現職地方女性議員の「選挙と妊娠」 #2<前半>
こんにちは!
台東区議会議員の本目(ほんめ)さよです。「届きづらい女性の声を政治につなぎ、一つずつ実現していく」ことをミッションとした団体・WOMAN SHIFTの代表も務めております。
「選挙と妊娠」について、選挙3ヶ月前に第二子を出産した経験をリアルタイムで記録に残している本企画。
(#1の記事はこちら)
#2以降は選挙2か月前に双子をご出産された北区議会議員のうすい愛子さんにも、ご自身の経験を現在進行形で語っていただきます。
今回は2022年10月、本目が妊娠8ヶ月、うすいさんが妊娠5ヶ月の頃の記録の前半をお届けします。
前半では主にうすいさんに妊活と議員生活、選挙活動の両立についてと北区の現状についてなどを伺いました。
■2022年10月の記録の前半(本目 妊娠8ヶ月、うすいさん 妊娠5ヶ月)
―(インターン)まず、お二人の簡単な自己紹介からお願いします。
(うすい)うすい愛子と申します。2019年の統一地方選挙で北区から出馬して、立憲民主党で初当選し、今4年目の1期目です。よろしくお願いします。いま妊娠5ヶ月でもうすぐ6ヶ月です。双子を妊娠しています。
(本目)台東区議会議員の本目さよです。台東区議会議員としては12年目に入りました。第一子を前回の選挙の9ヶ月前に産んでいて、生後9ヶ月で選挙となりました。今は第二子を妊娠しており、妊娠8ヶ月です。1月が予定日です。
―うすいさんは今1期目ということなのですが、1期目で出産自体も初めて?
(うすい)はい、初めてです。
―北区には、先輩ママ議員はいらっしゃいますか。
(うすい)北区は女性議員の数が3割弱くらいで、出産経験者の方はいらっしゃいます。議員在職中に出産している方もお1人いらっしゃるので相談しやすかったです。
―会派が違っていても、経験された先輩として意見をお伺いできるような状況だったのでしょうか。
(うすい)そうですね。日頃から女性議員として横のつながりもできていたので、事前に妊娠報告をして、どういう風にやったらいいですかという相談をしていました。
―続いて選挙戦についていくつか質問をさせてください。前回本目さんには伺ったのですが、うすいさんは選挙を控える中での妊娠・出産について、どういったスケジュールを描いていらっしゃったのでしょうか。
(うすい)私の場合「子どもが欲しい」ということはさよさん含め女性先輩議員に以前からご相談させていただいており、自分としては2期目に挑戦してその後にできればと考えていました。
ただ私の場合は法律婚をしていない、できない状態で、第三者の精子提供を受けている形なので、「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」が2020年にできたということがあり、「想定より時期を早めないと、今後私は子どもを持てないかもしれない」と思って、今の時期に踏み込みました。
―なるほど。もともと人生のプランとして2期目にと考えていたものが、法の改正によって若干早めざるを得なかったという状況だったんですね。
民間企業の方でも「なんでこの時期に...」といったいわゆる「マタハラ」を受けてしまう方もいらっしゃると思うんですが、そういうネガティブな声は耳に届きましたか。
(本目)まだ私は直接会う人以外には公表をしていないこともあり、ちゃんと顔が見れる関係の人はそんなことは言わないですね。ただ、リアルで知らない人からはそういったお声も上がるかもと思って、インターネット等ではなかなか公開ができていないです。
―うすいさんは公表についてはどうされていますか?
(うすい)私は法律婚ができず、未婚で産む形になるので、選択的シングルマザーに対してどういう反応が来るのかと色々悩んでいるところではあります。
議会や事務局、会派の方には個別で報告はしているんですが、全体にオープンにはしていなくて。
それでも9月くらいまではゆったりとした服を着たらお腹が目立たなかったのですが、10月に入ってからは双子ということもあり目立つようになって。リアルでお会いした方にはわかるのではと思います。
―なるほど。公表されていないということなのでなかなかないとは思いますが、マタニティハラスメントがもしあったときに、労働者だと相談できる機関もあると思いますが、議員さんにはそのような窓口はあるんでしょうか。
(うすい)率直に言って、ないですよね。
(本目)ないと思います。
(うすい)まだできていなくて、求めていたりはするんですけど。
国からハラスメント相談窓口の設置の通達は出たけれども、行政としてもどうしたらいいのかわからないというのが現状のようです。
―つまり、今一緒に働いている議員の方のモラルに頼るしかないのでしょうか?
