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AIの未来に、キリスト教会は一石を投じられるのか?〜ローマ教皇のG7参加に関して

今年6月にイタリアで行われるG7サミットに、ローマ教皇フランシスコの参加が明らかになった。これは、G7会議の歴史の中でも初めての出来事だという。しかも、特に興味深いのは、AI=人工知能に関するセッションに出席するということだ。

ローマ教皇、初のG7へ AI規制、首脳と議論
イタリアのメローニ首相は26日、イタリアで6月に開催する主要7カ国(G7)首脳会議の人工知能(AI)をテーマにした議論に、ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇が参加すると発表した。ローマ教皇がG7の会議に参加するのは初めてという。(朝日新聞/2024.4.28)

急速に拡大しつつあるAI技術については、以前、ChatGPTの関連で本コラムでも触れたが、実は、カトリック教会は、かねてよりそのAI技術の誤った使い方について警鐘を鳴らしており、2020年には「AI倫理に関するローマの呼びかけ」として説明責任や透明性を求める以下の文書を発表、政府機関や開発企業などもこの求めに応じ、非倫理的な用途でのAI利用を防ぐことを確認していた。

「AI倫理に関するローマの呼びかけ」
1、透明性:AIシステムは原則として説明可能でなければならない。
2、多様性:AIはすべての人のニーズを考慮し、すべての人が利益を享受できるものでなければならない。また、全ての個人がAIを通して自分自身を表現し、成長していく最高の条件を享受できるようなものでなければならない。
3、責任:AIを設計または使用する者は、責任と透明性を念頭に開発を進めていかなくてはならない。
4、公平性:AIに携わる者は、偏見に基づいた行動や開発を行ってはならず、公平さと人間の尊厳を守らなければならない。
5、信頼性:システムは確実に動作しなければならない。
6、セキュリティとプライバシー:AIシステムは安全に動作し、ユーザーのプライバシーを尊重するものでなければならない。
(GIGAZINE/2020.3.21)

しかし、こうした呼びかけにもかかわらず、AI技術を使ったフェイクニュースやフェイク動画・画像などは日々拡散を続けている。こうした状況の中、カトリック教会は危機感を募らせ、今回の首脳会議への出席に繋がったのではないかと推察される。ローマ教皇も5月12日の「世界広報の日」に先立って、以下のようなメッセージを発信している。

人工知能システムは無知からの解放に貢献し、異なる人民間、世代間の情報交換を容易にすることができるかもしれない。しかし、その一方で、AIは部分的、あるいは完全な偽りによって現実を歪め、「認識を汚染する」道具ともなりうる。(VATICAN NEWS/2024.1.24)

キリスト教会に限った話題ではなく、この新しいテクノロジーであるAIが正しい使われ方の下に、人々を一層進歩させる術になるのか、誤った使われ方の下に、現実を歪め、人類に混沌と破滅をもたらす術となるのか、まだ誰にも分からない。ただこのローマ教皇の参加が、将来のAIの倫理的な活用に向けたなんらかの影響につながっていくことは間違いないだろう。今後の反響についても注視をしていきたい。

(text しづかまさのり)


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