パナソニックの社内起業家が、シリコンバレーで学んだこと | 経産省・JETRO「始動 Next Innovator」プログラムを終えて
私は、経済産業省とJETROが主催するイノベーター養成プログラム「始動 Next Innovator」6期生(2020年度生)として参加し、選抜を経てシリコンバレーでの研修に派遣されました。
同期やアルムナイへの最終報告会も終わり、改めて始動での経験をまとめてみたいと思います。始動に興味のある方や、企業内でモヤモヤしている人の力になればと思います。
グローバルに通用するイノベーターを育てる国家プロジェクト「始動」
「始動 Next Innovator」プログラムは、安倍元首相が発表した「シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト」の一環として、次世代のグローバルなイノベーターを養成するために毎年開催されています。
日本全国から集まる、多数の応募の中から選抜された起業家や大企業の新規事業担当者など100名が国内プログラムで約3ヶ月間講義やメンタリングを受け、事業アイデアを磨きます。そして、最終ピッチで選ばれた20名がシリコンバレーへ約一週間派遣されます。
※2022年度も募集始まりました!
2020年度「始動」と私
現在私はパナソニックで新規事業開発に取り組んでいます。(そうした背景もあり、想いや活動を発信する若手社員Panasonic Young Leaderとしても活動中です)
私の場合、元々新規事業担当だったわけではなく、応募当初は海外マーケティング部門で、新規事業とは関わりのない業務を担当していました。
昔から0→1で何かを作ることが好きで、高校の時に小さなビジネスプランコンテストで優勝したことをきっかけに、新規事業に興味を持つようになりました。
それからアイデアソンやビジネスアイデアコンテストなどに何度か参加していたのですが、どれもアイデア止まりで実現したことがないことにモヤモヤしていました。
始動では「Thinker to Doer(考えるだけの人から直ちに行動・実践する人へ)」をテーマに、あらゆる分野のイノベーターの卵を広く受け入れています。
私自身、学生時代や仕事の中で起業の経験や勉強をしてきたわけではないので、よくある起業家対象のアクセラプログラムにはなかなか応募できなかったのですが、必要な知見や人脈を得るためにまずはこのチャンスに対し行動してみよう、という気持ちで始動に応募しました。
自分が解決したいと思っていた課題をテーマに未熟な事業計画書をなんとか作り、自己アピール動画を何テイクもしながら制作し、なんとか応募した結果、6期生として受け入れてもらうことができました。
6期の始動は、コロナにより初のフルオンラインプログラムでの開催。zoomやRemoを活用し、一度も対面で会わないまま、でもそれを感じさせないぐらいに熱い交流をしながら、プログラムを全力で受けていきました。
仕事とも両立しないといけない中、寝る間もないぐらい必死で食らいつき、毎晩のようにヒアリングや資料作成を行い、なんとか12月の最終ピッチでは100人の中でシリコンバレー選抜者として選んでいただくことができ、名前を呼ばれた瞬間本当に嬉しかったのを覚えています。
こうした経験の後、社内の新規事業プログラムに自身の事業案を応募し、晴れて正式に業務としてその事業案に取り組むことができ、今に至っています。(1年ほどはワークシェアの形で本業と掛け持ちで新規事業に取り組み、22年7月に、海外マーケ部門から新規事業部門へ正式に異動しました)
始動のシリコンバレー派遣に選抜いただいたものの、コロナの影響で何度も延期され、本当に行けるのか不安の中でしたが、経産省やJETROの方々のご尽力により中止されることなく、プログラム終了1年半後となる2022年7月にようやく渡航が叶いました。
現地では、シリコンバレーの第一線で活躍される起業家・事業家の方々の講演、メンタリング、現地企業やスタンフォード大学への訪問を行い、事業をブラッシュアップすることはもちろん、イノベーターとしてのマインドを磨くためのプログラムへ日々参加します。
シリコンバレー派遣については、日経新聞にも取り上げられています。
