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産地を訪ねて①〜大分県幻の焼き物・臼杵焼〜

~大分県・幻の工芸品臼杵焼~

今から約200年前、大分県臼杵藩でのこと。
わずか十数年という限られた期間のみ作られ、衰退し消えていってしまった幻の焼き物がある。
一度は途絶えたその焼き物。
数少ない手がかりをもとに現代の暮らしに合った形でよみがえらせた者たちがいる。
とてもシンプルなそのデザインは料理を盛り付けることで完成する。器がメインではなく料理をメインとし主役を引き立たせるための器。
それが幻の『臼杵焼』。
今回、復活を遂げたその工房へ製作体験に伺ってきました。

工房の様子

<歴史と特徴>

約200年前の江戸時代後期、(現在でいう)臼杵市末広地区に臼杵藩御用窯があった。長崎や福岡、宮崎から来た陶工たちによって陶器と磁器の器が作られ「末広焼・皿山焼」と呼ばれていた。
しかし、その窯はわずか十数年ほど栄えたのちに衰退。現在まで復活を遂げることはなかった。
資料も少なく、手掛かりはほとんどない。わずかな資料には、島原から来た陶工が作った磁器物には白磁の形に輪花をあしらったものが多くみられた。その手掛かりをもとに、現代により合う形でよみがえらせたものが『臼杵焼』である。
洗礼されたシンプルなデザイン。ただシンプルなだけではなく、華やかさを持ち合わせていながらもどこか温もりを感じさせる。柔らかな丸みを帯びたデザインとマットな質感がそう感じさせるのか。磁器でありながら土物の陶器のような手に馴染む質感を持つ。高級感を持ちながら家庭に溶け込める器である。
あくまで器はメインではなく料理がメイン。〝器は料理の額縁である〟をモットーに、料理を引き立たせる器となっている。料理を盛り付けることで初めて臼杵焼としての真の輝きを放つ。

<制作工程>

大まかな工程は以下の通り。
・粘土生成
・粘土切り出し
・型打ち形成
・素焼き
・釉薬
・本焼き

<制作過程>

自然界から生成された粘土を使い、型打ちという技法を用いて一つ一つが手作業で作られている。
薄く伸ばした粘土を、石膏を削り出した型に乗せ指で形を作っていく。型に流し込んで作る形成型に比べて手間も時間もかかる。
その作業を各模様に合わせてひたすらに繰り返し、一つ一つの器を作り上げる。そのため、手の跡や心地よいゆがみ、微妙な差が生まれる。また焼成後に現れるピンホールやふりものがそれぞれの個性を生み出していく。

<型打ち体験レポート>

使用する道具と型

①まず、丸い粘土の塊を手のひらでつぶすように何度もたたき伸ばし広げていきました。
②次に、均一な厚さになるように綿棒で伸ばしていきます。
③伸ばした粘土を型に乗せ軽く上から押さえ、型に合わせていきます。その際、余分な粘土は型に沿ってそぎ落としていきます。
④そして上から指で型に沿って押していく。この作業が一番重要。しっかりと型に沿って上から押していくことで表面の模様がくっきりと出るか否かが決まってきます。
⑤仕上げに、濡れたガーゼのようなものを粘土にかぶせ、ぎゅっと力を入れて全体を型に押し当てます。
⑥粘土を型からエアプレッサーで外して完成!
⑦制作体験はここまで。あとは乾燥させ釉薬をかけ焼に。
完成品を待つばかり。楽しみー‼

<感想>

今回お伺いしたのは臼杵焼の工房でありギャラリー、カフェも併設されている『うすき皿山』さん。オープン初日という記念すべきとても貴重なタイミングに伺うことが出来ました。
工房の職人さんは昔からずっと職人さんのイメージでしたがそんなことはありませんでした。若い方々も多く、中には神奈川県から移住した方やイタリア人の職人さんなど、地元ではなくても臼杵焼に魅了された方々もいらっしゃいました。臼杵焼を通して臼杵を盛り上げていこうという素敵な空間でした。
臼杵焼は去年や今年には東京の六本木で期間限定のポップアップストアを出したり、渋谷ヒカリエに出たりもしていたそう。東京の常設はまだありませんが、今後はどこかで巡り会えることがあるかもしれない期待があります。
臼杵焼のお皿を兄夫婦の結婚祝いにプレゼントしたところ、大変喜ばれました。奥様には「センス良い、素敵」と喜ばれ、兄は「お前にこんなプレゼントのセンスあったんだ」と一言。(笑)

体験時も丁寧に教えてくれ、型から外した時には出来上がりに感動。後日、完成品が届いてまたまた感動。手触り質感、自分で作ったものは愛着がわきます。物を作ることで物を大切に扱う心が養われる。
いつかは金継ぎ体験にも伺ってみたいものです。
今回はこれにて。

焼く前
完成
漬物を添えて

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