見出し画像

生じて、捨てる

乗車したまま積載量を測る入口ゲートに車を停める。パワーウィンドウを下げて車検証を係員に手渡す。確認した車検証が返ってきて、1番に向かってください、と係員が言う。パワーウィンドウを上げてアクセルをゆっくり踏み込む。

到着した1番の係員に誘導されてゴミ山の前にバックで停車する。運転席から出てバックドアを開けたぼくは、ラゲッジスペースから取り出した燃えないものをゴミ山に向かって放り投げる。何度か繰り返した後、ラゲッジスペースのなかを覗いた係員が、次は2番に行ってください、と言う。バックドアを閉めたぼくは、ありがとう、と言って運転席に乗り込み、車を運転して2番の場所に向かう。

車は構造物のなかに入り2番の係員に誘導されてバックで停車する。運転席を出てバックドアを開けたぼくは、ビニール袋に入ったラグマットを手に持ち、ゴミが大量に集積されている階下に向かって放り投げる。階下に見える大量のゴミ、細かくゆれる色、想像する底の深さ、鼻腔に残る匂い、圧倒されていることに気づく。気づいていないふりをして車に乗り込み、3番の場所に向かう。

誰もいない3番の駐車スペースに車を停める。助手席に置いてある紙袋とビニール袋を手に取ってドアを開ける。紙袋から丸型の蛍光灯を取り出して電球や蛍光灯が捨てられている箱に入れる。ボタン電池が入ったビニール袋を破って電池類が捨てられている箱に入れる。

運転席に乗り込んだぼくは、破れたビニール袋と折りたたんだ紙袋を助手席に置いてアクセルを踏み込む。4番、5番、6番を通過して出口ゲートに向かう。

投げ捨てる不安と場所に集積されたもの。大量に捨てられた何かと悪の反応。影響に抗う感情を捨てて忘れる感覚。生じた狂いを感じながら、ぼくは車を走らせる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?