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【キャリア発達】ロールモデルの投資を真似しよう

このnoteの要約

  • こんなふうになりたいな、と思えるロールモデルの存在はキャリア形成に良い作用をもたらす

  • 具体的には、代理的経験と社会的説得の観点から自己効力感を高めることに寄与し、キャリア目標達成に向けた行動が強化される

  • ロールモデルを自分のキャリア発達に活かすためには、その人のスキルや能力ではなく、投資を真似することが有効

  • <キャリア理論 キーワード>

    • Albert Bandura アルバート・バンデューラ

    • 社会的学習理論

    • 自己効力感

    • 結果期待

キャリアの目標が設定しにくい時代

”キャリア自律”というキャリア格差が広がる社会的前提

 特に大企業におけるキャリアのついての文脈で、”キャリア自律”という言葉が出てきて久しいですが、この言葉は「自分のキャリアは自分で考えて実践する」と言うポジティブな解釈をする分には非常にいい言葉ですが、自律的にキャリア設定ができない人にとっては突き放されたような感覚を受けるでしょう。

 実際に企業の立場から考えると、働く人の多様性が増したり社会の変化が激しい時代になっていることを受け、会社が一人一人のキャリアをケアすることが非常に難しくなっています。

客観的な目標が置きにくい

 以前の年功序列型年次に伴って職位が上がっていくキャリアの発達モデルは、一部の人にとってのみ有用なもので、特に民間企業においては崩壊しつつあります。
そうした中で、客観的なキャリアの目標が起きにくくなっていいます。30歳で係長、35歳で課長といったような客観的な目標が置きにくくなっています。

 キャリア発達を自分で行っていくためには、目標を設定して現状分析をして、そのギャップを埋めるための課題設定をすることが有効なアプローチです。

そこで、ロールモデル

 目標の客観性が設定しにくい状況で具体的な目標設定をするには、ロールモデルが有効です。「ああなりたい」「憧れる」 こうした主観によって”お手本”となる具体的な個人を見つけ出します。ここでいう個人は、一人の人に限定する必要はありません。むしろ複数の人を設定して、自分が憧れる部分を”つまみ食い”して、擬似的な人物像を想像できると、より効果的です。

ロールモデルを置くことの効果

 ロールモデルを置くことの有用性を、キャリア理論の観点から説明します。具体的には、Albert Baduraが提唱した、社会的学習理論の中から「自己効力感」と「結果期待」というキーワードに基づいて説明します。

自己効力感を高める

 ロールモデルはAlbert Banduraが提唱した自己効力感の観点で有効なアプローチです。

 自己効力感というのは「自分は、結果を出したり、目標を達成したりするために十分な能力を持っている」と自分で認知している状態のことです。
つまり自分が「できる」という気持ちになれることを意味しています。

Banduraによれば、自己効力感の源(Source)は4つあります。

  1. 達成経験 (Mastery experiences)
    過去に自分でうまくやれた経験を保有している

  2. 代理的経験 (Vicarious experiences)
    他人や周囲の人がうまくやれたことを見聞きして知っている

  3. 社会的説得 (Social Persuasion)
    「できるよ」「大丈夫だよ」という言語的な説得を受ける

  4. 心身の状態 (physiological and emotional states)
    心や身体が健康で充実している

ロールモデルを置くことは2つ目の代理的経験と社会的説得の観点で自己効力感に作用します。
自分がロールモデルに置いた人が仕事で活躍して結果を出し、そして周りから認められている様子を自分が観察することによって自分の代わりに成功を体験することができます。
また、ロールモデルは通常は職場の同僚先輩など近い人を置くことが多いと思います。つまり自分がそのロールモデルと直接コミュニケーションをとることができる状況であることが多いです。直接コミュニケーションをとるという利点を生かしてそのロールモデルの方から「こういうふうにやったらできるよ」、「普段のあなたならできるよ」というアドバイスもらうことで自己効力感が高まります。

結果期待がイメージできる

「結果期待」は、自己効力感と同様にAlbert Baduraが提唱した概念です。自己効力感は、自分(の能力)に対する期待であり、結果期待は外的なものへの期待となります。

ロールモデルを置くことで、代理的体験と社会的説得を得られ自己子力感が高まり、自分の行動を促すことができます。
行動した結果として、成果が得られたり、周囲が承認したり、望むポジション・役割につけてもらったりといったことは、自分の外にあるものです。

ロールモデルという実在の人物がいることで、こうした結果についても強い期待を持つことができます。仕事で活躍するロールモデルのAさんが、実際いに高いポジションをついたり、周囲から評価を得ていることは、あなたの前に事実として存在します。

ロールモデルの投資を真似する

「能力」「考え方」といったものは真似できない

 ロールモデルの方は、成果を出すための能力と考え方といったものが備わっています。この人のようになりたいと思った時に、この能力・考え方といったものを直接真似することはできません。
なぜなら、そもそもあなたには、そうした能力もなく、考え方もまだ未熟だと言うことが前提にあって、その人のことをロールモデルとして置いているからです。間違っても、能力・考え方そのものを真似してはいけません。

真似をするのは「投資」

 ではどうしたらいいのでしょうか?

 ロールモデルに近づくためにはその人がやっている投資を真似します。ここで言うと人はNISAや株式といった金融投資のことではありません
ロールモデルにしている人が、成果を出したり能力を高めたり良い考え方を身につけたりするために、時間やお金を何に投じているのかといったことがここで言う投資になります。

 例えばビジネスリテラシーを高めるためにビジネススクールに通っている、逆境にも耐えられるような強いストレス耐性を身につけるために禅寺に行って瞑想することを習慣的に行っている。このようなロールモデルが行っている投資を観察、もしくは本人への直接のインタビューによって把握し、この投資行為そのものを真似することでロールモデルに近づくことができます。

もっともやりやすのは、同じ本を読むこと

 投資行為を真似するので最も安いのはそのロールモデルと同じ本を読むことです。そして、その本に書いてあることの中からロールモデルが行動としてやっていることに着目してその行動を真似してみます。
さらに、その本の感想やその本から学んだことをロールモデルの方とディスカッションさせてもらいます。同じものを見た(この場合は本の内容)中で、その人がどういう考え方で、何を発見することができたのか?そうしたことを学ぶことが自分のキャリア成長にとって非常に重要なものになります。

 私自身も過去にロールモデルと呼べるような憧れの先輩上司がいました。私、はその人たちが読んでる本を教えてもらって同じ本を読むことをしました。本を読んでいくと、「あの人はあの時にこういう発言をしたのはこの本で書いてあったこのことだったのか」といったことが後からわかります。表面的なことでなく、内面からロールモデルに近づくことができます。
 投資の真似の積み重ねによって私自身が設定していたロールモデルに近づくことが出来ましたしそれによって自分のキャリア発達に大きく寄与させることができました。

 みなさんもぜひ、ロールモデルを見つけてその人の投資行為を真似してみてください。

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