また今後5年で、10倍の1,000人シリコンバレーに派遣するとのニュースも出ていましたね。
学生時代にサンフランシスコに1年間留学していたため、シリコンバレーという地自体は過去に訪れたことがあるのですが、社会人になり新規事業に取り組む者としての目線で改めて現地で過ごしてみて、学ぶことが多くありました。
想いを持ち挑戦し続けることが価値を持つ、シリコンバレーの精神
シリコンバレーで現地の起業家・事業家・VCなどの方々と話していてひしひしと感じたのが、想いを持って挑戦を続ける人こそが求められているのだということです。
スキルよりも、意志によってイノベーションが起こり、事業の成功に繋がり、社会が変えられる。
いかに学びある失敗をたくさんするか
8割、9割のスタートアップは失敗して当たり前という状況で、求められるのは安全着実に進んでいくことではなく、いかに学びある正しい失敗を早く多くするかということ。
リーンスタートアップの世界ではよく言われていることですが、頭の中ではどこか「失敗=してはいけないもの」のマインドが抜けきっていなかった部分があったと思います。
日本で教育を受け、小中高大と進学し、いわゆる大企業に勤めている自分は、いつの間にか無意識に「失敗してはいけない」「減点主義」といったマインドに陥ってしまっていたことに気づきました。
失敗しないことこそが褒められる。だから確実に自分ができることにしか挑戦しないし、失敗をしたら恥ずかしくてすぐに隠して忘れようとする。長年刷り込まれてきたこのマインドが、イノベーションを阻んでいたのかもしれません。
そんなマインドだった自分が、シリコンバレーで「失敗が求められる」環境に投げ込まれたことは、自分の中への失敗への恐怖を払拭する転機になりました。
失敗をどんどんすべきだという話は、WiL伊佐山さんの講演の中でも強いメッセージとして掲げられていたことで、今でも印象深いです。
切磋琢磨し、支え合う人々とのつながり
こうしたことを本や記事で読んで「そうなんだ」と思うこと以上に、今回シリコンバレーに派遣されて人々と接し、まさに「体感」した意義は大きいと思います。
もちろん日本に戻って減点主義、完璧主義の世界に身を置いてしまえば失敗は許されないというマインドが蘇ってくる可能性はあります。でも、こうしたシリコンバレーのようなマインドを持った人々は、始動コミュニティに集結しています。
失敗が怖いと思ってしまったとき、始動のコミュニティやネットワークを通して、いつでも私はこうした環境にアクセスすることができます。こうした人々とのつながりがより強固になったことも、自分にとってはかけがえのない財産です。
始動には良きライバルであり、良きサポーターである素晴らしい同期生がたくさんいます。ライバルといえど、本当に「切磋琢磨し合う仲間」という表現がぴったりで、蹴落としあうとか、妬ましく思うとか、そういうライバルにはならない貴重な環境だと思います。
(ピッチ審査等でも、自分ではない他の参加者が上位に選ばれると、もちろん悔しさはありつつも同時に自分のことのように嬉しくなってしまうぐらいです!)
立ち止まったときも、悩んだときも、「否定・批判・批評」せずにそっと寄り添い支えてくれる。突き進む勇気が欲しい時には、思いっきりエールを送ってくれる。Give and TakeではなくとことんGiveの精神に溢れたこのコミュニティの一員になれたことは、一生の財産だと思います。
次は自分がGiveし続ける番
学びや得られたことを書き綴ってきましたが、私が始動に参加する前からずっと、始動アルムナイ、そして始動プログラム自体からもこうしたものをGiveしてもらってばかりだったと思います。
Pay it Forwardという言葉がありますが、始動コミュニティはまさにその言葉を体現している場。次は私が、始動で得たことを仲間や社会に対してgiveしていく番です。
というわけで…現在募集中の始動8期の応援や、何となく大企業内でモヤモヤしている人の背中を押すことなど、私にできることがあればgiveさせてください!
私自身も、始動での学びを胸に、失敗を恐れず意志を持って、Doしていきます。
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