(うすい)そうだと思います。
―こちらも前回本目さんには質問したのですが、議員さんの産前産後の休暇についての質問です。
前回お伺いした時にいわゆる一般企業に勤めている労働者と違い、議員には産休・育休の制度は適用されないということでしたが、全国市議会議長会の標準会議規則で産前6週間、産後6週間の休暇は認められると伺いました。これは北区でも同じですか?
(うすい)はい。標準議会会議規則に産前産後、介護休暇が明記されたので北区議会もそれに則って事前に議会に申請すれば産前産後休暇が認められるようになりました。
―公職についているついていないに関わらず、今の若い方は結婚や子どもを持つこと自体が選択肢にないという方も昔よりは多い印象です。
まず一人目がいらっしゃる本目さんにご質問で、子どもを産もうと思ったきっかけを教えていただけますか?
(本目)もともと私の政策の軸が「子育て、本命」ということで、子育て支援を初当選の29歳の時からずっと謳ってきたというのがあります。
その背景として「性別に関わらずやりたいことができる社会を作りたい」という思いが学生の頃からあったんですね。なぜかというと、学生時代の卒論で「あなたは女性に生まれてよかったですか?男性に生まれてよかったですか?」というのを周りの学生に聞きまくっていたんです。そしたら、男性はほぼ100%が「男性に生まれてよかった」と回答するんですけど、女性は半分くらいしか「女性に生まれてよかった」と答えてくれなくて。
「なんで?」と聞くと、「生理がある」「出産するときに痛い」「出産したら仕事をやめなくちゃいけない」といった、女性の身体特有のことや出産と仕事といった壁がすごく大きいなと感じたんです。
その後大学院でも出産後の育児ストレスについて研究をしていたので、学生時代から「出産」は私の中ですごく大きなことで。私自身もそれまで「女性に生まれてよかった」とあんまり思えていなかったので、「産んだら変わるのかしら?」という気持ちもあり、子どもを持つことにすごく関心がありました。
―うすいさんは法律婚がない状態での出産予定という話を先ほどお伺いしたんですが、それでもお子さんが欲しいと思ったきっかけがあれば教えて欲しいです。
(うすい)きっかけは特にないのですが、まず幼い頃から自分のパートナーや家庭を思い描く前に「子どもが欲しい」という気持ちがあったんです。
成長するにつれて、海外ドラマ等を見ていると海外では普通に同性パートナー同士や選択的シングルマザーでも子どもを持てる社会になっていて、日本でもそうしていけばいいんじゃないかという思うようになり、大学生の頃からLGBTQのコミュニティなどで子育てに関する話を聞いていました。そういう中で、私も子どもを持ちたいなとよりクリアに思うようになりました。
―法律に疎くて申し訳ないのですが、配偶者の出産補助で産休が取れるという規則があったかと思うんですが、同性のパートナーがいる場合、例えば事実婚のようなパートナーシップ制度でも産休を取れたりはするんですか?
