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まちづくりを勉強する大学生が体験した、充実すぎる千曲市での1週間

初めまして、私は筑波大学でまちづくりを学んでいる松浦海斗と申します。普段はつくばで暮らしつつ、暇があったらどこかに旅行に出かける、そんな生活をしています。

コロナ禍が始まって以来、授業や課外活動のミーティングなどさまざまなものがオンラインになり、その恩恵を受けて旅行先で大学の課題をやったりミーティングに参加したりと、率先してワーケーションに取り組んでいます。家や図書館で机に向かってパソコンを開くのも良いですが、自然の豊かな土地に行けば新鮮な気分になれていつもと違うアイデアが出てとても楽しいです。もしこの記事を見ている学生さんがいたら是非試してみてください。

そんなワーケーション大好き人間が今回参加させていただいたのは、8月上旬に開催された「真夏のワーケーションシップ」です。このイベントは以前「姨捨ゲストハウスなからや」に泊まった際、オーナーの鍛冶さんから「今度千曲でワーケーションイベントやるから来なよ!いろいろな人が集まってて絶対面白いよ」とお誘いを受けたことがきっかけです。

「なからや」は高校2年生の冬に一人旅をしていた時に偶然見つけた宿で(高校時代から私は旅行好きで全国を巡っていました)、当時はまだオープンして間もないゲストハウスでした。受験やコロナもあり、約3年半ぶりに訪問し、その間に千曲で起きた様々な話を教えてもらいました。このnoteでたびたび登場している「昭和の寅や」や「フロスタ」がオープンしたこと、温泉街でガラクタ市を開催したら市内外から大勢の人が集まったこと、このワーケーションイベントが始まったこと等々……県外の人間からしたら失礼ながら「長野にある小さな町」だと思っていた千曲市がこんなにも熱気と活力に溢れているとは思ってもいなかったのです。

今回のワーケーションではこれらの出来事に関わった人が集まると聞き、まちづくりを勉強している身としても、これはぜひ行かなければと思い、大学の友人とともに参加してきました。

千曲に約1週間、全期間イベントに参加したのですが毎日が本当に充実していて全てのことを書いたら1冊の本ができあがるのではないかと思うくらいの体験をして、学びを得ることができました。この記事では個人的に興味深かったこと、特にまちづくりやモビリティーに関する内容を抜粋して紹介しようと思います。

千曲市での1週間の始まりを飾る、3年ぶりの花火大会

つくばから車ではるばる4時間、たどり着いた日の夜は3年ぶりの開催となる千曲川納涼煙火大会がありました。付近では夕立になっていた場所もあったものの、幸い会場は雨がぱらつく程度で、最高の花火を見ることができました。特にAimer「残響散歌」の音楽に合わせて花火を打ち上げる「ミュージック花火」や、万葉橋から花火が流れ落ちる「ナイアガラの滝」は迫力満点でした。

この日は運営のお手伝いとして設営・撤収や案内、見回りなどをしていました。間近で見た花火に圧倒されたのは言うまでもありませんが、同じお手伝い係として来ていた信州大学や長野大学の学生さんと交流することができました。長野大の方々は環境ツーリズム学部という所で千曲を題材に研究しているらしく、面白いお話をたくさん聞かせていただきました。まちづくりや地域おこしのことを専門で学べる大学はまだまだ少ないので、とても親近感が湧きました。

夜は「なからや」で弾き語りを聴いたり、須坂市で地域おこし協力隊を務めている井上さんと現在取り組まれている高校生の居場所づくりについて話し合い、気が付くと深夜3時近くに。それでも翌朝は早朝から集合し、みんなでオレンジ色の帽子を被って花火大会の会場となった河川敷でゴミ拾いをしました。草むらの中からブランドバッグを見つけたりもしたのですが........今ごろ持ち主の元に届いているといいなぁ。

観光列車「ろくもん」を利用したトレイン・ワーケーションと小諸巡り

NHKの全国放送でも取り上げられた「トレインワーケーション」。しなの鉄道の観光列車「ろくもん」を使って戸倉から小諸まで移動し、バスに乗り換えてワイナリー巡りを楽しんで戻ってくるという行程でした。鉄道業界で著名なデザイナーの水戸岡鋭治氏が手がけた3両編成のこの電車は、1両ごとにモチーフが異なり、内装には県産の材木を使用しているそうです。特に3号車は個室スタイルになっており、Wi-Fi機器を設置すれば今流行りのテレワークブースに早変わりです。

1号車や2号車はオープンな空間で、パソコン作業や皆で話し合いをするなどさまざまな用途に使えます。こうなるとまるで「ろくもん」はテレワークのために作られた電車だったのでは?と錯覚してしまいます。乗車中はドリンクに加えてスイーツの提供もありました。ミルクレープには名産の杏を使ったジャムが挟まれていてとても美味しかったです。

