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SS 執念第一 #毎週ショートショートnoteの応募用

深夜の山奥でコーンコーンと木を叩く音が響く。
「何の音?」
太郎丸が祖父の横顔を見るが黙って草鞋を編んでいる。

「おい、昨日の夜に山で音がしなかったか?」
ガキ大将の三太が手下の村の子供達を見る。早寝する子供達は音は知らないと答える。太郎丸は聞こえたと言うと三太が山へ案内しろと命令をした。

「方向しか判らないよ?」
「どうせキツネか狸だ」
三太は面白がって山に入る。山には獣道がある。動物が通る道を人間が使える。方向だけで太郎丸は山の中腹を目指すと、大きなスギの木が見えた。隣に朽ちた小さなやしろがある。手入れもされていない。

「これは?」
巨木に釘で板が打ち付けてある。文字が書かれていただろうが消えていた。三太が手を伸ばして触れると叫び出す。指が真っ黒だ。村へ戻り手当するが、ほどなく三太は死んだ。

祖父の話では村八分の女が村人を恨んで呪いを行った。板に触れると村人は死ぬ。女は死んだが呪詛は残る。祖父はつぶやく。

執念第一、触らぬ神に祟りなし」


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