魔動戦騎 救国のアルザード あとがき

 今回の作品でやりたかったことは、簡単に言えば「リアル寄り作風の世界観の中でスーパー系のオーバースペック機体を開発する話」でした。
 作中世界観と設定でそれらしく理屈を捏ね回し、一人の天才と一人の規格外によるオーバースペックロボットを開発していくその風景と課程をメインに描きたかったわけです。
 今作のベースとなった短編では、開発風景と初出撃時のみにスポットを当てて書いたのですが、比較対象の不在(普及している他のロボットやエース級と新型の差)だとか、戦時状況の描写不足などを指摘されたことにより、「じゃあ思いついたこと全部盛り込んでみるか」と書き始めたのが『救国のアルザード』という作品です。
 序盤は主人公の規格外さと、世界観や周囲の状況説明と今後比較するべき普及機体を描き、中盤はメインでもある開発風景を、終盤は開発された機体による実戦で機体コンセプトを実証していく、という流れになりました。
 私自身はワンオフの高性能機による大活躍はもちろん好きですが、複数の量産機同士による泥臭い戦闘も大好物です。
 とまぁそんな個人的な好みも出来る限り盛り込んで行こう、と物語を構想していったらこんな作品になりました。設定説明的な部分が多いのも、そういうの考えるのが楽しくて好きだから書きたくなってしまうからだったりします。
 また今作についての裏話を毎週更新している自分のブログでつらつら語っていこうと思っていますので、その裏話を全て語り終えたら、蛇足的ではありますが裏話を編集して追加で更新をすることもあるかもしれません。
 とはいえ、今作の物語としてはこれで完結です。
 
 続編の構想もないことはないのですが、最期まで固まり切っていないこともあり、いつ書けるかは今のところ分かりません。
 
 最後までお読み頂けた方、ありがとうございました。
 楽しんで貰えていたら幸いです。
 

 以下、余談。
 『魔導戦騎』という作品世界は魔力というものが存在するファンタジーベースの世界観でロボットものをやろう、という発想から構築されたものです。
 作中でもエクターらが説明していますが、この世界、過去には「魔法」が存在していました。
 ただ、私の他作品群と違って、『魔動戦騎』における「魔法」はかなり敷居の高い設定になっており、純粋に「魔法」と呼べるような現象を起こせる者は作中時点で主人公のアルザードがギリギリその領域に足を踏み入れているかどうか、というレベル。
 この作品世界には世界を構成する素粒子として魔素というものが存在します。これは物質を構成する素粒子らとは異質で、物質としての成立には影響を与えずに存在していながら、エネルギーを得るとその性質や周囲に干渉することはできる、という特徴を持ちます。この魔素にエネルギーを与えられる力が魔力となります。
 理屈としては、生体電流や脳波など魔素に影響を与えられる複合的なものが魔力とされ、対象に含まれる魔素にエネルギーを与えることで様々な干渉現象を引き起こす、といった形でしょうか。
 いわゆる炎や雷を起こしたりという分かり易い魔法のレベルになると、それを発生させるために必要な魔力量は膨大になり、作中の時系列では常人にはまず不可能です。作中での一般人はせいぜい、手のひら表面の温度を数度上昇させられるかどうかがいいところで、しかもそれだけで結構疲れる、という具合。
 魔素による事象干渉に必要なエネルギー量はかなり大きく、才能のある人間であっても、自身の魔力だけで魔法と呼べるレベルの現象を発生させるのは並大抵のことではありません。
 そのため、物質としての体積の割に魔素を多く含むものは、少ない魔力でも干渉力を高められるとして重宝されてきました。同じ魔力量でも、干渉させる魔素が多いほど干渉力が高まる、という結果が出たためですが、ここが魔術や魔術式というものが出来るポイントになっています。
 魔素を多く含む物質ほど魔力を伝播する性質、いわゆる魔力伝導率も高いことが分かり、単純ではない結果が生じることになり、そうした性質を利用した干渉力の増幅方法が研究、考案されていったわけです。
 それがかつては触媒や魔法陣といったものを用いた魔法的現象の再現技法「魔術」と呼ばれるようになりました。
 アルフレイン王国の建国神話の時代などの古代では大気中など、世界全体に存在する魔素の量が作中時代よりも多く、魔法や魔術が使い易かったり、それらによって肉体が変質してしまった魔族がいたりする世界だった、とされています。その魔法全盛期と比べると、アルザードですら魔法使いとしては並以下(とはいえ魔法使いそのものはかなり希少なので凄いことに変わりはない)だったりします。
 
 とまぁ、設定としてはこういったものとして執筆しているわけですが、ここからは書き手としての都合。
 作中時代における魔法や魔術の発動に必要な魔力が膨大であるという設定は、機械技術と魔術の融合技術である魔動工学がそれなりに発達してきているという背景を演出するためのものでもあります。要するに、魔法的なものの代わりにロボットなどの「魔力を動力源とする道具」が普及する理由付けだったりするわけです。
 あれこれ技術的工夫をすれば少ない魔力でも増幅して大きな力を得られるようになり、実際にそれを応用した兵器が台頭してきた、という設定にするための設定なわけですね。

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