プロ野球の運営会社はどんな会社?♯ 4 ヤクルト本社

 まず、ヤクルトの社名って株式会社ヤクルト本社なんですね。これが今回いちばん驚いたことです。

 ヤクルト本社が設立されたのは1955年ですが、1935年から乳酸菌飲料のヤクルトの製造・販売を開始しており、設立当初の事業が現在でも会社の柱として続いています。

 ヤクルト本社による球団運営が始まったのは1970年シーズンからですが、ヤクルト本社が球団の株式の一部を保有するようになった1968年、プラスチック容器によるヤクルトの販売が始まりました(それまでは瓶による販売)。ヤクルト本社としては、球団を保有することによって、知名度とイメージをアップして、さらなる事業拡大の狙いがあったのだと思います。

◯ヤクルト本社の事業

 ヤクルト本社の事業の大きな柱はヤクルトなどの飲料の販売であり、これは食品事業になるのですが、他にはどのような事業があるのでしょうか。

 ヤクルト本社は食品事業以外に国際事業、化粧品事業、医薬品事業、研究開発事業、生産活動のセグメントがあります。この他に販売会社などの関連会社が約170社あり、東京ヤクルトスワローズもこの中に含まれます。

◯結局、ヤクルト本社はどの事業で利益を出しているのか

 2023年3月期の有価証券報告書によると、ヤクルト本社は2022年4月1日からの1年間で約500億円の純利益を出しています。ヤクルト本社の有価証券報告書のセグメント欄は少し特殊で、日本、米州、アジア・オセアニア、ヨーロッパ、医薬品製造販売事業、その他事業に分かれています。最も利益を出しているのは日本で約470億円、2位がアジア・オセアニアで約180億円、3位が米州で約160億円の利益を出しています。アジア・オセアニアでは20以上の国と地域、米州では5ヶ国でヤクルトが販売されており、日本国内の販売と共にヤクルト本社の利益の柱になっています。

◯近い将来、スワローズの売却はあるのか

 ヤクルト本社が球団を運営するようになり、半世紀以上が経ちましたが、スワローズ売却の噂は度々、メディアで報道されています。2010年にはサイバーエージェント、2019年にはMIXIがスワローズを買収するのではないかと報道がありました。しかし、2023年現在、サイバーエージェントはFC町田ゼルビア、MIXIはFC東京とJリーグクラブの運営に力を入れているため、この2社がスワローズを買収する可能性は限りなく低いと思います。

 スワローズは2019年以降、コロナ禍真っ只中の2020年を除き、単年ベースで利益を出せるようになっています。現在、球場を球団か球団を運営する会社が所有することで利益を出すことがビジネスモデルになっていますが、明治神宮野球場は宗教法人の明治神宮が所有しています。大学野球などのアマチュア野球の開催を大切にしている球場であり、スワローズが所有することは現実的ではなく、スワローズが自前の球場を所有するには神宮球場以外の球場を新しく建設するしかありません。

 一方でスワローズは神宮球場を借りながら球団を運営するというスタイルで利益を出している現状があるため、ヤクルト本社が球団を所有する限り、自前の新球場を建設する可能性は低いと思います。2031年からは神宮外苑に新しい神宮球場が建設され、2032年からはスワローズも本拠地として使用する予定になっています。ヤクルト本社の経営が安定しており、スワローズも単年で利益を出せるようになっている現状を考えると、ヤクルト本社がスワローズを売却するメリットはないため、スワローズが売却されることはしばらくはないと思います。


◯出典
・ヤクルト本社 2023年11月3日
https://www.yakult.co.jp/

・ヤクルト本社 沿革 2023年11月3日
https://www.yakult.co.jp/company/about/history/

・週刊ベースボールONLINE サンケイを襲った乳酸菌(ヤクルト)騒動?/週ベ回顧 配信 2019年9月30日
https://column.sp.baseball.findfriends.jp/?pid=column_detail&id=097-20190927-01

・ヤクルト本社 事業概要 2023年11月3日
https://www.yakult.co.jp/company/about/overview/

・ヤクルト本社 有価証券報告書 2023年11月3日
https://www.yakult.co.jp/company/ir/library/securities.html

・官報決算データベース 株式会社ヤクルト球団 2023年11月3日
https://catr.jp/companies/8e108/1691


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