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【世界一周・旅のカケラ #20】行くべき場所へは導かれる。ピピ島からの迎え

旅には、その場所ごとに適した季節がある。

例えばリオのカーニバルに行くには2月3月を狙うし、ウユニ湖に移るミラーが見たければ雨季を狙う。

タイの南部を旅したのは雨季で、いつも曇っていた記憶がある。

前回のクラビのビーチホッピングだって、一度目は曇り空の合間から青空を見上げていた。その後リベンジするくらいだから、やはり悪天候だったのだ。

ちなみにタイの南部といえば、日本人によく知られるリゾート・プーケット島や、レオナルドディカプリオが主演した映画「ザ・ビーチ」のロケ地として一躍有名になったピピ島など人気のリゾート地がいくつかある。

でもプーケットは高級リゾート地という感じで、バックパッカーの私には相応しくない気がする。

クラビまで来た私の頭にはいつも「ピピ島」があった。

行けたら行きたい。行けたら、というのはつまり素晴らしい時間を過ごせる確率が高いなら、という意味。そのためにはやはり晴れていて欲しい。でも無情にも、クラビの空には厚い雲が立ち込めている。

いよいよ諦めて明日にはバンコクへ戻ろうという日、バスのチケットを買おうと例の旅行会社にいた私。

ねぇさんやあんちゃんと他愛のない話しで盛り上がりつつ、「バンコク戻るから」と伝えているのに一向にチケットを発券しようとしてくれないねぇさんに、内心「もう早く売って、心変わりする前に!」と思っていた。笑

そのとき、その人は現れたのだ。

長きに渡りタイに、それも南の島に滞在している人が持つ特有のリゾート感を引っさげた、こんがり日に焼けた日本人のその彼が。

「ねぇさーん!」とヨッと手を上げる感じで、旅行会社に入って来た。それを見たねぇさん、待ってましたといわんばかりの表情になり、言ったのだ。

「miaちゃん、彼がさとし君(仮名)。ほら、前言ってたピピでダイバーしてる!」

確かにそんな話をしたような気もする。でも私の心のなかはすでにバンコクに向かっていたし、今回ピピとはご縁がなさそうな気がしたのですっかり忘れていた。

それにその人がまさかクラビで、いきなり目の前に現れるとは思ってなかったし!

そしてねぇさんは今度、さとし君の方を向いて行った。

「彼女は世界一周中のmiaちゃん!ピピ島へ行きたいけど、雨季に行っても天気が悪かったらとずっと迷ってたの。今の時期どうよ?」と。

さとし君はどうやらビザランのためどこか近郊の国へ日帰りトリップをしてその帰りだそう。

ビザランとはある国で長期滞在するため、ビザの期間内に一度出国し隣国や別の国へ行き再度入国することで期間が再延長されるという、ビザの更新術の合法的なものだ。

途上国やヨーロッパでは長期滞在者や旅行者がよくその方法を取る。

彼はしばらくピピ島でダイバーとして働いているのだが、3ヶ月に一度はこのようにビザの更新が必要なのだ。

見るからに好青年なさとし君はねぇさんと気が合うだけあり、話も面白い。それに比例してピピ島への想いもどんどん膨れ上がる。

彼は明日の午前中ピピ島へ戻るから、そのときに私も一緒に行けばいいのにという流れになる。

とうとう私は言った、「明日の朝、晴れてたら私も行こうかな!」。

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