![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/143734935/rectangle_large_type_2_15ed4b0fc9f4aa17fe533bef0dcca62b.jpeg?width=800)
SS デスアップ【私が放置してある小説のタイトルやプロット参加枠】
頭上に剣がふりおろされる。頭蓋骨をたたき割られる瞬間に、まぶしい光が見えた。
「これが、例の男なのか? 弱くないか?」
「弱くなんかありません」
黒鎧の騎士は残忍な顔で姫を見ると殺そうと剣をふりあげた。そして気がつく……自分の胸から銀色の刃が突きでている。考える暇もなく体を両断された。
「不死の騎士様!」
「姫、無事ですか……」
貧血でふらふらしながら頭を割られた男が剣を握っていた。彼は死んでも生き返る不死の騎士。
xxx
「ご無事でしたか」
「平気さ」
銀白色の髪は細く透きとおる、盲目の少女が男を見つめる。この世界に来て初めて出会った女性だ。
「またレベルアップですか?」
「そうだなレベル62かな」
転生した時に神から授かったのは、死んでも蘇る奇跡の力。そして生き返るたびに、この世界特有の能力値=レベルが上がる加護が付与されていた。はじめはスライムを倒していたが強くならない。不思議に思いながらも森を探索しているとキメラに遭遇して一撃で死んだ。
(せっかく転生したのに……)
だが光が見えると命を取り戻し、そして強くなる。死に戻りだ。それ以来ひたすら死んだ、死んで敵の技を覚えた。
盲目の少女と暮らして居るが、彼女に手は出していない。そんな気分にはなれない。愛とは違う、家族に感じる、何よりも大切で大事にしたい。
「ダンジョンのお仕事が来てました」
「またか……」
深淵のダンジョンの奥底に眠る秘宝を探してくれと頼まれる。ただ一つのどんな願いでもかなえる宝玉と噂があるだけで、存在すらも不確かであいまいだ。
(中のモンスターは強いんだろうな)
生き返るけど死ぬ時は痛い、死ぬくらいに痛いわけで、自分から死にたいとは思わない。断ろうと思う。具合の悪そうな盲目の少女に告げた。
「話してみるよ」
「わかりました……」
翌朝になると……彼女は命が途切れていた。体が弱いのは判っていたが、こんなに早く死ぬとは思わない。蘇生魔術は寿命には効かない。奇跡だけが頼りだ。急いでギルドに走る。
「深淵のダンジョンへ行く」
「ああ……急にどうした」
「報酬は、宝玉をもらう」
「わかったよ、好きにしてくれ」
誰もが入らない深淵のダンジョン、カビと化け物と湿気で数時間も生きられない地獄、中の空気を吸っただけでも弱って死ぬ。
(いくらでも死んでやる)
十階層……百階層……千階層、俺は死に続けた。いつしか死の痛みで狂っていた、なぜ地下に降りるのか、何を求めるのか、永遠のような時間を使い奥底の台座を見つける。あわく白い光の宝玉に触れると盲目の少女が目の前にいた、銀白色の髪を見ると記憶がよみがえる。
「あ゛ぁぁぁぁ」
もう言葉も忘れた、涙が流れる理由もわからない。盲目の少女が彼に触れると、そっと願いをかなえた。
xxx
「不死の騎士はどうした?」
「深淵のダンジョンから戻らない……」
どこかの遠い村で銀白色の髪の少女と、ただの男が静かに暮らしている。彼の願いはたった一つ、「彼女と共に人生を……」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?