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POOLのちょっとだけウンチク  第16回『セックス・エデュケーション』オリジナル・サウンド・トラック

WOWOW MUSICがお送りする、音楽好きのためのコミュニティ"//POOL"
その企画・構成を担当する吉田雄生が、いつものあの曲の響きがちょっと変わる(かもしれない)
とっておきのウンチクを書き綴ります。

今回のアーティストHomecomingsの福富優樹さんが持って来てくれたとっておきの曲はアメリカの大ヒットドラマ『セックス・エデュケーション』のオリジナル・サウンド・トラックからエズラ・ファーマンの『I‘m Coming Clean』。

福富さんによれば、レコードは“物を持っておきたい!”という気持ちを満たしてくれるものでもある。劇場公開される映画とは違いパンフレットもDVDのない、配信のドラマではサントラのレコードがそんな気持ちを受け止めてくれる、と言う。確かに、映画のサウンド・トラックが映画そのものを想起させてくれるものだとすれば、レコードを持つことはすなわち映画を持つことになる。

サウンド・トラックとは、そもそも映画のフィルムで音声が収録されている部分のことを指す。そこから映画やドラマの「劇伴音楽」をサウンド・トラックと呼ぶようになった。

サウンド・トラックが大ヒットするようになったきっかけとなったのは、なんといってもジョン・トラボルタの『サタデー・ナイト・フィーバー』であろう。1977年、いまから半世紀も前の作品で、ビージーズの曲が爆発的に売れ、ディスコ・ブームが巻き起こった。ビージーズの曲を聴くと映画のシーンを思い出すのだから、音楽ももう一つの主役だったと言い換えることができる。


『サタデー・ナイト・フィーバー』

先日、サブスクで、それこそ数十年ぶりにこの『サタデー・ナイト・フィーバー』を観た。もちろん古臭いところは多々あるのだが、今観るとニューヨークの裕福な街マンハッタンと労働者階級のブルックリンとの格差を描いた社会的問題も内包した作品だったのだなと気づかされた。川を挟んだだけのわずかな距離なのにこの格差は大きい。さらに移民の問題も描かれている。

ところで、そのクレジットをみていて、オヤと思ったことがある。製作にロバート・スティッグウッドの名前があったのだ。ロバート・スティッグウッドといえば、伝説的ブルースバンド、クリームを発掘し、エリック・クラプトンのソロ作品を世に送り出した名プロデューサーである。ビージーズのプロデューサーでもあり、なのでクレジットがあることに違和感がないのだが、まさか映画を製作していたとは(!)。

改めてスティッグウッドを調べてみると意外なことが判った。なんとスティッグウッドはビートルズの所属する会社NEMSにいたのだ。スティッグウッドの手腕を惚れたブライアン・エプスタインが彼をNEMSに招き入れた。エプスタインがスティッグウッドに託した最初のミッションがオーストラリアにいる新人バンド、ビージーズと契約して来いというものだった。こうしてビージーズはビートルズと同じ会社に所属することとなった。

ほどなくしてエプスタインが薬物の過剰摂取が原因で亡くなると、NEMSは空中分解。ビートルズは自分たちの会社アップルを作り、スティッグウッドはビージーズを連れてRSOを設立したのだ。ビージーズはデビューしてすぐに話題になるが、その後は低迷。ビージーズをテコ入れするためにスティッグウドはディスコをテーマにした映画を作ろうと思い立つ。そうして完成したのが映画「サタデー・ナイト・フィーバー」だった。映画の大ヒットと共に、ビージーズの曲を収録したサウンド・トラックも過去最高の4000万枚を売り上げた。

この映画のヒットがきかっけとなって、その後音楽やダンスをテーマにした映画が流行りだす。『サタデー・ナイト・フィーバー』の続編にあたる『グリース』、アイリーン・キャラの主題歌が大ヒットした『フェーム』、『フラッシュダンス』、ケニー・ロギンスの主題歌が大ヒットした『フットルース』などなど、、、。80年代はまさに音楽と映画が共に主役の時代だった。
サウンド・トラックの概念の変えたのが、ロバート・スティッグウッドだったとは。古い映画を見直すと思わぬことが判ってこれまた面白い。

(文・吉田雄生・WOWOW MUSIC//POOL企画・構成担当)

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