街角のサンタクロース-34丁目の奇蹟-

クリスマス映画と言えば、真っ先に思い浮かぶのが、「34丁目の奇蹟」。

1940年代のクラシックな映画だけれど、なんら古めかしい気がしない。
良質な脚本、細やかなディティール。

「サンタクロースは本当にいるのか」を裁判で大真面目に争うという設定は、リアリティとファンタジーがいい具合に入り混じっていて楽しい。
仰々しい表現はなく、リアルで固めている分だけ、なにげない不思議が「もしかして」というイマジネーションを誘う。

サンタクロースがいないということは、ずいぶん小さな頃から知っていた。
というよりは、幼い頃、サンタクロースがいるということを信じたことがない。
親が極端なほど現実主義者で、シャレた演出も、心遣いも、なんにもしてくれなかったからだ。

でもむしろ、今の私はサンタクロースを信じている。
赤い服に白いひげのおじいさんの姿でなくても、ハッピーを運ぶサンタはいる。

不思議なことに、世の中のしくみを知れば知るほど、目に見えないものの存在を抽象化したかたちでとらえることができる。
信じるには、信じるだけの、理屈がちゃんとあるものだ。
この映画の中でさえ、サンタクロースの存在を証明するのは、信じる心そのものであったりもする。

サンタの存在と、それを信じる心、どちらが先でもかまわない。
今なら、両親の力を借りなくったって、ちゃんと見えないものを見ることができる。

まるでユーミンの歌のように、サンタはあるときは恋人、あるときは友達、あるときはふとすれ違う見知らぬ人であったりもする。

毎日一つ以上のハッピーを見つける。
今日も見つけた。
街角に。オフィスに。暖かい毛布の中に。

それで毎日がクリスマスになるほど物事は単純ではないけれど、その幸福に名前をつけるとするなら、一つ一つを奇蹟と呼ぼう。

34丁目の奇蹟 Miracle on 34th Street(1947年・米)
監督:ジョージ・シートン
出演: エドマンド・グウェン、モーリン・オハラ、ジョン・ペイン他

■2004/12/9投稿の記事
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