見出し画像

現職地方女性議員の「選挙と妊娠」 #2<後半>

こんにちは!
台東区議会議員の本目(ほんめ)さよです。「届きづらい女性の声を政治につなぎ、一つずつ実現していく」ことをミッションとした団体・WOMAN SHIFTの代表も務めております。

「選挙と妊娠」について、選挙3ヶ月前に第二子を出産した私と選挙2ヶ月前に双子を出産したうすいさんの経験をリアルタイムで記録に残している本企画。

今回は2022年10月、本目が妊娠8ヶ月、うすいさんが妊娠5ヶ月の頃の記録の後半をお届けします。

<前半はこちら>

現職議員として妊娠したからこそ気づいた点や、政策への活かし方について話し合いました!


■2022年10月の記録の後半(本目 妊娠8ヶ月、うすいさん 妊娠5ヶ月)

―(インターン)うすいさんが実際に妊娠をされて実感した、区の不備や逆にこれはいいなという点はありますか。

(うすい)まず私が話を聞く中では、全国的に同性カップルが役所で母子手帳をもらう時にハードルを感じている、という点がありました。同性カップルは父親の欄に記入ができないので、役所の方から「これはどうしてですか?」と質問され、答えに窮するといった声です。せっかく子どもを授かったのに「おめでとう」以外の言葉をかけられるという辛い経験をされている方が多い状況が浮かび上がったんですね。

そういう中で私自身、「北区はどうだろう?」とドキドキしながら役所に行ったんですけど、「父親の欄、書かなくても大丈夫ですよ。色々なご家庭の事情があると思いますから」と言っていただけて。「あぁ、よかった」と感動しました。これは実際に妊娠してわかった北区の良い点です。

一方で議員としての仕事に関しては、北区議会はオンライン化が進んでいない部分が多く、「これがオンラインならば私は参加できるのに」と思うことがよくあって、悔しい思いはしています。

―本目さんは第一子で出産も実際に経験されていらっしゃいますが、出産前と後でギャップを感じたことはありますか。

(本目)小さいことではあるんですが、授乳室が充実してない施設に改めて気づくことがありました。子どもができてからは「ここには授乳室があるな」と素通りするだけでなく、実際に中を覗いてみることが習慣になって。

やはり、実際に覗いてみると使いづらいつくりになってることが気づくことも多くあります。例えばとあるスポーツセンターの授乳室は、ベビーベッドがおいてあるのに板張りだったり、荷物を置く場所がなかったり。

―たしかに。私も行ったことがありますが、授乳室って名前のついたただの小部屋みたいな。

(本目)そうなんです。他にもベビーカーで入りづらいトイレがあったりとか。気付き次第逐一担当の施設課長にも報告して、今後区の施設作る時にはこういうところに気をつけようとワークショップをやったり、他の人を意見聞いたりしています。

こういった感じで、細かいところは産んでから気がついたことが多いです。やはり、授乳をしている/搾乳をしている当事者だからこそ、切実にエネルギーをかけて取り組めることもあります。

―今はお二人とも公に妊娠を発表してないとのことですが、産まれたらご自信から発信されることはありますか。

(本目)そうですね、私は少なくとも産後復帰する時には発信しようと考えています。
いずれにせよプロフィールは「2児の母」に変えなければいけないので。

「今回の選挙は産後日が経っていないので、そんなに活動ができません。しかし、産後だからこそ伝えられる生の声というのがあるんです」という点をお伝えしていきたいと思っているところです。

―うすいさんはどうですか。

(うすい)私は公表をすごく悩んでいる部分はあるんですが...

さすがに選挙直前なのに、駅に立っていないと「最近見かけないな、今回は出ないのかな」と思われそうな感じがするので。4年前の初めての選挙の時はよく駅に立ってたんですよ。だから早めにお伝えできる方達にはお伝えし、公表できそうなタイミングがあれば早めに言おうかなとは思っています。

―さよさんはあまり街頭演説はしない方針と以前から公言されていましたよね。

(本目)以前は週一回とかで立っていたんですけども、子どもが産まれてから朝駅頭するのはすごくキツくなってしまったので、今は諦めました。

できることとできないことを取捨選択しようという方針で、代わりにインターネットでの発信や声の配信を始めています。だから今回の選挙でも、インスタライブを愛ちゃんとしようねという話もしてたりします。選挙直前に出産した経験をどう政策に活かそう、といった点なども配信でお伝えできればと思っています。

―いわゆる在職中に出産したロールモデルの方は、台東区にも北区にもいらっしゃるのでしょうか?

(本目)北区は共産党さんが産んでる?

