰われると人は魂が無くなってしまう。もちろん意識はあるが人としての、意欲が消えてしまう。それはモノと同じだ、人が人として生きられるのは、魂があるからだ。
犬神は今までも人を食らった、彼も祟り神としての力を持っている。それは精神にも肉体にも影響を与える最上級の危険な式神だ。
「愛優、あれはヤバイんだよ」
「うーん、わからないけど食べないで」
愛優は考えている様子だ、姉と神社の美成さんに相談したい。私が明日の放課後に連絡を取る事に決めた。
だがその夕方の下山時に、子供達の大量の行方不明事件が起きてしまう。山から下りた子供達は、電車に乗った後に消えてしまった。
愛優と私たちが無事なのは、式神達の守りのせいだ。家に戻り次の日は神社に行くことに決めた。
「愛優を守ってくれてありがとうね」
姉の氷室玲子が私の頭をなでる。でも私の力では何もできない、玲子の顔を見上げながら無力に感じる自分が居た。
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