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【毎週ショートショートnote】草食系男子に教えられたこと

私にはお気に入りのBarがある。

「おかえりなさい」
草食系男子のバーテンが、柔らかな表情でほほえむ。

『おまかせで』

野菜棚に向き合うと、彼は慣れた手つきで野菜を選び、素早くカットした。

よく冷えたシェーカーにそれらを入れ、野菜棚の隣の扉を開く。
たくさんの瓶に色とりどりの液体。ドレッシングルームだ。
迷いなく選ぶと、彼は小気味よくシェーカーを振る。 

カクテルグラスにバースプーンを使って、丁寧に盛りつける。

「コールスローです」

『いただきます』

シャキシャキ感の残った野菜の甘さを、酸味のあるドレッシングが包み込む。

このBarを初めて訪れた夜、私は彼にこう教えられた。

「お疲れですね。メインの仕事も大切ですが、箸休めも必要です。前菜もよく味わって下さいね」

あの日、食べたお新香は泣けるほどに染みた。

『じゃあ、また』

「いってらっしゃい」 

このサラダBarを、私は度々おかわりしている。

(400字)

今週の新しいお題が発表された後ですが、書きかけだったので、遅れはしましたが形にした作品をアップさせていただきました。いつもありがとうございます!

昨年の8月から毎週ショートショートnoteには、参加するようになりまして(初めて参加したお題は『初めての鬼』でした)、

と同時にそれから、毎週ショートショートnoteに投稿された作品をほとんど読んできたのですが、先週のお題でついに「読む」ことが途切れてしまいました…。

「読む」ことから感じ学び、自分の中でアイデアを精査し繋げて「書く」を大切に、取り組んできた毎週ショートショートnote。

「読む」ことは一時的に途切れてしまいましたが、せめて「書く」ことだけでも参加したいなと。

どうか楽しんで読んでいただけますように!

さて、ここでご報告になりますが、
この度、第19回坊っちゃん文学賞の大賞に選出していただきました。

ショートショートを書くようになってから、ずっと目標にしてきた賞だったので、名前を呼ばれた瞬間は、「やったぜ!」とか思うのかなぁ?とぼんやりと思っていましたが、実際はたくさんの人の顔や感謝の気持ちが溢れてきました。
これは自分でも驚きました。

作品を書いたのは自分ですが、決してひとりでここまできたのではなく、たくさんの人との出会いや別れや支えや繋がりがあって、ここに立っているんだなぁと、とてもとても強く実感しました。

毎週ショートショートnoteで繋がってきた皆さんからも日々、作品やコメントを通してたくさんの熱や力をもらっていました。
本当にいつもありがとうございます!

大賞受賞作の『ジャイアントキリン群』は、3月6日発売のダ・ヴィンチ4月号にも掲載されることになりました。

こちらの作品もどうか楽しんで読んでいただけますように。

少し間隔の空いたご報告となってしまいましたが、今後ともよろしくお願いいたします!

そるとばたあ

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