恋する私は狂ってる

皆で新しいアイデアを出し合う、いわゆる「ブレインストーミング」でいちばん大事なのは、「アイデアを出す段階では、誰かが出したアイデアを決して否定せず、ひたすら出し続ける」ことだ。

これがわからず、誰かのアイディアに「でもそれ現実には無理じゃん」とか茶々を入れる人が１人でもいると、発言が出にくくなる。

アイディアを出し合う段階では「いいね！」「面白い！」「他にもない？似たようなものでも何でもいいから！」などと盛り上げて、各自の脳内にくすぶるアイディアの種を、無理やり引きずり出すべきだ。

自分１人でアイデアを考える「１人ブレスト」の場合も、基本は同じ。何かを思いつく脳と、それにツッコむ脳はちがうので、この２つの作業段階は明確に分けたほうがいい。

作曲も同じだ。ふとメロディを思いついた時、途中で「こんなの平凡かな」とか「ちょっと無理やりっぽいかな」とか、自分にツッコミを入れたり批評したりは一切しないほうがいい。

そのメロディの「流れ」がどこかに着地して完結するまでは、とにかく止めずに考え続け、譜面に書くなりパソコンに打ち込むなり鼻歌を録音するなりして、いったん形に残してしまうのだ。

まあ作曲に限らず、「俺って最高！」「天才か！」と、一時的にでもテンションが上がって自分に酔える「おめでたい」ぐらいの人が、創作や表現に向いているとは言えるかもしれない。

もちろん、そうやって「勢い」で素案を作るにしても、次の段階では人が変わったように落ち着いて客観的に自己採点しなければならないのだが。

ロラン・バルトの言葉を借りれば、

「恋する私は狂ってる。そう言える私は狂ってない」

そんな状態を保ち続けることだ。「情熱と冷静のあいだ」を行ったり来たりし続けることだ。もし何か新しいものを作り出したいのならば。

(2019.1.8)