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POOLのちょっとだけウンチク  第14回 エリック・ショーンバーグ『アコースティック・ギター』

WOWOW MUSICがお送りする、音楽好きのためのコミュニティ"//POOL"
その企画・構成を担当する吉田雄生が、いつものあの曲の響きがちょっと変わる(かもしれない)
とっておきのウンチクを書き綴ります。

WOWOW MUSIC//POOLの新しいコンテンツにVIDEOが加わった。VIDEO初のゲストは斉藤和義さん。最高級の音響設備を誇るぴあオーディオ&ヴィジュアルルーム「クレードル」をお借りして、斉藤和義さんの“とっておきのアナログ”を聴きながらトークするという企画だ。

YouTubeでは著作権の問題で残念ながらその音を流せない。(これは何とかならないかと、、、)しかし人間には想像力という素晴らしい能力が備わっている。それを最大限に駆使して最高のトークを楽しんでいただきたい。

斉藤和義さんの“とっておきの1枚”

さて、斉藤和義さんの“とっておきの1枚”はエリック・ショーンバーグの『アコースティック・ギター』。若き斉藤さんが、当時暮らしていた吉祥寺の、小さなレコード店で出会った1枚だという。上京し路上ライブをしながらプロのミュージシャンを志していた斉藤さんが、何かを掴もうとして探し当てた1枚なのだろう。

このアナログにはそんな斉藤さんの想いが詰まっていると思うと、さらにその音を大切に聴こうという気になる。実際に、「クレードル」の音響で聴くと、まるでショーンバーグがすぐ目の前でアコギを弾いているように感じられて震えた。

ギター作り

ところで、アコースティック・ギターの名手エリック・ショーンバーグはギター職人としても有名な人物である。個人でギターを作る職人を「ルシアー」と言う。(斉藤さんも動画の中でショーンバーグをそう表現している)語源はギターの前身ともいえる中世ヨーロッパの楽器「リュート」から来ている。

古楽器は当然のことながら、手仕事で作られていたため、弦楽器の職人を「ルシアー」と呼ぶようになった。ショーンバーグは優れた「ルシアー」だった。多くの弟子が彼に学び、その技術を伝承している。

それにしても、斉藤さんが自らギターを作り始めたという話には驚いた。いくらコロナ禍、時間があるとはいえ、DIYでギターを作ってしまうとは(!)それもエレキギターを。

手作りのギターと言えば、真っ先にボ・ディトリーが思い浮かぶ。彼は50年代のブルースマンで、ストーンズのキース・リチャードやミックジャガーをはじめ、多くのロックスターに影響を与えた人物だ。

1964年に初めてビートルズがアメリカに渡った際、記者に「アメリカで何が一番楽しみか?」と訊かれたジョン・レノンが「ボ・ディトリーに会うこと」と答えたのは有名な話である。

そのボ・ディトリーのギターが、シガー・ボックスで作った手作りのギターだった。アメリカの南部、人種差別の激しいミシシッピ出身の貧しい小作人の子だったボ・ディトリーは、お金がないのでシガー・ボックスを利用して楽器を作り、演奏するしかなかった。

だが、このシガー・ボックスは優れた共鳴装置で、ディトリーはこれを駆使してスターになっていく。

ディドリーはヒットを生むようになっても、ディトリーは手作りのギターにこだわった。こんな逸話がある。20本しかない初期のディドリーの貴重なギターの1本が、ある日何者かに盗まれた。

ディドリーが古道具屋のショウウィンドーを覗いていると、なんと、そこに自分のギターが陳列されていて、むかつきながら買い戻したという(笑)。

ギタリストに限らず、優れたミュージシャンは楽器の構造について詳しい。それを自分用にカスタマイズしている人も多い。斉藤さんのギターを自分で作るという行為は、音楽家としてもとても正しいことなんだと思う。

そんなことを改めて感じることができた楽しい収録だった。斉藤和義さんが「ギター愛」について熱く語る様はどうぞWOWOWMUSIC//POOLVIDEOでご覧ください。(エリック・ショーンバーグの音源もこちらでお楽しみください)

(文・吉田雄生・WOWOW MUSIC//POOL企画・構成担当)

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