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米国大統領選と性的マイノリティ

 2020年11月に行われるアメリカ大統領選に向けて、候補者同士の論戦が繰り広げられている。大方の見方は現職トランプ大統領の再選が濃厚だと言われている。 しかしここに来て、アメリカ民主党から有力な対抗馬が頭角を現してきた。38歳のピート・ブティジェッジ氏である。その若さもさることながら、そのスマートな見た目や語りは、他の民主党候補とは一線を画す存在となっており、今や大統領選挙常連のバーニー・サンダース氏や、元副大統領のジョー・バイデン氏に並ぶ有力候補の1人として数えられている。

 さて、彼が他の候補者と一線を画している理由はまだある。同性愛者であることを公表しているのもその1つである。彼が同性愛者であることを公表したのは、サウスベンド市長時代の2015年のこと。このカミングアウトにより多くの保守層の逆風に晒されることになった一方で、都市部のリベラル層を中心に指示をされ、結果、80%以上の票を獲得し2期目の再選を果たしている。そして、その追い風に乗って、今回の大統領選挙の民主党候補として名乗りをあげたわけである。

 しかし、今、同性愛者であるということで、ブティジェッジ氏の大統領選挙に暗雲が立ちこめている。それは、キリスト教保守層からの反発である。

【躍進のブティジェッジ氏キリスト教保守は「問題」】
ブティジェッジ氏が同性愛者と公表していることについて、キリスト教保守系の人々の間で波紋が広がっています。リバティ大学広報担当者、ライアン・ヘルフェンバイン氏:「信仰心の強い人々やキリスト教保守派は多くが、伝統的な聖書の解釈に基づいて(LGBTの大統領は)非常に問題だと考えると思う」(ANN NEWS 2020.2.08)

 キリスト教においては、旧約聖書の時代から「同性愛」は非常に大きな罪と考えられており、不倫や近親相姦と同様、死罪にあたるとされている。その為、キリスト教の保守層においては「同性愛」に対する嫌悪感は未だに根強く残っている。現職トランプ大統領に近いラジオパーソナリティが「ゲイが大統領になる国でない」と発言したことが波紋を呼んでいるが、まさにその発言が全てを物語っている。

聖書には以下のように書かれている。

【旧約聖書 レビ記(20:13)】
女と寝るように男と寝る者は、両者共にいとうべきことをしたのであり、必ず死刑に処せられる。彼らの行為は死罪に当たる。

【新約聖書 ローマの使徒への手紙(1:27)】
同じく男も、女との自然の関係を捨てて、互いに情欲を燃やし、男どうしで恥ずべきことを行い、その迷った行いの当然の報いを身に受けています。

 上記のとおり、聖書においては「同性愛は認められないもの」として定めているが、世界的な人権保障の動きに関連して同性愛者に対する差別の問題も、今、多くのキリスト教圏の国々で揺れているトピックスとなっている。スイスでは、性的マイノリティの差別を禁止する改正法が賛成多数で可決された一方で、ポーランドではLGBTを差別する政策が導入されようとしているなど、同じヨーロッパの国にも関わらず、その考え方は様々である。

 政教分離とは言いながらも、政治と宗教が切り離せない関係にあるのは以前も記事にした。4年前の大統領選挙で、トランプ大統領に軍配が上がった大きな要因も「キリスト教福音派」の支持が大きかったことにあると言われている。ブティジェッジ氏もまた大統領になるためには、こうしたキリスト教派閥の支持を取り付ける必要がある。
 
 越えなければいけないハードルは高い。女性やマイノリティの為、資質や成果にかかわらず打ち破れない見えない障壁を「ガラスの天井」などと表現されるが、同年齢の筆者としては、こうした患難を乗り越えて、このガラスの天井を破ってもらいたい。そして、史上最年少となる米国大統領の誕生を願いたい。

(text by しづかまさのり)

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