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「今、Tポイントカードをつくると500円分の図書カードがもらえますよ」という言葉に揺れた連休2日目

連休2日目の金曜日。いつも起きる時刻よりも2時間ほど遅くに起きた。

ダイニングに向かうと椅子に座った家内がテレビの画面を眺めている。きれいに片付けられたテーブルの上には、ガラスケースに入ったバターとマーマレードの瓶が置かれていた。

トーストサンドと水出しコーヒーの朝ごはんを食べてから自室に戻り、買いだめした本を少しずつ読み進める。1冊の本を手に取って読み進めて、読めなくなると次の本を手に取って読み進める。

複数の本の内容が微妙に関係してきて面白く読み進めることができる。最近発見した、何冊か並行して読み進める読書法。みんなそういう感じで読んでるのかな。ようやく1冊読み終えたので、読本枠が1枠空いた。

昨日に引き続き家の近くの大きな本屋に向かう。灰色の空からはポツリポツリと雨が降り出していて、大きめの傘を差して道を歩く。湿り気のある空気が半袖シャツの腕にまとわりついてくる。

辿り着いた本屋の店先でそれほど濡れていない傘を畳んでいると『Tポイントカード発行受付』と印字されたのぼりが立つ簡易机の向こう側にいたおばさんがぼくに近づいてくる。

最近この大きな本屋で本を買うことが増えていて「Tポイントカードはお持ちですか?」と毎回レジで店員に聞かれて「持ってないです」と毎回答えていた。最初はなんとも思っていなかったが、何度も聞かれると、ポイント分損しているのではないかと思うようになっていた。

ぼくの迷っている様子をみたTポイントのおばさんは「今なら500円の図書カードがついてきます。今週でキャンペーンが終わるから、今申し込んだ方がお得ですよ。手続きは簡単ですから」と畳みかけてくる。

受付のパイプ椅子に座ったぼくに「スマホは持っていますか?」と聞いてくるTポイントおばさんはぼくのスマホの画面を指さしながら指示を出してきてどんどん手続きを進めてしまう。

それほど簡単ではない手続きをジメジメする受付で済ませて、仮カードと500円分の図書カードを受け取り、Tポイントおばさんにお辞儀をすると眼鏡レンズの内側に汗が一滴落ちた。

眼鏡のレンズをハンカチで拭きながら店内に入って行くと思った以上に人がたくさんいて、ごった返すというくらいではないが、カフェスペースに空席はなく、レジカウンター前には間隔を空けて5人ほどが並んでいた。

今日読み終わった1冊は昨日の積ん読予想を覆して、貫成人著「ハイデガー」だった。この入門書はとても読みやすかった。「ハイデガー」の最後のページに「関心を持たれた場合、中公クラシックス『存在と時間』、ちくま学芸文庫『ヒューマニズムについて』をまずお勧めする」と書いてあった。

確かに関心を持ったが、ハイデガーに向かうのはちょっとどうかなーと思いながら、上記書籍を探してみたがみつからない。検索機が空いていたので調べてみると、どちらの本も在庫無しだった。やむなく本棚を眺めて歩く。

昨日買った「思弁的実在論と現代について」千葉雅也対談集も、けっこう面白く読み進めている。対談のなかで千葉雅也著「動きすぎてはいけない」のことが頻繁に出てきて、当たり前だが面白そうに書かれている。対談を読んでいると「動きすぎてはいけない」を読みたくなる。

以前に同著を棚で見つけて、パラパラとページをめくった時はとても読めそうにない感じを受けたが、買おうかどうか悩みはじめる。1枠空いた読本枠に滑り込ませるかどうか。他にこれといった買いたい本はないので、思い切って買ってみてもいいかなと思い、本が置いてある棚に向かう。

棚にある「動きすぎてはいけない」を見つけて手に取り、パラパラとページをめくるとやっぱり難しそうに感じて迷う。その時ポケットに入っている500円分の図書カードに気づいた。

同著は1100円で決して安くないが差額の600円で買える。ページを閉じて本を持ってレジに向かう。間違いなく積ん読に回るだろう本に読本枠の残り1枠を使ってしまった。

レジで会計を済ませて、本屋の出口に向かう。店先で暇そうにしているTポイントおばさんと目が合う。「先ほどがありがとうございましたー」と声をかけてくる。「500円分の図書カード、使わせてもらいました」とぼくは言う。

明日は本屋に向かわない。向かわないよ。向かわないかな。どうかな。

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