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【旅log】寝台特急で行く山陰2泊4日

 今回は久しぶりの旅log。宿泊の為に下車した以外で腰を据えて行くのは初めてな島根・鳥取の山陰地方から山陰本線を走破する北近畿を巡る旅です。タイトルにもあるように、寝台特急サンライズの、しかも最上等級であるA寝台に乗車しての旅路となりました。


◆1日目…初めての寝台特急サンライズ

 旅の初日は初めて乗車する寝台特急のサンライズ出雲号。日本で最後の定期寝台列車であるが、昨今は外国人需要が復活したことや鉄道系YouTuberの台頭等もあり、すっかり人気で争奪戦になっている中、なんと最上等級のA寝台にキャンセルが出たのでゲット。初乗車にしてA寝台という究極の贅沢乗車に。

 サンライズは小さな自動販売機しかないので、しっかりと明日の朝食分までの買い出しを終えてホームへ。21:25分頃に入線後に乗車し、11号車に乗り込んだ時と個室の扉を開けた瞬間は感動もの。A寝台はまさに走るホテルで、シャワーやトイレこそ共同なものの洗面台は個別。デスクもあるので、まさに狭めのホテルぐらいの設備が揃っている。

寝台特急サンライズA寝台の車内


 21:50に東京駅を発車。何と言っても足を伸ばしたり、時には寝転んだりしながら車窓を眺めるのは非日常感のかたまり。夜なので景色は堪能出来ないが、東京〜平塚ぐらいまでは夜景を楽しめる。私はお酒を殆ど飲まないが、夜景を眺めながら嗜むお酒は極上の一時ではないかと思う。
 静岡県に入ってからは浜松までの主要駅に停車しながら深夜の東海道本線を走破する。下りは名古屋・京都・新大阪・大阪と大ターミナルを通過するのもレアな姿。深夜帯の走行なのでお休みになる人も多いと思うが、鉄道ファンならワクワク出来るのではないだろうか。
 季節にもよるが、姫路に停車してからは列車名の如くサンライズを迎える。今回乗車したのは12月1日早朝という、1年の中でもかなり日の出が遅い時期だったので岡山駅付近でようやくのサンライズという感じ。車窓から眺めるサンライズは初日の出にも勝るとも劣らない綺麗さだった。

サンライズから眺めるサンライズ


 岡山駅で高松駅行きのサンライズ瀬戸との切り離し(私は興味なかったので普通に横になっていました…)を終え、倉敷駅から伯備線に入ると朝のローカル線の風景。列車が北上するに連れて天気が悪くなって行くのは、冬の山陰に近づいているのを実感する場面。伯備線を抜けると鳥取の大山が聳え立つが、今日は雨でボヤけていたのが残念。
 そうこうしていると米子駅に停車して、ここからはサンライズもラストスパート。車窓右手には中海、松江駅を過ぎると宍道湖という山陰のシンボル達が車窓に(A寝台からは車窓と反対側なので写真は撮ってません…)見えると間もなく終点の出雲市駅に到着。
 今回は1時間程度遅延した為、約13時間という半日以上の乗車。確かに設備的には25年を経過して古さを感じる部分もあり、いつ廃止されるかもわからない。最初で最後のつもりでA寝台に乗車したが、とにかく非日常のかたまり。正直揺れが気になってあまり眠れなかったのはあるが、一生の思い出になるであろう13時間だった。

◆2日目…島根をサクッと堪能

出雲大社周辺散策

 サンライズを下車してまずは出雲市内を散策。定刻であれば9:58の到着であったが、1時間近くの遅延が発生したため、当初の予定だった一畑電車ではなく一畑バスで出雲大社へ。出雲市駅から出雲大社までは降車バス停によっても違いがあるが、電鉄でもバスでもおよそ500円前後。電鉄は乗り換えが発生するので、時刻表も加味しながら定時性なら電鉄、乗り換えなしならバスといった使い分けがいいだろう。

