プロ野球の運営会社はどんな会社?♯ 10 株式会社読売新聞グループ本社

 日本で最も歴史があるプロ野球球団、読売ジャイアンツ。球団創設以来、ジャイアンツを運営してきた日本を代表する新聞社ですが、株式会社読売新聞グループ本社は非上場企業であり、謎に包まれている部分もあります。今回はそんな読売新聞グループ本社について調べてみました。

◯読売新聞グループ本社の歴史

 読売新聞が創刊されたのは1874年、2024年で150周年を迎える歴史ある新聞社です。1924年に正力松太郎氏が社長となり、その10年後の1934年、正力氏の働きかけによって、読売ジャイアンツの前身である大日本東京野球倶楽部が発足、ここから日本のプロ野球の歴史が始まりました。そう考えると、ジャイアンツは読売グループの中でも長い歴史がある事業といえます。

 1953年に日本テレビが放送を開始、1986年に東京本社の新聞制作が完全コンピューター化、1995年にニュースサイトを創設して、デジタルサービスを開始、メディア・コングロマリット(放送、出版、インターネットなど多くのメディアを傘下にする企業)としての地位を築いていきます。

◯現在の読売新聞グループ本社の事業

 2002年から読売新聞グループ本社が持株会社となり、読売新聞グループ本社を含む以下の7社を基幹7社とするかたちに組織を変更しています。

①読売新聞グループ本社
②読売新聞東京本社
③読売新聞大阪本社
④読売新聞西部本社
⑤読売巨人軍
⑥中央公論新社
⑦よみうりランド

 この基幹企業に様々な関連企業があり、例えば、東京本社の関連企業として報知新聞社があります。

 1994年、ジャイアンツに所属していた槙原寛己さんが完全試合を達成した試合が当時の福岡ドームで開催されましたが、これは読売新聞西部本社が福岡にある関係で、ジャイアンツの主催試合を福岡で開催することが当時はあったからです。また、現在でもジャイアンツが京セラドーム大阪で主催試合を開催することがあるのも、読売新聞大阪本社があることが大きな要因になっています。

◯読売新聞グループ本社はどのように利益を出しているのか

 かつて読売新聞は1000万部以上を発行していましたが、2022年11月現在で発行部数は約657万部に減少しており、紙媒体の新聞の発行部数はこれからも右肩下がりが続く可能性が高いです。発行部数が減っているということは販売部数も当然減りますし、広告収入も1000万部以上を発行していた時代と比べると、減っていることが予想されます。

 最初にも述べた通り、読売新聞グループ本社は非上場企業のため、財務状況を報告する義務がなく、全体の利益は分かりますが、各社事業別の利益は公表されておらず、そのため、ジャイアンツの財務状況もよく分からないのが現状です。読売新聞グループ本社は2023年3月期、つまり2022年4月1日からの1年間で約55億円の純利益を出しています。どの事業で利益を生み出しているのでしょうか。

 まず、ジャイアンツについてですが、読売新聞グループ本社からの資金注入がなくても、単独で利益を出している可能性が高いです。しかし、ジャイアンツは本拠地である東京ドームを所有しておらず、多額の使用料を支払っているはずですので、莫大な利益が出ているわけではないと思います。

 新聞に関しても、発行部数が以前よりも減少しているとはいえ、利益は出ていると思いますが、新聞は製作から販売に至るまでにかなりの工程と人件費が掛かるため、ここも莫大な利益が出ているとは考えにくいです。

 私は読売新聞グループ本社で最も利益を出しているのは不動産事業だと思います。読売新聞グループ本社と読売新聞東京本社は大手町の読売新聞ビルに入居しており、このビルは読売新聞グループ本社が所有しています。読売新聞ビルには読売以外の企業もオフィスビルに、他にも商業施設、ホール、クリニック、保育園などが各フロアに入っており、読売新聞グループ本社はテナント収入があります。阪神タイガースを運営している阪急阪神ホールディングスも最も利益を出しているのは不動産事業で、阪急うめだ本店と阪神梅田本店が入っている大阪梅田ツインタワーズなど、阪急阪神ホールディングスが所有している不動産のテナント料で利益を上げています。読売新聞グループ本社は東京の一等地で不動産を所有しているため、そこで大きな利益を生んでいることが予想できます。