ろくもんセンター所長の山岸さんと直接お話しできたこともとても良い経験となりました。地方の鉄道が単なる公共交通としての役割を超えて、長野の顔として地域を巻き込んで観光客をお迎えするという責務が感じられました。

小諸駅に着くと駅の横にあるカフェ「小諸駅のまど」で昼食を取りつつ、小諸についての説明を聞きました。このお店はかつて存在したみどりの窓口の空きスペースを活用して2020年にオープンしたそうで、電車や高速バスの待ち時間に最適です。地方駅ではこのように使われなくなった駅設備が放置されているのをよく目にしますが、駅を利用する際に一息つける場所として生まれ変わるのは素晴らしいことだと思います。ときどきイベントも開催しているようなのでいつか見てみたいです。

ワイナリーに向かう前に試乗させていただいたのが、スマートカート「egg」。リチウムイオンバッテリーで動く、CO2を排出しない電動3輪カートです。小諸市の新たな公共交通の構築を目指し、街なかの回遊・散策を支援する乗り物で、経路上のどこでも乗り降り自由とのことです。

車体の小ささを活かして狭い道路でも通行でき、坂が多く移動がしにくい小諸市特有の問題を解決する画期的な交通手段であると感じました。今回試乗した「egg」の経路上には建ち並ぶ商家と風情が漂う北国街道、市役所や総合病院などが集約されていました。小諸市では中心市街地に都市機能を集約する「コンパクトシティ」構想を推進しており、街が大きな転換期を迎えています。

市役所が2015年に今の場所へ移転し、翌年には市民交流センターと市立図書館からなる複合施設「こもろプラザ」が隣接した場所に開業し、にぎわいを創出しています。歴史的な情緒は残しつつ、主要施設を小諸駅周辺にまとめるという、まちづくりにおけるお手本のような街なみを見ることができました。他にも小諸ではさまざまな取り組みが行われており、居場所づくり、街なみ整備、モビリティーと、先進的な街であるという印象を受けました。
 

 実証実験中の「温泉MaaS」体験記

話は千曲に戻り、LINEを使った実証実験「温泉MaaS」を体験してきました。ワーケーション参加者にはMaaSチケットが付与されます。温泉MaaSチケットはタクシーなどの移動手段にも使えるほか、対象店で商品の購入に使えたり、シェアオフィスとして解放されたカフェや温泉宿で使えたりもしました。温泉宿で大学の課題を進め、疲れたら温泉に浸かり、目の前にあった和菓子屋さんでかき氷を食べる......なんと素敵な働き方でしょうか。今回タクシーは利用しなかったのですが、配車から支払いまでLINEの操作だけでできるというのは画期的です。

千曲市内の数カ所にシェアサイクルも置いてあり、近場の観光に使ってみました。これはドコモ・バイクシェアのシステム提供を受けており、専用アプリをダウンロードして登録すればすぐに使えます。アプリから簡単に予約でき、自転車に付いているQRコードを読み取るだけで解錠してくれる優れものです。一度登録すれば他地域のドコモ・バイクシェアでも使うことができ、東京をはじめ全国で簡単に自転車を借りることができるのでとてもおすすめです。

ワーケーション参加者は市内バスの1日乗車券が使えたので、せっかくだからと思い乗ってみました。こちらもLINEを使用して乗車時と降車時に操作するだけという便利なシステムが使われています。乗車時に移動目的等を答えるアンケートがあり、バス利用時に区間ごとの目的を調査してサービス改善を目指しています。MaaS Tech Japanの清水さんいわく、現在はまだ試行段階だが、今後全国でデータを蓄積してより良い交通施策を導き出せるようにしたいとのことでした。今後が楽しみです。 

1週間を振り返って

仕事をしながら遊ぶというよりは仕事をしている人を眺めながら遊ぶ、そんな1週間でした。後半のキャンプでは子どもたちと一緒になってはしゃいだり、Fresco Laboさんの食事をお腹一杯食べたり......ワーケーションというよりもバケーションに限りなく近い、「バーケーション」って感じでした。(田村さん、お手伝いということで来たのに、すみません)

それでもたくさんの人と出会うことができ、とても貴重な経験になりました。特に都市開発系の業界について最前線で活躍している方々や他大学の学生さんと交流できたことが嬉しかったです。

千曲のすごいところは、様々な分野の人が集まって立場関係なく対等に話せる環境が作り上げられているところ、そして、新しい挑戦に対して積極的・協力的な雰囲気ができているところ、そのように思います。いろいろな話をする中で自分がたどりついた結論は、「人を動かす原動力として若さは武器になる」ということです。見た目は30代と言っても疑われないオジサンであることはさておき、今できることを、今しかできないことをしよう、そう強く思えた1週間でした。全ての出会いに感謝して筆を置くことにします。

最終日に実施したサバゲーで、最後に大学生3人で特攻を仕掛け、有終の美を飾れたのは良い思い出です。


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