マガジンのカバー画像

創作民話 関係

111
創作民話をまとめています
運営しているクリエイター

#怪奇

SS 焚火霊 #爪毛の挑戦状

夜道で焚火を見ながら侍は酒を飲む 「焚火があって助かります」 商人風の男が荷物を背負っている 「峠を下りると道に迷ってしまって」 商人は荷物をおろすと座る 「ここは霊が出るらしい」 侍は、つぶやく 「傭われた俺はここで幽霊を退治するために来た」 商人は不思議そうに 「幽霊とか恐ろしいですな」 侍は商人を見ると 「夜が明けて目が覚めると、食い物と酒が置いてあるんだ」 指さす先に食べた後の弁当がある 「でもな、それは俺が最初の日に持ってきたものだ」 商人が 「最初の日に持っ

SS 世界妖怪図鑑:妖しい花 創作民話

旦那が帰ってくると、血の付いたハンカチを貰う。 これはとても大事なものだ。 「今日は女だったよ」 大きな剣を鞘から抜くと、研ぎ始めた。 この当時は公開処刑が行われていた。罪人を群衆に見せながら 首を切り落とす。罪に対して罰を見せる事で、犯罪を抑止する。 血が処刑台から流れると女達は、ハンカチで拭う 魔力が宿ると信じられていた。 高く売れる場合もある。 私は台所に行くと、ハンカチを肌に当てる。 ハンカチの血は私の胸から吸収された。 「これでしばらくは持つわ」 私は人間ではな

SS 顔部 #爪毛の挑戦状

「物部殿」梶原が俺の前にあぐらで座る。「織様を頂きたい」いつもの催促だ。娘は嫌がっている「お前に嫁がせる気は無い」恨み顔で父親の俺を見ると出て行く 豪族同士の婚約で勢力が変わる。梶原は評判が悪い。やたらと婚姻をすると妻が何人も死んだ。領地は奴が奪う。娘が座敷に来ると「また来たのですか?」と嫌そうな顔をする「大丈夫だ、お前は嫁やらん」美しい娘は納得すると嬉しそうだ 「親方様大変です」深夜に近習が寝所に報告をする「檻様が…殺されました」忍び込んだ賊に殺されたと言う、俺は娘を見

SS 燃える雨雲 #爪毛の挑戦状

※残虐な描写があります、注意してください。 子供がふらふらと歩く。二階にある部屋の中を食べ物を探すかのように歩き回る。私がここに来たのは昨日だ。親から売られると ここに閉じ込められた。 飢饉が来ると子供は売られた。「頑張るんだよ」十四歳になった私は貧農の子供だ。皆が食べる事を優先にする。子供を売る事で食糧確保するのは手っ取り早い。 母親は手をふって私を見送った。奉公に出されると言うが実際は人売りに渡された。私は恨むつもりもない。女の子は高く売れる。私は他の兄弟達の役に立

SS 夢は夜ひらく 創作民話

夜に目覚めると私は街へ向かう。私のような素性の判らない女はまともな場所では働けない。薄汚れた街角で立つと客が来る。お互いが納得できる値段で私は安宿に客を連れて行く。粗末なベッドしかない部屋で客は我慢できずに私に抱きつく。 少しばかりの金を貰うと朝日が昇る頃にくたびれた酒場に行く。私はその金で食事をして街の外へ歩いて帰る。 「どう?いい客は居るかい?」 顔見知りの太った女が声をかける。年老いているので客は寄りつかない。羨ましそうに私の顔を見る。私はこの界隈ではかなり美しい方

SS 最後のおつかい #ストーリーの種

「最後のおつかいだよ」  手渡された握り飯を手に持って家を出た。十歳になると村の風習で子供を山に送り出して山の神様に挨拶をさせるのが習わしだ。山頂に登り藁葺き屋根の村を見下ろすと、霧が濃いのかよく見えない。ゴホゴホと咳が止まらない。体が弱いのか僕は両親から疎まれていた。 「最後かぁ……」  山の神様に出会えない子供は殺される。そんな噂がある。年上の何人かが消えたことがあるが、誰も何も言わない。村人に殺されたのだろうか? 「神様いますか! 」  声を出して探す、元からどう