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復職に不安を感じている人へ return to work

 休職し、回復はしてきたけれど、復職には不安を感じている。どうしたらいいのか動けないうちに休職の期間がどんどんと増えて行っている。そんな方いらっしゃいませんか。
 そんな方に、リワーク・プログラムがお勧めだ。
 リワークとは、仕事をしていて、抑うつ状態やストレス関連疾患などで休職をされた方を対象にしたプログラムだ。抑うつ状態はだいぶ良くなったが、復職するまでには至らず、何らかの壁を感じている人達が、職場復帰を目指すことを目的としている。
 リワーク・プログラムの名前は、そのままにreturn to workから来ている。通常は心療内科の付属施設として運営されているところが主流だったが、現在は民間企業が運営しているところもある。


 抑うつ状態は緩和されても、職場になかなか足が向かない、そのような訴えを頻繁に伺う。以前は自分で図書館などに通い、体調を整え、人と接することに慣れていっていただいていたが、10年ほど前からリワーク支援が盛んとなり、利用者も多くなっている。つまりそれだけ、抑うつ状態に陥り会社を休業される方の人数が多いということだ。

 実際に5年に一度行われる国勢調査の数字を見てみよう。国勢調査での「休業者」とは、①「病気や休暇で調査期間中に仕事を休んでいた者」のほかに、需要の急激な減少により②「雇用主との雇用契約が存続しているものの自宅待機などとなった雇用者」や③「一時的に仕事を休んでいた自営業主」なども含まれている。
 2015年に実施された国勢調査では 休業者数は109万人、休業者率(休業者率=休業者数/就業者数)は1.86%に及ぶ。つまり企業で働くサラリーマンの100人に2人近くは休業中ということになる。2015年あたりは景気も良かったので②③の比率は少ないように思われる。また、コロナ禍の2020年現在、国勢調査が行われるが、今回は②③の増加が考えられる。
 

 休業者の数字の話はこのあたりにしてリワーク・プログラムの話に戻ろう。休業者の年代としては、25歳~39歳までの間の休業者が圧倒的に多い。この世代の人たちに特におすすめしているのがリワークだ。体調はずいぶん回復したが、会社に出社することは怖い。本当にやっていけるのか心配だ。そんな方々に朗報だ。
 プログラムの内容に関しては、それぞれ異なっているのだが、主流は、デスクワークやグループワーク、ストレスマネジメント、アサーショントレーニング、薬の解説、メンタルヘルス研修などである。費用は自立支援医療制度を受けて月1万円程度である。非常にお安く専門家のサポートが受けられる。

 対象者は抑うつ状態から回復してきているとはいえ、まだまだエネルギー不足なのだ。人間関係などに傷ついた人たちにとって、人と接して研修を受けることはそれなりにハードルが高い。例えば、「どうして、傷ついた私たちがまた研修を受けて傷つかないといけないのか」と被害的にとらえられる方もいる。また本人は回復した気持ちになっていても、実際に研修に参加するとなると、あと一歩の勇気が踏み出せなかったりする。
 私たち産業保健スタッフがリワーク・プログラムをお勧めする一番の理由は、再休職される確率が圧倒的に減ることだ。メンタルヘルスに関する知識や、ストレスに対処する方法を知っていると、かなり冷静に自分の置かれた状況を判断できるようになる。その結果、再び休職する確率が減るのだ。一度休職されたことのある人は、何らかのトラウマ的感覚を持っておられて、「やっぱり自分はダメなんだ。」といった、悲観的な思考に陥りがちである。そんなことないのに、である。
 だからこそ、そんな方々にお勧めなのがリワークである。プログラムの中は、承認空間が広がっている。誰も否定はしない。許してくれる空間なのだ。そのような、人の温かみに触れることで、少しずつ自信を取り戻し、勇気が持てるようになる。
 大手企業ではリワークの情報が周知されているが、中小企業ではまだまだ知られていない。しかし、地方自治体の支援を受けると安価に、受けることができる。実際、各都道府県にある障碍者支援センターでは無料でリワークに参加することもできる。
 知り合いで、休業されている方がおられたら、お勧めしてみていただきたい。

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