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英語も現地語も苦手でもなんとか海外で生き延びたが毛が死んだ話

私は英語が苦手だ

30歳を過ぎるまで日本から出たことがなかった

中学の時は英語で赤点をとっていた
私は一生日本から出ることがないから
私の人生に英語は必要ない

そう思っていた

でも、2018年の夏
私はフィンランドのホストファミリーの家で
イタリア人のルームメイトに向かって
こう言っていた

「マイ ヘアー イズ オールレディ ダイ」

”私の毛はすでに死んでいる”


人生何が起きるかわからない


海外に住んでいるからといって喋れるわけではない


英語が嫌いだ
英語は喋れない

そんな私が1週間、日本から出ることになった
初めて海外視察旅行に行く機会に恵まれたのだ

場所は北欧
保育園や小学校を見学する
ツアーなので通訳さんもつく
それなら安心だと思い
勇気を出して申し込んだ

その1週間はとても刺激的だった
現地の先生に
聞きたいこと
知りたいことが
たくさんあった

でも、20名ほどいる
ツアー仲間に通訳は1人
自分が聞きたいタイミングで
通訳さんがいるとは限らない

通訳さんを通さず英語で
コミュニケーションをとる
ツアー仲間が羨ましくなった

いつかリベンジしたい
そう思って
帰国してすぐに
英会話教室に入った

初めてのクラスで
めちゃくちゃ緊張していた

4,5人のクラスメイトがいて
先生が来るまで
日本語で

今日が初めてなんです〜
全然喋れないんで緊張してます〜

なんてニコニコ話していた

時間になり外国人の先生がやってきた
ハローくらいはわかる
ニュー スチューデント
これは中学でやった!
はいはい、私のことね

なんとかついていけるかも!
と思った

でもその後から私に向かって
何か言っているが
全くわからない

固まってしまった

隣に座っていた人が
「自己紹介」
と小さな声で教えてくれた

先生は今、自己紹介してくださいと言ったらしい

「え? 英語でですか?」

もちろん
当たり前じゃん
と言っている?
あれ? 私笑われた?

「マイ ネーム イズ…」

それ以外出てこなかった
なんだか恥ずかしくなった

その後も
外国人の先生が
何を言っているのか
全くわからなかった

同じ初心者コースの人たちでも
英語がペラペラに見えた

自分だけ話題についていけず
みんなが笑うタイミングで
何が面白かったのか理解できない
その疎外感が辛くて
2ヶ月で辞めた

本屋に行って
中学英語のやり直しテキストを
買ってみたが
be動詞すら忘れていた
中2あたりからはもはや
習った記憶すらない

そりゃ、いきなり
英語しゃべるなんて
無茶だった

それからテキストで
過去形
現在進行形
をやり直してから
別の英会話教室に行くと
まだ、なんとかついていけた

その教室が運よく自分に合った
ところだったので
中1英語くらいの
英語力は身についただろう

その後色々あって仕事を辞めて
今だったらなんでもできる!
と、思いフィンランドに
行くことにした

やはり心配なのは語学だった

フィンランド語は単語を1から
覚えないといけない
数字や色、動物など英語なら
わかるものを
覚えられる自信がなかった

まずは英語だ!
そう思ってフィンランド渡航前に
2ヶ月だけフィリピンで付け焼き刃の
英語留学をしてフィンランドに渡った


フィンランドに住み始めてやはり
すぐに言語の壁にぶち当たり
泣いた

まぁ、想定内だ

笑っているけど何の話をしているの?
今、私に話しかけたの?
私に話を振らないで
気を遣わせて申し訳ない

そんな気持ちでいっぱいだったが

でも、ルームメイトだったイタリア人の
シルビアは優しく私の拙い英語を
根気強く聞いてくれた

一緒にサウナに入ろうと誘ってくれたり
毎週金曜日には一緒にネットフリックスで
映画を観た

彼女とだったらコミュニケーションが
取れている気がした

そんなある日の夜
寝る前に歯を磨きに行ったら
洗面所にシルビアがいた

一緒に歯を磨きながら
ちょっと失礼と腕を伸ばして
蛇口をひねる

するとシルビアが私のその腕を見て

「なんで腕の毛が生えていないの!?」

と驚いた

彼女の自然な茶髪は
もちろん腕にも生えていて
でも茶色いに近い金色なので
目立たない

「日本人は腕の毛は薄いの?」

と聞かれた

”永久脱毛した”

さて、これは英語でなんと言うのだ

”もう毛は生えてこない”
いや
”生える”の英語がわからない
”2度と生えない”
”死”?

これだ!!

「マイ ヘアー イズ オールレディ ダイ」
”私の毛はすでに死んでいる”




シルビアの歯を磨くブラシの音が止まった


「……もしかして、レーザー?」
「あ! いえーす! いえーす!」

なんだレーザーで通じるのか


……ブハァ!!
マイwwマイヘアーwww
イズ オールレディwwww
ダイ!!!!ヒーwwwwww

2人で崩れるようにして
しばらく大爆笑した

それからことあるごとにシルビアは
私のヘアーが死んでいることを
いじり倒す


私はやっと置いてかれずに
一緒に笑えた

日本語じゃない言語で
会話して爆笑できた

それから
伝わらないことに
申し訳ないと思うことをやめた


英語は今でも嫌いだ

でも、ちょっとだけ
できると
こうやって他の国の人と
笑い合えることができる

もっとできると
きっとより話せる内容が
変わってくるだろう

新しいことをするときのハードル


言葉が通じないことは
不安だ

実際に不便だったり
心細い気持ちになったり
日本にいたら
感じたことのない
無力感を感じることもある

だからもちろん
できた方がいい

でも、できなくても
なんとかはなる

英語がもう少しペラペラになったら行こう
現地語をもっと勉強してからにしよう

そう思っていると
私はきっといつまでも
行けなかっただろう

海外へ行くためのハードルは
年齢を重ねるほど多い

家族の介護、子育て
金銭的な余裕
仕事
自分の健康面
家族の理解

それだけでなく
急に海外への扉が閉ざされ
ハードルどころか
スタートラインにすら
立てない状況も起きたのだ

たくさんのハードルの中でも
言語のハードルだけは
自分で高さが調節できる

低くても大丈夫だ

こんな語学力でもなんとか
海外で生きられた
人間がいるのだ

まぁ、毛はすでに死んでいるけど…!


yakko


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