(うすい)そうです。共産党さんが産んでるんですが、選挙のやり方が少し違うところもあって。基本的に選挙は個人プレーというか個人事業主的な感覚が強いので、同じ党とはいえなかなか協力が難しいところもあります。ただ共産党さんは組織がすごくしっかりしていて、他の人が選挙カーを回していたということもあるくらいだったらしいので、それはすごいなと思いつつ参考にするのは難しいかな...という感じもあります。一方で仕事の進め方などは参考になる点も多いです。

(本目)台東区は私が初めてなんですよ、出産。なので、区としてはいないです。ただ以前もお話した「出産議員ネットワーク」とか、区を超えた横のつながりでお話を聞いたりというのはありますね。

―なるほど。例えば今後お二人が在職中に出産を経験した先輩として、後輩に出産について相談をされたらいかがですか。正直なところ、議員としての妊娠出産はまだハードルが高いと思われますか。

(うすい)少しずつではありますがハードルは下がってきていると思います。女性議員や子育て中の議員が増える事によって、周りの意識も変わってきているように思います。実際私自身の今回の妊娠についても、議会で嫌な反応を露骨にしてくる方は幸いにもいないです。

今後は私自身も、後進の方の選択肢を狭めたりしないように動いていきたいなと思っています。なのでもしそういった相談を受けたら、ぜひ応援したいです。私も現時点ではまだ産んでいないので大変なことをわかりきってはいないですが、「チャレンジできるよ」という伝え方ができるように活動していきたいです。

―本目さんはいかがでしょう。

(本目)議員としての出産はそこまで大変ではないと思います。何が大変かというと選挙が絡む時、選挙前や選挙中はきつい部分もあるかとは思います。ただ「議員の仕事と出産の両立」といった事例は各地でだいぶ増えてきているので、そこは繋がって共有し合えればと。

そういう意味では私たちが今回事例になれるように、なるべく私は無理のない省エネの選挙活動をして、できれば当選もして、この話を公開できたらいいなと思っています。

―ありがとうございます。
今回の趣旨とは少し違ってしまうんですが、女性議員の方から「2期目のハードルが高い」というお話をよく聞くのですが、うすいさんが2期目も続けようと思ったきっかけや、仕事でのやりがいについて伺いたいです。

(うすい)私も実際2年目くらいまでは本当につらくて、さよさんにもよくご相談をさせて頂いていたんですが...3年目に、私がずっと政策の柱としていた「パートナーシップ制度」がようやく実現目処が立ち、本当に議員をやっていてよかったと実感したんです。そこから、それをちゃんと整備したいという気持ちもどんどん強くなりました。

さらに色々なLGBTQのコミュニティに関わる中で、子育てや介護などライフステージによって絡んでくる様々な問題があるのにどうしても行政にアクセスできなかったり、しづらい部分があるというのを実感しました。これを課題として取り上げている議員が少ないので「私がやっていかなきゃ」という気持ちを強く持ったということも大きいです。

―妊娠出産をしていない人が子育てを語れないということはないと思いますが、今回の妊娠出産を経て、より人々の困り事を救い上げられそうですか?

(うすい)すごく実感してます。やはり見聞きするだけでなく、体験することは違うなと。

例えば私の場合、第三者提供精子による人工授精を受けられる病院がめちゃくちゃ少ないんです。 また、それに加えて多胎妊娠だったこともあり、生殖補助医療を受けた後の妊婦健診を受ける段階で地元の病院で妊婦健診を受けたいだけだったのに多胎妊娠はハイリスクということで、一番つわりがひどくて辛い時期にたらい回しにされたこともあり。

「あ、こんな問題があるんだ」ということも自分で体験することで大変さを実感し、ここを解決したいというポイントがいっぱい出てきました。

―本目さんは二人目のご妊娠ということで、上の子のケアをしながら下の子を面倒を見る必要性などを改めて気づく機会になりそうですか?

(本目)おそらく、そうなると思います。「一人だとどうにかなっても、二人だと詰むよ」という話もよく聞いてはいたので。

私の場合はママインターンがいるので、以前から二人以上の子を持つインターンの声を聞くことで政策の提案自体はできていたのですが、自分が当事者になることでさっき授乳室の件で話した熱量というか、政策に向かうエネルギーは変わってくるのかなとは思います。

一方で「当事者以外は社会課題を語っちゃいけない」とは全く思わなくて。当事者が発信しづらい場合には第三者が動いた方がいい場合もありますよね。当事者が「私が困っているから助けて」というより、第三者が「こんなに困っている人がいるからやろうよ」という方が、動機づけになることもあると思います。

―当事者だとどうしても感情が強く出てしまったり、一方で辛い思いをしなかった人には相手の辛さが理解できない場合もあったりしますよね。

いろいろな立場から語れる政治家が増えれば、分母が増えて多様性も認められやすくなると思います。私自身は何もできませんが、今後もサポートできれば嬉しいです。

■次回予告

以上が本目が妊娠8ヶ月、うすいさんが妊娠5ヶ月の頃の2022年10月の記録の後半となりました。

来月も二人の記録をお届けします。

聞き手:小林美保(本目さよ事務所インターン)
編集:平理沙子(WOMAN SHIFTプロボノメンバー)

▼本企画のバックナンバーはこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?