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01【わたしを生きる】『tuuli ja lokki』店主・布作家 | 黒木 亜矢さん

閑静な住宅街の奥に佇む現代風日本家屋。そこで『トゥーリ ヤ ロッキ(tuuli ja lokki)』という自宅ショップを営む黒木亜矢さん。

インスタグラムがショップの主な発信場所であるトゥーリ ヤ ロッキのアカウントは、今や1万人以上がフォローする人気ショップの一つだ。「そんなに頑張ってないですよ(笑)」と涼しげに話す亜矢さん。そんな彼女の作る服は、体に優しい素材、シンプルで飽きないカタチ、印象的なイラストが絶妙なバランスで施された、全て手作りの一点もの。一度着たらファンになること間違いなしの洋服だ。
そんな彼女に取材をお願いしたところ、笑顔で快諾してくれた。ショップを開くまでの経緯。年中無休の母親業をこなしながら、どうやって質の良い商品を生み出しているのか、お店の流れがひと段落した夕方、雑談形式で伺ってみた。

店名の『トゥーリ ヤ ロッキ(tuuli ja lokki)』はどういう意味なのでしょうか?

フィンランド語で「風とかもめ」という意味です。フィンランドのテキスタイル文化が大好きなんですよね。長い冬を、カラフルな色合いで楽しく過ごそうっていう考え方も好きだし、大胆な構成のテキスタイルが多いのに全然飽きないんです。『トゥーリ(tuuli)』の部分が自身のブランド名ですが、〈風〉を意味する『トゥーリ』という言葉の響きがすごく可愛くて起用しました。あと「かもめ食堂」という映画の空気感がすごく好きで、〈かもめ〉を意味する「ロッキ」と組み合わせた結果、『トゥーリ ヤ ロッキ(tuuli ja lokki)』になりました。

服作りに目覚めたきっかけは何ですか?

私の母が服作りが得意だったんです。母も服を販売したりしてたんですよ。なので、小さい頃は母が作ってくれた服をよく着てましたね。だから、服作りを仕事に選んだのも母の影響がすごく大きいです。自分が着る服をちょこちょこ作りはじめたのは、中学生ぐらいかな。それから服作りを本格的に学ぶために、東京の服飾造形学科で基礎を身につけました。

学生時代から、『トゥーリ(tuuli)』ブランドのような服を作っていらっしゃったんですか?

いえ、その頃はもっとベーシックなものですね。自分の色を出そうとかは考えず、課題をこなすことを考えていました。

『トゥーリ(tuuli)』ブランドの服は、シンプルな中に遊び心があって、それが独自の世界観を生み出しています。このテイストはどのように生み出されたのでしょうか?

イラストに関しては、今はなくなったイベントですが、宮崎の文化ストリートの手仕事展に出展した時からです。自宅ショップをオープンさせる前に、腕試しに手仕事展に出してみようって思ったんです。その時から服に絵を描くことをやりはじめましたね。
シルエットに関しては、基本の型をベースに、少し肩のラインを落とそうとか、袖口にもっとボリュームを出したら可愛いなとか、感覚で整えていきます。それが結果的に『トゥーリ(tuuli)』らしさになってるのかも。
なので私の作る服は型紙が無いんです。頭の中でこんな感じにしたいな〜。と考えて、布を切ってすぐ試しちゃいます。試しながらちょこちょこ修正を加えて理想のかたちにしていく感じですね。

イラストは全て手描きされていますよね?
シルクスクリーンという量産できる手法もある中、手描きを貫いていらっしゃる理由はなんですか?

逆に手描きの方が楽なんです!
布に描ける専用の絵の具を使用しているんですが、絵を描く時は下絵なしで、いきなり本番用の布に描いちゃいます。頭の中にイメージはできているので、一つ一つの工程は感覚でやるのを大事にしているんです。っていうとかっこいいけど、楽したいだけだったりします(笑)

私もワンピースを購入しましたが、とても軽くて肌触りが良い印象を受けました。素材にもこだわっていらっしゃるのでしょうか?

素材にはかなりこだわりがあります。
ガーゼ生地や綿100%の着心地がいいもの。アレルギーがないもの。夏場の服にはタイプライターという生地をよく使用します。文字もかけるほど織りが細かい生地なんですが、通気性もすごくよくて、汗をかいてもすぐに乾くし、洗濯も楽なんです。結局、服って着心地がいいものしか着なくなるので、素材選びは大事にしていますね。

インスタグラムでは一万人以上のフォロワーがいらっしゃいますよね?
問い合わせ数もかなり多いのではないでしょうか?

取り扱いたいというショップの依頼や通販のお願いもかなりあったんですが、全部断っちゃいました。一つ一つ手作りで作っているから数も作れないし、自宅ショップに足を運んで下さる方も沢山いるので、ここに置く商品を第一に考えています。

インスタグラムでアイテムを発信する上で、心がけていることはありますか?

着用した姿を掲載するようにしていますね。洋服のフォルムも伝わりやすいし、スタイリングも提案できます。インスタグラムで風景だけの写真って流し見しちゃいません?でも人が写ってるとみんな見ますよね。なので着用した写真を載せるようにしています。

宮崎で服作りをしていて、感じることがあれば教えてください。

宮崎ではショップが少ないこともあるんでしょうけど、「これでいいや」で服を選んでいる人は多いと感じます。「ユニクロやGUでいいや」という具合。それが悪いとは思わないけど、そういう人が多いかな。

家事・育児と仕事の両立はどうされていますか?

4歳の女の子が一人いますが、あまり〈両立〉や〈やりくり〉を強く意識したことはないですね。子供が保育園に通っている範囲内で、火・木・土はショップをオープンさせ、それ以外は商品の制作日に当てています。でも、「制作日だから絶対に制作をしなきゃ」と追い込んだ考え方はしていません。何事も切羽詰まるとよくないですもんね。

今後、新たにやってみたいことはありますか?

自分の子供の絵を使って服を作ってみたいですね!でも、意気込み過ぎず、その時作りたいなと思った気持ちを大事に制作していきたいなと思っています。

取材を通して感じた亜矢さんの魅力は、自分の『こうしたい』という気持ちに、素直に行動できるところではないでしょうか。誰しも思いはあるけれど、実際に行動できる人はそうはいません。亜矢さんの生き方は、そんな人達の指標になるのではないでしょうか。


< information >
tuuli ja lokki 店主・布作家
黒木 亜矢 ( aya kuroki )

宮崎生まれ。母の影響で服作りに目覚め、東京の服飾造形大学にて本格的に服作りを学ぶ。2015年から『トゥーリ ヤ ロッキ(tuuli ja lokki)』という自宅ショップをオープン。 自らが立ち上げた服飾ブランド『トゥーリ(tuuli)』とともに複数の作家の商品も取り扱う。ご主人と4歳になるお嬢さんの、3人家族(+ 猫3匹)。

住所:〒880-0927 宮崎市源藤町原田384-3
開店日:火・木・土 (変更時はインスタグラムで事前告知)
instagram:@tuuli_ja_lokki


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