厳かな雰囲気の出雲大社


 サンライズの遅延により大社は御本殿を覗く程度だったが、今回はその横にある島根県立古代出雲歴史博物館へ。出雲大社を中心に当時の島根県域の歴史や出雲国風土記の展示、古代の青銅器や金刀に出雲神話の展示など、正直1時間では駆け足でしか巡れない程のボリューム。古代史が好きな人は特に楽しめると思う。


 そうこうしているとお昼時の時間で、出雲大社周辺は観光地化しているのでお店は迷う程にある。今回は『日本海直送!とれとれ海鮮丼  マルセン』さんにて、島根名物の1つである”のどぐろ”を使ったのどぐろ丼を頂いた。


 のどぐろといえば今では高級魚のイメージだが、山陰では言わずと知れた名物。脂身と締まり身は両立することを実感する美味で、一緒に盛り付けられているしらすも良いアクセント。のどぐろ丼に限らずメニューも豊富で、出雲そば以外に…という人にオススメのお店。


 今回は上記の遅延によりせっかちな日程になったが、出雲大社の周辺には古民家をそのまま利用したオシャレなカフェや、西に15分程歩くと日本海を眺望する稲佐の浜などがあり、正直まだまだ見足りないところではあった。

一畑電車で松江へ


 午後は出雲から松江へ一畑電車で移動。車両は旧京王電鉄で使用された2100系。全座席が同じ向きを向いており、簡単なテーブルもある。車窓は一畑口でスイッチバックした後は宍道湖を間近に眺めるレイクビュー。1時間かけて松江しんじ湖温泉駅へ。

やや高級感も感じる車内
宍道湖のレイクビュー


 ちなみに一畑電車はまごうことなき地方ローカル鉄道だが、なんとFREE Wi-Fi完備。乗車券の購入も現金のみならず交通系ICにクレジットカード、Edy系、Pay系にnanacoやWAONなど、ほぼ全ての電子マネーが使用出来る。実は島根県は有名IT企業がオフィスを構えていたりとIT先進県で、街中含めてもキャッシュレスは進んでいると感じた。一方で電鉄には自動改札がなく、今や珍しくなった入鋏式の切符はまさにローカル線の風景だった。

Wi-Fi完全完備の一畑電車
昔懐かしい入鋏済の切符

国宝松江城


 松江といえば…もちろんの松江城へ。鉄道駅ではしんじ湖温泉駅の方が近いが、松江駅からもバスが出ているのでアクセス面は容易だろう。
 松江城は日本に12しかない現存天守であり、5つしかない国宝の城。天守は無骨な黒い塗装でまさに敵を寄せ付けない威圧感を感じた。天守の内部は観光資源と化している部分かもしれないが、松本城や松山城に比べると昇降が怖いぐらいの階段ではないとは感じた。特に松本城は16世紀に築城されており、そういう面でも重きを置くのは防衛か権威の象徴か…と考えながら登城した。

聳え立つ国宝・松江城


 松江城は天守のみならず、明治時代の迎賓施設である興雲閣は近代建築としても非常に価値が高い。また周辺施設も充実しており、北側にはラフカディオ・ハーンの本名で知られるギリシャ生まれの小説家・研究家の小泉八雲の記念館や旧宅がある。

銀杏の落葉と映える興雲閣


 今回は時間の都合上で東側にある松江歴史館のみの見学。歴史館は武家屋敷を模した建築で、展示としては松江城と城下町にフォーカスした展示。館内には日本庭園を眺めながら休憩出来る『喫茶きはる』が併設されており、とことん和を感じられる施設。たまには和菓子と抹茶でも…と思わせてくれる。

