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創作民話 関係

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2024年6月の記事一覧

SS 桃太郎 【#ボケ学会参加作品】(767文字くらい)

 鬼はどこにいるのか…… 「旦那、あらかた殺しましたよ」 「うむ」  殺戮の場は血まみれで恐ろしいくらいに鉄臭い。猿田彦が太郎の前でにやりと笑っている。 「敵ではありませんね」  雉ノ助が長い刀を振り回しながら鬼達にとどめを刺す。彼らは道中で雇った浪人だ。 「あとはおぬしだけだ……」  足の傷で彼女は動けない。鬼の娘は泣いてるようにも笑っているようにも見える。 「さっさと殺しな」 「あっしにやらせてくださいよ」 「まて」  残忍な顔で猿田彦が前に出るのを手で制

SS 戻った男 【#紫陽花を】シロクマ文芸部参加作品 (910文字位)

 紫陽花を手に取りハサミで切り取る。毒はあるが煮詰めれば薬として使えた。  吊られた蚊帳の中で畳の上にあおむけに女が横たわっている。青白い顔で生気がもう無い。 「ケホケホ……」 「姉さん、お薬よ」 「もういいわ……早く死にたい」 「いつも、そればかりね」 「だって苦しいんだもの」 「あの人が帰ってくるわ」 「戻らないわ」  姉の許嫁は、仕官のために武者修行で旅している。剣客として認められれば俸禄をもらい家を持てた。姉と私は戻らないと確信していたが……  雨が降り続き、

SS デスアップ【私が放置してある小説のタイトルやプロット参加枠】

 頭上に剣がふりおろされる。頭蓋骨をたたき割られる瞬間に、まぶしい光が見えた。 「これが、例の男なのか? 弱くないか?」 「弱くなんかありません」  黒鎧の騎士は残忍な顔で姫を見ると殺そうと剣をふりあげた。そして気がつく……自分の胸から銀色の刃が突きでている。考える暇もなく体を両断された。 「不死の騎士様!」 「姫、無事ですか……」  貧血でふらふらしながら頭を割られた男が剣を握っていた。彼は死んでも生き返る不死の騎士。 xxx 「ご無事でしたか」 「平気さ」

SS 食べ過ぎ注意【粒状の総料理長】#毎週ショートショートnoteの応募用(500文字位)

「まずいな」 「まずいですね」  塹壕の中で古参兵と新兵がレーションを食べている。戦争当初は、パンやチーズが出ていたが、今はカブの入ったシチューしかない。 「肉食べたいです、肉、肉」 「うるせえな」  塹壕を掘るスコップで新兵を殴るまねをする。殴ったら普通に死ぬ。なにしろ敵兵を殺すのによく使うからだ。  ドカン!  バラバラと土が振ってくると食い物が台無しだ。敵の砲撃の応戦でいそがしてく食ってる暇も無い。 xxx 「おい喜べ、有名な粒状の総料理長様が戦場に来てく

SS ウィズ・コード【#いやんズレてる】#青ブラ文学部参加作品

 魔術は解明されていない、特に古代魔術は複雑で難解で意味不明だ…… 「この本はいくらです」 「1ギルで」  古書店で見つけた古代魔術本は、たった1ギルで売られていた。ポーションだって5ギルだ。 「そんなに安くていいんですか?」 「誰もそれを読めないんだよ……」  俺はかけだし魔術師で、やっとダンジョンに入れるだけの力量を認められた。スライムを200匹も倒すはめになった。しかし魔術を使うにしても店で売られている巻物は、簡単な発火魔法でも50ギルはする。ダンジョンの魔物を

SS 新型兵器【三日坊主のクレーター】#毎週ショートショートnoteの応募用(410文字くらい)

 古参兵が新兵に指示を出す。 「もうちょっと右」 「了解」  携帯できる擲弾で狙いを定めて、大きな筒に弾をこめて引き金をひくと遠くに爆発力強い弾丸を飛ばせる。  どん、どん、どん  黒い煙が広がって薄まると地面に穴が開いている。 「新型は調子がいいな」 「クレータできてますね」  普通なら爆発して破片が飛ぶだけだが、新型は重い銃弾なので地面に穴を開ける。新兵が不思議そうに聞いてくる。 「何に使うんでしょ?」 「うーん、わからん。穴あけてどうするんだ」  人が入

SS 太郎の仕事【お題:#気になる口癖】青ブラ文学部参加作品

 その昔、村のすぐ近くの山に大きな岩が乗っていた。 「大きな岩だのぉ」 「落ちると村がつぶれるのぉ」  みなが心配するが落ちる事は無い、落ちないのだから心配するだけ無駄だ。だから村人は岩の事を忘れていた。  その村には一人の大男が住んでいる。名は太郎、この男は力は強いが、なまけもので働きもしない。口癖は「忘れろ」だった。女房が働いて自分は何もしないから村人からは評判が悪い。 「すいません、疲れているようで……」 「なんもしないのに疲れるわけがない」  村人から責めら