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不定期育休ニュースまとめ<男女の賃金格差>2023.11.17

女性リーダー、女性管理職、両立人材向けの研修事業を手掛けるワークシフト研究所の広報担当が日々ウォッチしているニュースから、育休、ワーキングマザー、女性活躍推進、男女共同参画、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)にまつわるニュースを独断と偏見でまとめます。
余談も多めですが、お役に立てば幸いです。


前回の育休ニュースまとめでは「働く女性のロールモデル」に関する記事などをご紹介しました。

今回は、ハーバード大学、クラウディア・ゴールディン教授のノーベル経済学賞の受賞が決まり注目を浴びている「男女間の賃金格差」を取り上げます。

ちなみに、ゴールディン教授はハーバード大学経済学部で初めて終身在職権を得た女性教授であり、ノーベル経済学賞の受賞においては女性で3人目だそうです(女性の単独受賞は初)。


男女間の賃金格差とは?

ゴールディン教授の研究が発表されるまで、経済学では経済が発展すればより公平な競争環境が整うと考えられていました。

しかし実際は、産業革命で生産や労働の場が家庭から工場へ移ると、既婚女性は労働市場から締め出されていきました。20世紀に入るとサービス業の仕事が増え、女性の労働参加率が再び上昇しました。

そして現在、男女の教育水準や職業が同じでも賃金格差が生じていることが指摘されています。アメリカでは、「平等賃金法(Equal Pay Act)」が成立してすでに60年が経過していますが、女性が男性と同じ賃金を得るにはさらに33年かかる、という分析があります。


男女間で賃金格差が生じる要因。格差はなぜ埋まらないのか?

男女間で賃金格差が生じる要因として、上のBusiness Insider Japanの記事では、職場での母親に対する無意識の偏見、女性の方が低賃金の仕事に多く就いていること、年齢が上がるにつれて賃金格差が大きくなること、などを上げています。

この課題について、弊社 所長の国保祥子(静岡県立大学経営情報学部准教授)も講演等でよくお話させていただいています。国保は、「女性はどの職に就いても男性より低い時給で働いている。管理職の割合も低く、50代になると250万円の年収格差ができる」と言います。大雑把に言えば、250万円は新卒の年収、約1年分です。この背景には、「仕事と家庭の両立の困難さがある」と国保は言います。

(図1:年齢別にみる男女の所得格差, 国保祥子, 岐阜県男女共同参画フォーラム2022)
国保の話の続きはこちらでどうぞ。


ゴールディン教授から見た日本の状況

ゴールディン教授は、日本が女性の労働参加率を継続的に引き上げてきたことを称賛する一方で、日本の女性が「労働時間が短い人たちが労働力として働いている」ことを指摘しています。

女性は男性より育児(や家庭)の責任を担うことが多く、キャリアアップや収入アップが難しくなりがちです。長時間いつでも働くことが優遇される職場では、この傾向が一段と強くなります(いわゆるチャイルドペナルティ)。ゴールディン教授は、「女性を労働力にするだけでは十分ではない」とさらなる取り組みを求めています。


日本における男女の賃金格差の現状

それでは、日本における男女の賃金格差は実際のところどのような状況になっているのでしょうか。

日本では、2022年7月の女性活躍推進法の省令改正で、常用労働者数301人以上の企業に対して男女間賃金格差の情報開示が義務付けられました。この情報開示で、日本における男女間の賃金格差は平均3割であることが分かり、その要因として「女性管理職比率の低さ」が上げられています。相対的に賃金が低い「一般職」や「地域限定職」、非正規雇用の女性比率が高い金融・保険、また小売・卸売業で格差が大きくなっています。

そんな中、地銀では女性管理職比率が水増しされている可能性も報道されています。なんてこったい!


男女間の賃金格差は仕方ない?

男女間の賃金格差に対して、「働く人」はどのように考えているのでしょうか。

ある調査によると、63.3%の人は「男女の賃金格差が仕方ないとは思わない」と回答しており、58.9%の人が「男女の賃金格差の解消のために、職場に改善を希望」しています。


日本政府の取り組みは?

それではこの課題に対して、日本政府はどのようにアプローチをしているのでしょうか。主な取り組みとして、次のような動きがあります。

  • 2020年4月* パートタイム・有期雇用労働法の施行。同一労働同一賃金として、雇用形態にかかわらない公正な待遇が確保されることになった。(*中小企業への適用は2021年4月から)

  • 2021年6月 育児・介護休業法改正。女性が子供を産むと労働時間と収入が減るチャイルドペナルティを緩和すべく、男性育休取得が促進されることになった。

  • 2022年7月 女性活躍推進法の省令改正。常用労働者数301人以上の企業に対して男女間賃金格差の情報開示が義務付けられた。

さらに、今年の女性活躍・男女共同参画方針原案では、東京証券取引所の「プライム市場」上場企業に対して、2030年までに女性役員の比率を30%以上にするよう目指すことが提案されました。


国内企業の取り組みは?

翻って、国内の企業は女性役員の比率を増やす以外にどのような取り組みをしているのでしょうか。

先日、株式会社メルカリの男女間の賃金格差に関する発表が話題になりました。同社では、平均賃金に男女で37.5%の格差があったことに加え、同じ職種・等級(グレード)の男女でも7%の「説明できない差」が生じていました。

この説明できない差は、入社後の評価や昇給機会が男性に偏っていたからではなく、「中途採用時のオファー金額」に原因があったそうです。

メルカリでは、職場におけるジェンダー平等に関する取り組みを評価する国際監査「EDGE Assess」を取得する際にこの格差に気づき、即座に報酬調整を行いました。この監査プロセスでは、男女同一賃金が重要な評価指標のひとつとなっています。

米国では現在、16の州で前職の年収を問うことが禁止されているそうです。日本でも同様の措置があるとよいのかもしれません。

余談ですが、私はこのニュースを読みながら、以前読んだシェリル・サンドバーグさんの著書『リーン・イン』から、男性の方が女性より強気で給料交渉する、というくだりを思い出しました。本で紹介されていたのは新卒時の給料交渉に関する調査ですが、女性もこれをふまえて、転職の際はもう少し強気に交渉してみてもよいかもしれません。

実際、弊社代表の小早川優子も「女性は自分の能力を過小評価しがち」だと言います。なので、小早川が求職者と面談するときには「前職より金額の条件を下げない、もしくは上げることを前提に転職活動をする」ようアドバイスをするそうです。

交渉なんてとても、とお思いの方は小早川の『なぜ自信がない人ほど、いいリーダーになれるのか』をどうぞ。


女性管理職の増やし方

とはいえ、メルカリで報酬調整ができたのは、約95%が中途採用で成り立っている企業だからこそ。一般的な日本企業はやはり、まずは30%を目指して、女性管理職の比率を底上げしていく、ということに尽きるのかもしれません。

ノーベル賞の授賞式は12月10日。

ニュースでも再び男女間の賃金格差が話題になると思います。ゴールディン教授の功績をお祝いしながら、是非皆さんの職場や家庭でもこの課題を話題にしてみてください。


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