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犬を大好きにしてくれたかけがえのない子

幼稚園のころ、近所の大きな白い犬に吠えられて怖い思いをした。

それなのに今は大きい犬も小さい犬も大好き。
(もちろん、いま一緒に暮らしている猫も大好き)

犬が大好きになったのは、小学校1年生から大学生まで一緒にいてくれた
シベリアンハスキーの「ベル」のおかげだろう。

随分昔にお別れしたけど、未だに思い出す。

出会い

ある冬の日、学校帰りに迎えに来てくれた父がやけに嬉しそうだった。
父のジャンバーの中にはもこもこ動く物体があった。
それが「ベル」との出会い。

とても小さくて、ぬいぐるみみたい。シベリアンハスキーの男の子だった。ぬいぐるみだったのに、犬の成長は早い。あっという間に大きくなった。

ベルとの日々

力が強く、甘噛みも痛くて小さい私はベルによく泣かされた。
でも、一緒にいるのが大好きだった。
力が強くて散歩はいつも父か母。私はついていくだけ。
いつかベルを連れて二人で散歩したい、という夢ができた。

父は犬ぞりを買って来て冬になると私や妹を乗せた。
散歩と違い綱で引かれないので、ベルは生き生きと思い切り走った。
乗せられる私たちは当然振り落とされ、怖くて正直いやだった。
もし犬ぞりが好きになってたら、私の人生は違ったのかもしれない。

大ケガ事件

ある日、学校から帰ったらベルがいなかった。
散歩中に道に落ちていたガラスで足をケガしたらしい。
しばらくして、後ろ足を包帯テープでぐるぐる巻かれて帰ってきた。

ベルにとって初めての全身麻酔・初めての手術。怖かっただろう。
実家には包帯テープをしたベル、妹、私が写った写真が残ってる。

失踪事件

ベルとはよく遠出をした。特に祖父母の家にはよく遊びに行っていた。
そんな祖父母の家に遊びに行っていた時に事件は起きた。

外で繋いでいた紐が取れて、行方不明になってしまったのだ。
私は泣いた。きっと両親ももう無理だろう…と諦めていたに違いない。
でも、その日の夜に警察からベルが見つかったと連絡があった。
保護してくれたのはお姉さん二人。
とぼとぼ歩いてたベルに車から声をかけたらさっと乗り込んだという。
女の子好きだったことが功を奏して、ベルは我が家に帰ってきた。

この事件は幼い私にはかなり衝撃的だった。
大好きな存在が突然いなくなることは初めて。
不安になってベルを見に行ったり、夜眠れなかったことを覚えている。

別れ


月日が経つごとにベルは落ち着いてきて、私でも散歩できるようになった。
幼い頃にできなかった散歩ができるようになり私はうれしかった。

いつも走り回っていたのに、寝ていることも多くなった。
後ろ足が少しずつ弱っていくのが気になるようになった。
少しだけよろけるようになってきた。
そこから、早かった。

実家を出ていた私は、たまにしかベルと会わなくなっていた。
会うたびに弱っていく姿を見るのが辛かった。
歩けなくなってもトイレは外でしかしないので、両親は外まで抱っこして連れ出していた。
「あのときは大変だったわぁ」と母は今もたまに言う。

その日、私は冬休みで実家に帰省していた。
夜になって、別の部屋にいたベルが鳴いていることに気づいた。
普段は夜に鳴くことはないからなんとなく気になった。

リビングに連れてきて家族と一緒に団らんすることになったベル。
少し安心した顔をして、大好物のりんごを一緒に食べた。
ほとんど目も見えないのに、りんごのにおいには反応して笑った。

りんごを食べて、ぽかぽかのリビングで少し安心した顔をしたベル。
ふかふかのお腹でふーふー大きな息を数回して、すーっと息がなくなった。

その瞬間を見ていたのは、私だけだった。
ベルは、最後のときを家族みんなで過ごすために呼んでくれたのかな。
一緒に過ごせて幸せだったかな。

最後の時を一緒に過ごすために私たちを呼んでくれたこと、
私の帰省の時まで頑張っていてくれたこと、
命が消えることを教えてくれたこと、
たくさんの思い出を残してくれたこと。
ベルは最高だったよ。

かけがえのない家族

ベルは、わたしたちにとってかけがえのない家族だ。
たまに街でシベリアンハスキーを見かけると思い出す。
いつかまた私のもとにやってきてほしい。

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