お手洗いまで和のテイストが映える
松江歴史館は和をモチーフにする

宍道湖の夕陽と出雲そば


 そろそろ夕刻の時なので宍道湖に沈む夕日を…と思ったが、生憎ギリキリ雲に隠れてしまっていた、かつ風が物凄く強かったので、散歩だけして松江駅の方面へ。

京橋川に掛かる橋から


 ちょっと早いがここで夕食。夕食は出雲大社や出雲空港にも出店している『奥出雲そば処一福』さんの松江一畑店。松江駅すぐ横の島根県唯一の百貨店である一畑百貨店に店を構える。寒い日でもあり、私が注文したのは店オススメの舞茸天ぷら温そば。優しい出汁の風味や出雲そばの食感など含め、非常に落ち着く味。身も心も温まる一杯だった。与太話にはなるが、一畑百貨店は2024年1月末での閉店となり、店内でもしきりに閉店セールが案内されていた。65年に渡り島根の人の生活を支え続けた唯一の百貨店が無くなるのは、初めて訪れた私も寂しく感じた。

一畑百貨店の出雲そば

島根スサノオマジック観戦


 食事後に向かったのは松江市総合体育館。バスケBリーグの島根スサノオマジックと千葉ジェッツの試合を観戦。島根スサノオマジックは2年連続CS出場中、山陰から全国屈指の強豪に成長したチームで、対戦相手の千葉ジェッツは2年連続でCS決勝進出している常勝チーム。先のW杯で主将を務めた富樫勇樹らスター選手も所属。好カードの影響もあってか、金曜ナイターの条件ながらクラブ史上最多の観客動員数を記録。試合も島根が千葉相手に31点差を付ける大差ゲームという、島根の人にとっては最高の展開で終了。エキサイティングなバスケ観戦となった。

試合後の松江市総合体育館


 翌日の予定の為に試合後は松江から鳥取県の米子へ移動。本日の宿は米子駅から大通り沿いに徒歩4分、地方都市を中心にチェーン展開しているホテルアルファーワン米子さんに宿泊。外見的にはやや古さを感じるものの、ホテル内部は綺麗で大浴場もあり、立地的にも山陰の拠点にしてもいいだろうホテル。

◆3日目…鳥取、そして東へ東へ

 この日のスタートは米子駅から特急スーパーまつかぜに乗車して東へ。県都・鳥取には人生初来訪。

2両編成の特急スーパーまつかぜ

鳥取砂丘


 鳥取に到着してまず最初に訪れたのはやはり鳥取砂丘。鳥取駅から鳥取砂丘へのアクセスは、公共交通機関だとバスということになる。私は時間が合わなかったので路線バスで訪問したが、土休日であればループバスの麒麟獅子バスを使用するのが便利。運賃もこちらの方が少し安く、砂丘での停車バス停もゲートの前まで行ってくれる(路線バスの場合は砂丘の入口にある砂丘東口バス停の便が多い)かつ、その他の鳥取市内の観光地に特化したバスなので、観光客としては使わない手はないだろう。


 今回は次の予定のために30分弱の滞在時間と強行日程だったが、せっかくなのでリフトに乗って高い位置から砂丘とその先に見える日本海を眺めながらの来訪…だったのだが、冬の日本海側特有とでも言うか雨模様。おまけに日本海に聳えるだけに風も強く、冬の雨風に打たれながらという観光環境としてはとてつもなく過酷ではあった。しかし砂の山とその奥に眺望する日本海の地平線は、そんな環境でも来て良かったと思わせてくれる風景だった。

鉛の空、青い地平線、茶色の砂丘
ロープウェイから眺める砂丘

Axisバードスタジアム


 鳥取駅に再び戻って次は臨時シャトルバスに乗車。Jリーグのガイナーレ鳥取のホームゲーム観戦の為、Axisバードスタジアムへ。この日はリーグ最終戦、対戦相手の鹿児島ユナイテッドはJ2昇格が掛かった試合ということもあり、シャトルバスを1本見送る程の鹿児島サポーターが大挙した。
 試合は昇格を決めたい鹿児島と、退任が決まっている増本監督のラストマッチの鳥取とで一進一退。鳥取がPKで先制するも、鹿児島が途中出場の山本のゴールで追い付き1−1でタイムアップ。見事にJ2昇格を勝ち取った。鹿児島ユナイテッドの皆さん、昇格おめでとうございます。
 上述したシャトルバスの混雑でスタジアムグルメを堪能出来なかったのは残念だが、Axisバードスタジアムは田園風景の中に広がる球技専用スタジアム。ふらっと青空の元で観戦するのにはうってつけの良いスタジアムだと感じた。