(うすい)パートナーシップ制度はそもそも法的な効力は何もなく、たとえパートナーシップ制度を利用してその自治体からパートナーであると認められていても、異性の事実婚のカップルより社会的に受けられる制度は少ないんです。
北区ではパートナーシップ制度が始まっていますが、同居要件(北区内で一緒に住んでいなければいけない)があります。つまりパートナーが仕事の関係などで別々に暮らしている方は使えません。都の方ではようやく11/1からパートナーシップ制度がはじまりますが、これは片方が都に住んでいたらいいという在住条件なので、こちらであればクリアできるかなと思うんですけども、それでも相手の仕事の状況によると思います。
会社でパートナーシップ制度を事実婚の状態で使えるかということについては、「会社では使えない」という人の話をよく聞きますし、カミングアウトをしていない方はそれが自分のカミングアウトに繋がってしまいます。子どもがいる方はそれで悩まれていて、法律婚の方と同じように子育てに参画したいと考えていてもできない状況はありますね。
―一般企業でも男性育休という制度があっても、本人の昇進や人生設計に関わってしまうので使えないとか、取れたとしても2〜3日で育休とは言えないという声はよく聞かれますが、同性同士ですとさらにハードルがあるということなんですね。
また多胎で産まれる方の補助というのは北区や東京都にはあるんですか?
(うすい)最近多胎支援でようやく利用拡充がされましたが、まだまだ満足いくような内容ではなく。また東京都で行われている事業でもまだ北区では利用できないものもあり...台東区はどうですか?
(本目)多胎児の政策提案をし始めてから、以前に比べたら充実しつつあるとは思います。ただ、まだ足りてはないと思うんですが。
台東区の場合はタクシー代の補助や家事育児支援などは始まっていますね。あとは、一時預かりのベビーシッター事業が東京都の補助事業で、多胎児だと一人当たり年間288時間立替払いですけども。北区でも始まっているんじゃないかなとは思うのですが...
さらに多胎児だと家事育児支援も加算されるはずですね。基本的には1家庭あたり産前4時間産後12時間の補助となりますが、多胎児はこれに120時間加算といった形になっているはずです。
―台東区では2子ちゃん、3子ちゃん集まれというサークルがありますが、北区はそのような同じ悩みを共有できるようなものはありますか?
(うすい)あります。ツインタイムズという、これもさよさんにご紹介いただいたものなんですが。
―まもなく妊娠6ヶ月で、選挙のある2023年4月にはもう生まれているということになるかと思いますが、現時点でうすいさんは選挙の準備はどうされていますか?
(うすい)思うようには進んでいないのですよね。まず選挙で使う写真を夏までには撮っていたかったんですけど、妊娠の状況を私はあまりにも甘くみていたようで…つわりがかなり酷かったので、撮影できる状況ではなく…前回の写真を使おうかなと考えています。ただデザインは前回と変えようとは思っています。
あとは2連ポスターといって、選挙前に街中に貼れるポスターがあるんですけど、それも余っているものがあるので、作り直しはせずに4年前から変化しているところだけ、例えば前回は区議会議員ではなく党の北区政策委員としてポスターを作っていたのでそういう箇所だけ変えるようと考えています。そういった省エネな形で、時間やお金の使い所を取捨選択していこうと考えています。
―これからどんどんお腹も大きくなってくるので、リアルの会合でのご挨拶などもなかなか難しくなってくるとは思いますが、そちらの方も自分の体調と相談しながらできるところまで進める感じでしょうか。
(うすい)そうですね。これまでもずっとつわりがひどくて出席できなかった会合も多く...コロナ禍で今までよりはオンラインの会合も多かったのですが、体調が悪くてオンラインでも参加できないことも多かったです。
出産は里帰りを予定しているので、議会も産前休暇の14週より少し早めに休むことになってしまいました。病院からも「無理をするな」と結構きつく言われているので、直接出席することを諦めているというのが正直なところです。
―今回はお二人とも出産直後に選挙ということで、うすいさんは1期、本目さんは3期のご経験があるので、選挙戦のスケジューリングは未経験のときよりもしやすいという感触はありますか?
(うすい)そうですね。やはり1回経験しているので、流れをわかっているのはよかったかなと。全く知らないで臨むよりは、スケジューリングの感覚はなんとなくつかめていますね。
■次回予告
以上が今月の記録の前半となります。
後半では、議員として妊娠したからこそ気づいた点や政策への活かし方について話し合った様子をお届けします。
聞き手:小林美保(本目さよ事務所インターン)
編集:平理沙子(WOMAN SHIFTプロボノメンバー)
<後半はこちら>
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?