僕と妻と惑星と



この文章は2022年12月30日に書いている。
昨日、12月29日、妻の菜月が入院した。病名は非定型精神病だった。
12月23日から今日までずっと、妻の菜月は泣いていた。きっと心の中ではずっと泣いていたのだろう。

なんで泣くの?どうした?
これは彼女の力になりたかったから、その理由を聞いていた。力になりたかったのだ。

彼女は問いかける僕に対して、なんで私と付き合ったの?なんで私と結婚したの?と聞いてきていた。
僕は答えに窮した。彼女はそれに激怒した。
いっそう症状を悪化させたことだろう。
なぜ答えられなかったのか?
それを言うことで、彼女に失望され嫌われることが怖かったからだ。
彼女は僕が普段気にしていないところに対しての記憶力がいい。そしてその記憶は抜群に勘が良いのだ。きっと僕が薄っぺらい人間であることを見透かし失望していたことだろう。僕はこんなにも好きな彼女の魅力を言葉にできない。

僕は同棲前、そして同棲してからも、仕事が継続できず、退職を繰り返す彼女にこう説いた。
僕にとって理想の配偶者は、この困難に対して一緒に立ち向かっていける、一緒に努力していける人なんだよ、と。困難に対して立ち向かえる人が好きだと。僕の大学の指導教授の言葉を引用して。

人生とは坂道だ。登り続けなければ転げ落ちる。一度転げ落ちてしまえば、その先また登り続けるにはさらに大きなエネルギーを費やすことになるであろう。弛まぬ努力をしなければならないと。

僕にとってこの言葉は呪いだ。とても一人では立ち向かえそうにない。僕は弱いのだ。支えてくれる人が欲しい。この言葉は、本当に彼女に対して言っていたのか、あるいは僕自身に言っていたのだろう。

ニュートンはリンゴが木から落ちるのを見て、なんで重力を発見できたのか分かる?

月と地球の関係、万有引力と遠心力の釣り合いだ。紐に括りつけたボールぐるぐる回してみてほしい。あなたが地球でボールが月。離れようとする力が遠心力なら、それに反する紐が万有引力だ。

僕が近づいたきっかけはあなたのありのままの姿の美しさに惹かれたから。
同じようにあなたの美しさに惹かれた隕石たちが、あなたを傷つけ、あなたの心に消えない爪痕を残していったのかも知れたい。

菜月と暮らして分かった。遠くから見えた綺麗な丸いお月様の表面には、あなたの美しさに惹かれて寄ってきた隕石によってボロボロに傷ついていた。月と地球はいつも同じ力で釣り合ってる。僕と菜月の心は近づいたり離れたり。でもその紐は切れることはない。僕はあなたにとっての地球になれていますか?

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