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秋の空時計【毎週ショートショートnote】

「いっちゃんは時計が好きでね。おじさん達、何度も時計を描かされたよ」
親戚が集まる場では昔話に花が咲く。
私は祖父母の初孫であり、おじ達にとっては初の姪。幼い頃は大層かわいがってもらった。
母の実家は家族経営の小さな会社を営んでおり、母もおじ達もそこで働いていた。
小さい頃の私は時計が好きで、絵を描いてもらいたがったらしい。
残念ながら幼稚園に入る前の話で、記憶にはない。
まだ「とけい」と言うことができず、「コッケ、コッケ」と言いながら事務所に紙を持ってきて、おじ達は何百個も時計を描かされたらしい。
似たような絵を描くとダメ出ししたそうだから大したものだ。

今も時計は好きだ。私の手には魔法の空時計がある。
文字盤には今日と同じ羊雲が浮かんだ空。
時間によって変わる、その日の空が映し出される懐中時計。
夏の間はもこもこの入道雲が多かったが、最近は羊雲や筋雲が出てくるようになった。
男性陣は知らない。女には魔女の血が継がれていることを。

(410文字)


こんにちは。羽根宮です。
たらはかにさんの【毎週ショートショートnote】に参加しました。
お題は「秋の空時計」です。

空を見るのが好きです。時計も好きです。
だから、その日の空を映し出す時計があったらなと想像しました。
時計が好きで、おじ達にたくさんの時計の絵を描いてもらったこと、そしてそれを覚えていないことは実話です。
同じ時計では嫌がったらしいというのも本当です。
初の姪っ子のために、一生懸命描いてくれたんでしょうね。
星形とか、雲形とか、ダリの絵みたいな時計とか、たくさん考えたと言っていました。
ありがとう、おじさん達。


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読んで下さってありがとうございます。
羽根宮でした。

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