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SS 錆び付いたブランコの前に、「遊び方」というプレートがあった。#ストーリーの種

錆び付いたブランコの前に、「遊び方」というプレートがあった
「この遊具の撤去でいいんだよね?」
役所から依頼されて撤去の立ち会いに来ている。俺は同僚に聞いた。書類を確認する。
「昭和三十年代の遊具だ、これでいいね」

あまりに古すぎて驚く。俺はプレートを見てみる。
一.夜中に乗っては、いけません。
二.昼間は大人が触っては、いけません。
三.動いている場合は、誰かが使ってます。
イタズラだろうと思うが、字体も古い。かなり昔からプレートがあるように見える。鎖も錆びだらけだ。子供が書いたように思えない。正式なプレートに見えるくらいにしっかり作ってある。

「おーい、分解をお願いします」
同僚が業者を呼ぶ。ボルトを回すためのレンチを持った業者が近づく。ブランコが揺れている。誰かが乗っているように見える。振動するブランコは大きく揺れて近づけない。業者が鎖をつかもうとした。

「あっ」
一声あげると業者は腕を押さえた。関節が逆方向に曲がっている。撤去は中止された。

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「それで撤去は無理だと?」
役所の人間は俺の説明に不満を漏らす。なにしろ撤去しようとするとケガ人が出る。お祓いをしてもダメだ。さすがに霊能者は呼ばないが普通とは思えない。リスクが高いと判断して今日は断りの説明に来た。

「現場で見せてもらえますか?」
自分の目で確認したいと言う。それなら一人で行けよと思うが俺は説明役として承諾する。公園には誰も居ない。少子化で、そもそも子供が居ない。さみしい公園の中に、あの錆びだらけのブランコがある。

「すぐに壊せないんですか?」
役人はぼろいブランコの支柱を蹴る。俺は汗が滲み出る。役人は調子に乗ったのかガンガン蹴り始めた。笑っている。いや焦っている?彼は徐々に恐怖の表情を浮かべると俺に助けを求めた。

「足が止まらない」

役人は自分で足が砕けるまで蹴り続けた。

終わり

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