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子どものやりたい・やりたくないをどこまで尊重するかフィンランドで見つけた答え

「そんなこと言うならやらなくて結構!」

私が子どもの頃、大人にそう言われた
ドッヂボールをするとき
行事の練習をする時
「え〜やりたくない」
というと怒られた

やりたくないものはやりたくない
強制的に参加させられるのが嫌だった

今度は大人側になり
子どもがやりたくないことは
聞いてあげようと思った
やりたいことをどんどん
やらせてあげようと思った

でも

子どものやりたい気持ちは
どこまで尊重したらいい?
子どものやりたくない気持ちには
どこまで寄り添えばいいのだろう?


保育士時代
いつも悩みの種だった


私の失敗:やりたい気持ち


「本物の包丁でおままごとをしたい」
と泣いてお願いされても
それは絶対にOKできない

でも、
「お部屋のおままごとを外の砂場で使いたい」
と言われたときに悩んだ

外には外で使っていい
砂場用のままごとがある
これは室内だけのものだからダメ
でも、その子なりに何か考えが
あるのかもしれない

これは洗えば済む話だから
自分で洗うなら
外で使ってもいいのではないか?

今はその子のやりたい気持ちを
優先してみようと思って
「自分で洗うなら外で使ってもいいよ」
とOKしてみた

その子は大喜びで砂場で遊び
いつもと違うもので
想像を膨らませて遊んでいた
うんうん、OKしてよかった

そう満足していると今度は
「僕もレゴを外で使いたい!」
と、レゴで作った剣を外で使いたいという
ままごとがいいなら
レゴもいいじゃないか
と交渉してきた
確かにままごとだけOKで
レゴがダメな理由を
説明できなかったので許可した

すると「洗えるものは外に持ち出してもいい」
というルールができてしまい
今度は室内で遊ぶおもちゃが
なくなってしまったり
子どもが洗ったので綺麗に洗いきれず
室内のあちこちに砂が落ちるようになった
おもちゃの傷みも早くなった

それだけでなく他のクラスの子が
「なんでそれ外で使ってるの? ダメなんだよ」
「先生がいいって言った」
という話から、他のクラスの子も
自分の担任の先生に交渉したが断られ
「なんであのクラスだけ
 外におもちゃを持ち出せるんだ」
という話になり
「ルールを統一しないと
 子どもが混乱するからやめて」
と他クラスの先生からも話があったため

結局、持ち出しは廃止
室内のおもちゃは室内で使うことになった


私の失敗:やりたくない気持ち


氷鬼をみんなでやろうと思った

そろそろルールのある遊びを
取り入れてもよさそうだと思って
来週の計画表(週案)を書いた
目的は
”ルールのある遊びを理解して楽しむ”

計画案を書いてホールも予約して
たかが氷鬼
でも準備に時間はかかった

そして当日、ホールに
子どもたちを連れて行った

「今日は〜 なんと! 氷鬼をしま〜す!」
と発表した時の
「いえ〜い!!」と言う声の後に
「え〜、やりたくない」
と言う声

「ボクも〜」
と、その男の子と仲のいい子たちが
同調し始めた

せっかくここまで準備したのに!!

という大人の都合なんてもちろん
子どもたちには関係ないが

楽しんでくれるかな
と喜ぶ姿を想像しながら
準備したのでガッカリしたし
イラッとしてしまう

「そんなこと言うならやらなくて結構!」
言いたくなる気持ちもわかった

でも、そう言わないと
決めていたので
「まぁまぁ、楽しいよ! 一緒にやろうよ」
と誘ってルールを説明した

鬼を決めて、10数え始める
「さぁ! 逃げろー!!」
「きゃーー!!!」
と盛り上がる中
もう壁際に座って参加しない彼

「ほらやろうよ」
「やらない」
「なんで?」
「やりたくないから」
「じゃあ一緒に逃げようよ」
「やだ」

さぁ、このやりたくない気持ちを
どこまで尊重する?

悩んだ

ある先生は
「やろうよ」
「やらない」
「そう、じゃあ見てていいよ」
と、あっさり

ある先生は
遊び始めちゃえば楽しめるから
一回は一緒にやろうと絶対参加させる

それぞれ考え方があって
どちらが正解でも間違いでもない

でも、その時の私は
”子どもの気持ちを尊重する保育”
ブームだったので
「わかった見てていいよ」
を選択した

すると次からその子はみんなで
何かゲームをするとき
最初から壁際に座るようになった
すると、他の子も
「私も見てる」と最初1人だったのが
2人、3人、4人…と
どんどん見学が増えていく

1人だった時はみんながゲームしているのを
見ていたが、隣にいる子が増えると
そこだけで遊び始めるようになった

「そこで遊ぶならゲームに参加してよ」
というとすぐに姿勢を戻して見学する
こちらもゲームを中断して
その子達を注意しなければいけないし
ゲームをしている子と
見学している子
両方に目を配らなければならない

とうとう抜ける子が多くなり
ゲームが成立しなくなった

やりたくない子の気持ちを尊重したら
ゲームをしたい子の気持ちが
尊重できなくなった

どうしたらいいのだろう?

