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忘れて冒険する

昨夜から「羊をめぐる冒険/村上春樹」を読んでいる。親父が亡くなった時に読んでいたから12年ぶりか。その間に1度読んだような気がするけど、内容はほとんど覚えていない。

手元にある講談社文庫の上巻は2003年4月15日第50刷発行、下巻は同日第49刷発行とそれぞれ巻末にある。本文の字のサイズがとても小さくて、目が馴染むまで少し時間がかかった。老眼の足音が聞こえる。

上下巻ともブックオフの値札シールが貼ってあり1冊250円。本体448円(税別)なので、そこそこ良い値段で購入したようだ。どこのブックオフで購入したのかは、覚えていない。

読み始める前に、ブックオフの値札シールを剥がそうとして失敗した。12年も経てばシールも劣化していてカバーに貼りついて剥がれにくくなっている。

ゆっくり剥がしてもシールの紙部分だけが剥がれて、粘着部分が汚く残ってしまった。剥がしはじめたからにはきれいにしたい。子どもたちの文房具類が入った箱の中を漁って、小さなスプレー缶のシール剥がしをみつけた。

カバー裏側の値札シール痕にシール剥がしスプレーを吹き付けて、付属のヘラで均していると粘着部分がゆるくなってくる。スプレーを吹き付け過ぎたのか、油を塗ったようになって本のカバーが透けてくる。慌ててティッシュでふき取とり、指でカバーを触って粘着部分が取れたことを確認する。

きれいになった本にブックカバーをかけようとしたが、今回はやめておいた。電車のなかで読んでいる本の表紙を誰かに見られても、どうということはない。本のカバーを見た人が、「羊をめぐる冒険」だ、と一瞬思うだけで記憶にも残らない。

ぼくが再び読みたくなったのはどうしてだったか。誰かが読んでいた「羊をめぐる冒険」の表紙を見たのかもしれない。記憶には残っていないけど。


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