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アメリカ政治がやばい

現代の政治・経済を牽引してきたアメリカの政治がやばい。崩壊が始まって久しいが、溢れるニュースは英語がわからないと量が少なくなってしまうので、日本には伝わりづらい。私が触れた記事について、可能な限りヘッドラインを書き留めていく。

第一回:もはや国会と権力を政治闘争に使うことが当たり前

事実

下院の過半数を獲った共和党が、2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件で拘束・起訴された暴徒達への対応(が不当であること)についての調査委員会を発足すると、Marjorie Greene Taylor 議員が発言した。

ここから先は報道内容(事実とされる情報)と私の私見が混合しているので、その前提で読んでいただきたい。

背景

ドナルド・トランプに対する数々の嫌疑(汚職・選挙法違反など)
第45代アメリカ大統領であるドナルド・トランプ氏は、アメリカ大統領として初めて、大統領任期中に二度の弾劾を受けた。

一度目の弾劾訴追はウクライナ疑惑によるもの、で二度目の弾劾は2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件が、ドナルド・トランプが支持者を煽ることで自ら発生させたものとして議会が任期完了直近の大統領の罷免を求めたものだ。国会議事堂襲撃事件は、2020年にトランプが敗北した大統領選が無効であるというトランプおよび多くの共和党員の主張をもとに起きた事件。

一度目の弾劾訴追に至る流れは、当人が当選した大統領選挙戦において、ロシアの介入を積極的に受け共謀罪に値する罪を犯しているのではないかと、2017年にはアメリカ合衆国司法省が特別検察官ミュラー(モラー)を任命し2年に及ぶ調査が行われたことに端を発する。
ドナルド・トランプ氏が、当時のジェームズコーミーFBI長官に、自身に対する調査を中止する様直接圧力をかけたことが明るみに出たことが上記調査の直接的なきっかけとなった。

結局、共謀罪を立証するには証拠が不十分であるという調査結果が2019年にミュラー特別検察官から提出された。調査過程においてマイケル・フリン国家安全保障問題担当大統領補佐官が偽証罪で起訴されたり、トランプの選挙対策本部長等が有罪判決を受けるなど、無傷とは言えない。

一度目:ウクライナ疑惑
ドナルド・トランプは、ウクライナのゼレンスキー大統領に対し、米国からウクライナへの軍事物資支援(予め議会で決議されていたもの)を実行することと引き換えに、バイデン元大統領の息子のスキャンダルについてウクライナ当局が捜査していると声明を出すことを求めた。当初は捜査自体を行うことを強要しようとしていたがゼレンスキーに拒否されると最終的には、操作は実行しなくても良いので捜査していると声明だけを出す様求めたと言われる。目的は、政敵であるバイデンの失脚とされている。
米国では、軍人や司法省・警察などに共和党員が多い。面白いのは、ウクライナ疑惑で決定的な証言を議会で提供したものの多くが、外交や軍における要職にあった共和党員だったことである。
いずれにせよ、外交において職権濫用を行ったということで、弾劾追訴された。下院において過半数承認をされたが、この1回目の弾劾においては下院でも共和党からは一名も賛成票が入らなかった。

二度目:選挙結果否定と議会襲撃の扇動
二度目の弾劾は、選挙結果を無視して大統領の座を次期大統領に移譲することを拒否する姿勢を見せ、議会襲撃を扇動したとされるトランプに対し、下院の民主党員全てに加えて共和党員10名が罷免に賛成票を投じた。また共和党員4名が投票を棄権した。

2020年の大統領選挙は、トランプを含め今でも多くの共和党の政治家が、選挙に多数の不正があって実際はトランプが当選したはずでバイデンは不正に選挙を勝ち取ったと主張している。選挙から2年以上経過した現在でもその主張は変わらず、米国民の多くがその主張を信じている。
トランプ陣営は開票中から直後にかけて、選挙の不正と無効を60以上の裁判を起こして申し立てている。それら全ての裁判では一切の有効な証拠や論拠を示していないことを根拠として訴えが棄却されている。(ここはもう少し米国の裁判制度についてリサーチ・理解をして、正しい表現をしたい。『訴えを棄却』というのは正確ではないかもしれない。要は、訴訟は全て裁判所によって却られたということを記載したかった)

収まる気配のない政治と国内の分裂

アメリカ国内の政治と国民の分断はトランプの大統領就任よりも以前から始まっていたものであろうが、トランプの就任とその大統領在任期間中に両者は子供じみた対立を隠さなくなった。この分断は、右派と左派の分断、または民主党と共和党の分断というのが最もわかりやすい。しかし実際は、富裕層と中流階級以下や黒人・白人・ヒスパニック・アジア系といった人種の間の分断も絡み合って問題を複雑にしている。

他の多くの民主主義的な法治国家がそうである様に、三権分立は元々米国の基本理念として守られてきた。時として政治の権力者が司法の力を自らのために利用しようとする動きが見られることはあったが、ニクソンのウォーターゲートの様にその様なケースに対しては国家全体が一丸となって理念の崩壊を拒否してきた歴史がある。しかし今日の様相はそれと大きく異なっており、世論を見方につけさえすれば、ことの善悪や事実には特に縛られずに自らの利益を得ようとする(または主張を通そうとする)ことが当たり前になってきていると言える。

政治権力を使って、政敵を Demonize する(悪者にする)ことにより権力の維持を図るために司法を不正に動かそうとする。それを隠しもせず、むしろ行うのだと宣言する国会議員が一人や二人ではない。ドナルド・トランプに対する調査は正当な理由でルールに従って行われていたとしても、インターネットメディアを自由に使って「不当に行われたものだ!それに対して我々の調査は正当だ!」と大声で言い続ければ、最低でもどっちもどっちの争いであると自分の支持層を納得させることはできるという明確な認識に基づく戦術だ。

世論をどうにか操作できたとしても、国会議事堂襲撃事件への関わりを詳細に捜査されれば下手をすれば自分達が逮捕されてしまうかもしれない。たとえそんな事態になったとしても、捜査自体の合理性や信憑性に予め疑問を投げかけておけば、後で泥試合に持ち込むことは十分可能だとここ何年もの経験からわかってしまったのだ。例え自分が完全な犯人であってもだ。誰かの家を放火するならば、消化しに駆けつけたその家主を、『この人が放火犯だ!』と相手よりも先に、できるだけ大声で叫んだら勝ちなのだ。警察は規範をもとに動く必要があるので、こちらとあちらを同等に調査しなければならないのだから。

インターネットでなんでも主張すれば何千万というフォロワーが読んでくれ、世論を操作できるこの時代において、上記戦略を意図的に取れる精神性を持った政治プレーヤーが存在する限り、分断は深まるばかりで終わりが見えない。


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