◯ジャイアンツの新球場建設について

 ここ数年、ジャイアンツの新球場建設が噂されることが増えています。ジャイアンツは1988年シーズンから東京ドームを本拠地としています。日本初のドーム球場として、当時は時代の最先端でしたが、開場から35年が経過した現在は老朽化が進んでいること、決して広くはない球場に野球開催時は43500人を収容するため、座席同士の間隔が非常に狭い構造になっていること、何より東京ドームが読売新聞グループ本社やジャイアンツが運営している球場ではなく、各球団(もしくは球団を運営する会社)が球場を運営することで利益を上げている背景があり、ジャイアンツの新球場建設について話題になることが増えました。

 ジャイアンツが新球場建設に踏み切れない理由として、東京ドームの立地の良さがあると思います。立地だけを考えると、東京ドーム以上の場所に球場を建設することはほぼ不可能で、この立地こそが東京ドームの大きな魅力になっています。さらに2022年に東京ドームは大規模改修を実施、東京ドームは読売新聞グループ本社やジャイアンツの所有ではないものの、連携は取っており、改修の際も東京ドームとジャイアンツで協議を重ねながら進めたそうです。これらの背景があり、ジャイアンツの新球場移転については当分はないという見方もあります。

 しかし、それでも私はジャイアンツの新球場移転の可能性は十分にあると思います。もちろん東京ドーム側にとってもジャイアンツが本拠地として東京ドームを使用していることが大きな利益になっていますが、ジャイアンツが使用をしなくても、運営が十分にできる見込みがあります。東京は現在、イベント会場の不足が深刻になっているため、ジャイアンツの試合がなくても、コンサートなどのイベントで利益を出すことが可能な状況にあります。そのため、北海道日本ハムファイターズと札幌ドームのようなケンカ別れではなく、東京ドーム側がジャイアンツを温かく新球場へ送り出す可能性があると思います。

 もう1つの理由は日本の人口が減少している点です。出生数は2016年から7年連続で減少しており、2022年は80万人を下回り、統計開始後過去最小となりました。今後、日本の人口が減ることは間違いない状況になっています。そのため、これまでは東京ドームという東京の一等地に43500人収容の球場を本拠地にしていることが大きな武器になっていましたが、今後は収容人数が減っても、客単価を上げたり、リピーターを増やすことのほうが重要になってきます。そのため、新球場を建設してジャイアンツが新しいビジネスモデルにチャレンジする可能性があると思います。

 新球場の候補として、築地の名前が上がることが多いですが、私が考える有力な候補地は別にあります。それはよみうりランド内のエリアです。よみうりランドは東京の稲城市と神奈川川崎市多摩区にまたがる場所にありますが、稲城市のエリアに新球場が建設されると考えています。

 その根拠として、ジャイアンツは現在、ファームの本拠地として使用する予定の新球場を建設しており、完成は2025年3月を予定しています。新球場は水族館一体型となり、周辺に飲食・スポーツ関連施設を備えた「TOKYO GIANTS TOWN」(東京ジャイアンツタウン)となる予定で、水族館を含めたグランドオープンは2026年度中となる予定です。地図を見る限り、1軍の本拠地もよみうりゴルフ倶楽部の一部を使用するなどで場所は確保できると感じました。

 正直、私はこのTOKYO GIANTS TOWNの詳細が発表された際、「巨人といえど、ファームの球場を中心とした構想にここまでの費用を掛けるのか?」と思いましたが、これが最終的に1軍の本拠地を建設するための準備と考えれば、自分の中で腑に落ちました。もちろん、1軍の本拠地が建設されなくても、TOKYO GIANTS TOWNが魅力的なものになるのは間違いありません。しかし、ジャイアンツはこのエリアへの1軍の本拠地移転に向けて、既に動いているというのが私の考えです。

TOKYO GIANTS TOWN①
TOKYO GIANTS TOWN②
TOKYO GIANTS TOWN③
TOKYO GIANTS TOWN④




◯出典
・読売新聞社の会社案内サイト「読売新聞へようこそ」 2023年11月11日
https://info.yomiuri.co.jp/index.html

・読売新聞社の会社案内サイト「読売新聞へようこそ」 読売新聞小史 2023年11月11日
https://info.yomiuri.co.jp/group/history/index.html

・読売新聞社の会社案内サイト「読売新聞へようこそ」 読売新聞グループ概要 2023年11月11日
https://info.yomiuri.co.jp/group/about/index.html

・文化通信 読売基幹7社 2年連続で増収増益 当期純利益は42%増55億円 配信 2023年6月13日
https://www.bunkanews.jp/article/333593/

・厚生労働省 人口動態調査 2023年11月11日
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html

・読売ジャイアンツ(巨人軍)公式サイト 「TOKYO GIANTS TOWN」構想について ―国内初、球場と水族館が一体化したスポーツとエンターテインメントの融合―  2023年11月11日
https://www.giants.jp/news/6748/

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