みんなで遊んでほしいというのは
ただ大人の理想の押し付けで
子どもたちは
それを求めていないのだろうか?

一時期、一斉保育アレルギー(笑)
みたいなものを発症していたので
”集団”とか”みんなで”というものに
敏感になっていた

”子ども主体の保育” というものを
手探りでやっている時期で
わからないことばかり

どうすれば”子ども主体の保育”になるのか
ばかり考えていた

このままみんなで遊ぶ時間よりも
それぞれ気の合う友達と
好きな遊びをする時間だけに
したらいいのではないかと思った

でも本当にこれでいいのだろうか?
子どものやりたくないを
そのまま受け入れていいのか?


いつも同じ友達と同じ遊びで
新しいことを知る経験が
少なくなるのではないだろうか?

これから子どもたちが出ていく社会には
やりたくなくても
やらなきゃいけないことがあるから
我慢して参加することも学ぶ必要がある?

誰かの意見を取り入れたら
どちらかの意見は聞き入れられない
そんな状況にもどう対応したらいいのだろう

ぐるぐる

ぐるぐる 

頭の中で考える

調べても色々な考え方があって
何が正しいのかわからない
調べれば調べるほど
その境界線の引き方がわからなくなった

調べていく中で

大人が提案するのではなく
何をするかは子どもたちで
とことん話し合いをさせる
そういう保育の方法を見つけた

これはまさに子ども主体の保育!

早速、子どもが話し合いで
決める方法を実践してみた

でもその時の私には
話し合いの場でのちょうどいい
関わり方がわからなかったし

今思えば私自身の考えがブレてたのが
一番の原因だろう


こんな悩んでばかりの保育士時代
結局何がいいのか
どうしたらいいのか
悩んだまま・わからないままだった


フィンランドの幼稚園で見つけた私の答え

”フィンランドの幼稚園は子ども主体で
 一斉保育なんてない!”

そんなイメージを持っていた

ところが行ってみたら
結構みんなで一斉に絵を描いたり
全員参加の鬼ごっこや
転がしドッヂボールをしていた

ある園ではいつも外遊びの時は
最初から最後までずっとブランコに
乗っている男の子がいた

外でゲームをする時も
「ブランコがしたい!」
とブランコから動かなかった

でも先生は話をしてゲームの輪にその子を入れた
でもゲームのルールは理解していないようだった
だから聞いてみたのだ

「どうしてこの子も輪の中に入れるの?」
すると先生たちはこういった

「そうね、この子はゲームのルールを理解していないから輪に入る意味がないように見えるかもしれないね。でも、私はみんなの輪の中に入って一緒に参加することに意味があると思ってるの。ゲームを理解して参加することじゃない。自分の好きなことは家でもできる。でも幼稚園に来て集団の一員であることを学ぶことは必要。だってこの子はこれから先も人と関わりながら生きていくから。この10分間はそれを学ぶための時間よ」


  ストン


腑に落ちた音がした


そうか……



一斉保育がいけないとか
やりたいかやりたくないかとか
そこが問題ではない

ルールを理解してゲームを楽しむことだけが
集団遊びの目的ではない


その子が将来のために
必要なスキルを育てるために
今、必要なことを
基準に考えればいいのだ


フィンランドのその先生は
やりたくない気持ちは受け入れるが
とはいえこれから社会の中で
生きていくために
10分はその場にいること
終わったらまた好きなことができる
そう、ブランコの子に話していたそうだ


”子どものやりたくない気持ちを尊重する”
というのは
意見を全て聞き入れることではない

”やりたくないと思っている気持ち”
を尊重するのだ


保育には正解がない
子育てには正解がない

だからやってみてわかった
失敗もたくさんあった
また調べて、勉強して
また「なんか違う」と思うこともある

子どもに関わることで失敗してはいけない
という気持ちもあったが
私も人間だから失敗する
大人は完璧ではないことを知って
「大人でも失敗するから
 自分も失敗することもあるよね」
と失敗を恐れず挑戦する気持ちを
育てることもできる

だから誰かが成功している方法で
うまくいかなくても
自分には合わないこともあるし
自分が成功したからといって
みんながうまくいくとも限らない

まずはやってみて
失敗して、うまくいったら
それを集めていいとこどりをして
自分だけの「ストン」が
いつか見つかればいい

yakko


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