ことばの発達を支える基盤 3)認知機能の発達

認知機能とはどのようなものでしょうか。goo辞書には、

視覚や聴覚などによって外部から得られた情報をもとにして、周囲の物事や自分の状態を正しく把握し、適切に行動するための、脳の高度な機能。記憶・思考・判断・理解・計算・学習・言語といった知的機能の総称

とあります。抽象的で少しとっつきにくいですが、頭の働き全般と考えるとイメージが湧きやすいかもしれません。

私達は、周りの人とどうやって付き合うか、物をどのように操作するかなど、環境と相互作用しながら外界を知り、その中で適切な行動をとれるよう学習をしていきます。このような認知機能の発達は、ことばの発達とも深く関係しています。

意味のあることばを話せるようになる前の段階である前言語期には、見たり聞いたり手で触れたりして事物を認識する、事物の使い方がわかる、用途や性質にそって事物を弁別する、音の違いを聞き分ける、模倣するといった能力が発達しことばの獲得の基礎をつくります。

また、ことばの発達に重要なのが「象徴機能」です。

「象徴機能」とは、ある物や事柄を別の記号(シンボル)で代表することです。生後8〜9ヶ月ごろには、手をふる行為がバイバイを意味する、信号の赤が止まれを意味する、「りんご」という言語音が赤くて丸くて食べるとシャキシャキする果物を意味するといったように、物や音とそれらが表現する意味との関係に気づくようになります。

その後、生後10〜12ヶ月になると、積み木を電車に見立て走らせたり、りんごの絵カードをみて食べる真似をしたり、「ふり」や「見立て遊び」ができるようになります。1歳後半には、「ふり」や「見立て遊び」が発展し、お母さんの真似をしておままごとをしたり、ヒーローになりきってヒーローごっこをしたりします。

このように、目の前にない物事を頭の中で他のものに置き換えて表現することができるようになるのが「象徴機能」の働きであり、象徴機能の代表的なものが「ことば」といえるかもしれません。

今回紹介した認知機能の発達は、特別なトレーニングによってのみ促されるわけではありません。毎日の生活の中で経験することすべてが認知発達につながるのです。

遊びに使ったおもちゃや文房具などの片付け、食器を並べることや洗濯物をしまうことなどのお手伝い、ふりや見立てを取り入れた遊びの展開など、楽しみながらできる働きかけがたくさんあります。お子さまの発達段階や興味にあった方法をぜひ見つけていきましょう。

参考文献:
石田宏代,大石啓子編集:言語聴覚士のための言語発達障害学.医歯薬出版,2012.
小椋たみ子:言語獲得における認知的基盤.心理学評論,Vol.49 No.1,25-41,2006.

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