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引き算

新国立劇場でのCo.山田うん『オバケッタ』公演が終わった。(2021年7月2日〜4日)

山田うんさんとはすでに長い付き合いだが、今も肝に銘じているのは、音楽を担当し始めた初期に何気なく言われた「音楽が饒舌に語りすぎると、ダンサーの身体が見えなくなる」という言葉。

観客は、当然ながら音や光や身体表現などの総合として舞台を観ている。音楽家はそれを忘れがち。良かれと思って「いい音楽」を詰め込みがち。

だが、情報量が多くなりすぎると、空間にスキマがなくなる。

ステージに立つ演者がどんなに繊細な表現をしても、鳴り響くサウンドが饒舌すぎると、注意をそらしてしまう可能性がある。なので、あえて適度にスキマを作ることが大事なのだ。

ステージに限らず、表現者って「埋め尽くす」ことをゴールにしがちだ。おのれの力で世界を構築するぞ!と肩に力が入りがちだ。

だが共同作業では、相手がいいところを見せられるようにあえてスキマを作る「引き算」の方が重要な場合もある。そんな「引き算」ができる人たちの仕事を「足し算」した時、最高のパフォーマンスが生まれる。

まあ、これってどんな仕事でも、いや人間関係でも恋愛でも夫婦でも家族でも一緒かもしれない。

100% 「俺が!」「俺が!」という「足し算」だけの態度では、何事もうまくいかない。というか、「引き算」するまでもなく最初から凸凹な人間たちが組み合わさって、結果「なんとなくオーライ」となるぐらいのユルい関係の方が、実は長続きするのかもしれないよね。


(2021. 6.15)


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