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「お菓子の仕事」でプロとして生き生き働ける人を増やしたい!

「ヴァンドゥーズが一生お菓子の仕事を続ける方法?それはパティシエと結婚することしかないでしょう。」

こう言われたのは20代前半の時。
製菓の専門学校を卒業して就職し、数年経ってから母校に遊びに行った際に、かつて担任だった先生に言われた言葉である。



私は20代の大半をヴァンドゥーズの仕事をして過ごした。

一般の人からすると、いわゆる「ケーキ屋さんの店員さん」がヴァンドゥーズ。

「ヴァンドゥーズ」というのはフランス語で「女性の販売員」を指す言葉で、本来はお菓子やパンに関わらず、ありとあらゆるお店の販売員を指す言葉である。

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菓子業界では菓子製造スタッフのことを
「パティシエ(男性)」「パティシエール(女性)」と呼び、

販売スタッフのことを
「ヴァンドゥーズ(女性)」と呼んでいる。
男性販売員は「ヴァンドゥール」であるが、これは実際の現場ではあまり聞いたことが無い。

と言っても、そもそも業界内ですら「ヴァンドゥーズ」という言葉の浸透度は低い。


実は、業界内でもプロのヴァンドゥーズを一生やろうと思って働く人はごく少数である。


どちらかというと

「本当はパティシエとして働きたいけれど、ポジションが空いていないからとりあえず販売をやっている」
というヴァンドゥーズが多い上、

「販売なら誰でも出来るから、アルバイトで誰か働いてくれる人を探している」
という考えの雇用主も多い。

ヴァンドゥーズを専門職として扱い、将来を見据えて本気で育てたり、スキルや腕を求めているお店は比較的少ないと感じる。


飲食店、特にフレンチの世界では、ソムリエ等、サービススタッフが専門職として確立されていると感じるが、菓子業界では専門職としては成り立っていない。


実際にヴァンドゥーズを専門職として扱い、腕を求めているお店が無いわけではない。


しかし、ヴァンドゥーズがキャリアを積んだ先に、そのヴァンドゥーズが将来どうなっていくのか、というところまでヴァンドゥーズ本人と共有してキャリアアップを考えているというオーナーはほんの一握り、いや、ほぼいないと思う。

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私はこの「ヴァンドゥーズ」の仕事を20代の間、誇りを持ってやっていたのだが、数年キャリアを積んで中堅ヴァンドゥーズになった時点で

「このヴァンドゥーズの仕事を極めた先に一体何があるのか」

と悩み、そして専門学校時代の担任だった先生に問うたのが冒頭の質問である。


誤解の無いように書くが、私はパティシエとの結婚を否定しているわけではない。

好きな相手がパティシエであれば、結婚してお店をやっていくのはいいと思う。それは素晴らしいことなので、全く問題ない。

しかし、「ヴァンドゥーズが長く仕事を続けるのにはパティシエとの結婚しか選択肢がない」と言われると、それはなんだか違う気がする。


もちろん、パティシエと結婚しなければヴァンドゥーズとしてキャリアを積めない、というわけではない。

多くのパティシエのように研鑽を積んだ後、独立したいのであれば、ヴァンドゥーズも、パティシエを雇って自分がオーナーとしてお店を始めるということはできると思う。

しかし、日本でそういう人を見たことが、ほぼ無い。


また、ヴァンドゥーズとしてキャリアを積んで、素晴らしいスキルを持っていても結婚や出産を機に退職したり、転職したり、という人が多い。

その点においては「パティシエール(女性のパティシエ)」も同じで、長くお店の第一線でパティシエールとして仕事を続けている人はかなり少ない。

しかし、パティシエールの場合は仕事を続けている人はゼロではない。
ここがパティシエールとヴァンドゥーズの大きな違いである。

自分でお店をしているパティシエールはいるし、
結婚・出産をしてもキャリアを積んでいるパティシエールは少数派であれど、存在する。


回りくどく書いてきたが、結論を言おう。


ヴァンドゥーズにはパティシエと結婚してマダムになった人以外に、ロールモデルがいないのである。

いや、もしかしたらいるのかもしれないが、業界内で誰もが思い浮かべるような有名な人はいない。

冒頭の専門学校の先生の言葉は、今から10年以上前のことなので、当時よりはまだ今の方が状況は良くなっているとは思うが、

それでも、いま日本で
「本気でヴァンドゥーズをやって、キャリアアップしていきたい」
と思っている人は一体どれだけいるのだろうか。

自分で経験しているから言えることだが、ロールモデルがいない中で、キャリアを積んでいくことは非常に苦しい。
努力しても先が見えないのだから。


こう語る私は、無名ではあるものの、
ヴァンドゥーズのキャリアを活かして起業した数少ない人間の一人だと思っている。

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「お菓子のおいしさを保つ包装」のプロの現場のテクニックをお店で働かなくても身に付けられる、
お菓子専門ラッピングスクールwrapped(ラップト)を開講して現在4年目。

日本全国と海外に約200名の生徒を抱え、軌道に乗ったこの事業を続けていた今年、
これまでは自分のためにしていた仕事だったが、考え方を変えることにした。



「お菓子の仕事でプロとして生き生きと働ける人を増やす」

これがこの先の私の仕事のミッションである。


長く働き続けていくことが難しい、菓子業界。

SDGsが叫ばれる昨今、菓子業界も長く発展していくためには視点を変えるべきところが多いのではないかと思う。

私は中でも、
・元ヴァンドゥーズ
・元パティシエ(パティシエール)
・菓子業界で働きたくても働けなかった人
主にこういった方々に仕事を生み出していける事業をして行きたいと思っている。

こういった方々の中には、お菓子に対するスキルや想いがあるのに、一生プロとして続けられる仕事に出来ていない人が本当に多いのだ。

このnoteでは私の仕事に対する考え方や、これからの事業の展開についてなどを綴っていきたいと思う。


私は10年後、20年後、30年後には
「お菓子の仕事は、あらゆる形で生涯プロとして活躍できる仕事」だと
業界内も世間からも認められるような世の中にしていきたい。

2021年、真の仕事の目的を見つけた私は、起業して4年目にしてやっとスタートラインに立ったのだ。



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