メインスタンド特等席から

山陰本線を東へ


 鹿児島サポーターの歓喜を見届けてから鳥取駅に戻る。もう1つの目的だった、ある意味で鳥取の名物になっている”すなば珈琲”に向かったが、ここで予想外の出来事が…。すなば珈琲の鳥取駅周辺の店舗は2店舗あるのだが、鳥取市役所店は役所閉庁日の土休日は休業。もう1店舗の”新”鳥取駅前店がなんと訪問日は臨時休業。私のリサーチ不足が悪いのだが、鳥取にリベンジする機会が発生したと捉えよう。
 という訳でこの日は食に関して想定外が続いたが、次の行程の為に駅へ戻る。山陰本線を東に進み兵庫県方面へ。兵庫県に突入し浜坂駅で乗り継いで兵庫県北部・但馬地方の中心である豊岡へ。

浜坂駅から存在感を放つ温泉郷の入口

豊岡市街地の出石そば


 既に夜になっていた為、本場の出石地域にまでは行けずだったが、豊岡市中心部にある『大門』さんにてそばを賞味。和紙に綴られた雰囲気のあるメニュー表を片手にしながら、月見とろろ蕎麦にとり天を注文。2日連続の蕎麦になるが全く飽きない優しい味で、やや細麺の出石そばに出汁がマッチして寒い日には最高の相性。またとり天は一口サイズで提供され食べやすく、大分出身の私も大満足の味。店内もネオ和風な感じの内装でおしゃれ、行きつけにしたくなるお店だった。

枡に入ったとり天
優しい味の出石そば


 豊岡市内といえば城崎温泉だと思うが、昨今の宿泊費高騰もあり豊岡駅すぐ近くの豊岡グリーンホテルモーリスへ。山陰を中心に5店舗を展開するホテルで、スーパーホテルのように様々な枕を用意しているのが特徴。水風呂が用意されていないのは残念だが、大浴場にはサウナも併設されているので宿泊先で整うことも出来る。館内アメニティも充実しており、全国的にはあまり有名ではないが非常に満足度の高いホテルだと思う。

◆4日目…南下して紫の古都へ

豊岡市街地探訪


 最終日は兵庫県北部の豊岡からスタート。特急まで少し時間があった為、豊岡の街をぶらり散策。名所の1つとなっているカバンストリートは開店時間になる前だったので街の雰囲気だけだったが、豊岡はコウノトリの街としても知られモニュメントも設置されている。

カバンの自販機は休止中
あの国民的アニメを彷彿とした土管
コウノトリのモニュメント


 また交通系マニアでもある私が密かに楽しみにしていたのが、旧国道426号の寿ロータリー。日本では非常に珍しいロータリー交差点で、かつては日本に2例しかない国道に存在するロータリー交差点(他には沖縄県糸満市にあった)でもある。寿ロータリーが更に珍しいポイントなのはなんと設置されたのが大正時代であること。パリの凱旋門を模したロータリーで、当時としては当然ながら異例。かなり貴重で歴史あるスポットであり、交通系マニアとしてはレアな物を見れたと思う。

日本では珍しいロータリー交差点


 豊岡は私の地元である大分県の佐伯市とほぼ同規模の街で、それこそカバンストリートは佐伯市の中心街を見ているようで懐かしさを感じた。

サンガスタジアム by KYOCERA


 その後は特急きのさきに乗車して山陰本線を南下。この辺りの但馬国や丹波国は通り抜けたことすらない地域で、車窓にも新鮮味を感じた。そうこうして2時間乗車した後に亀岡駅で下車。

特急きのさきに使用される287系


 亀岡駅北口すぐに位置するサンガスタジアム by KYOCERAにて京都サンガと横浜F・マリノスの試合観戦へ。この日は最終節で、チケット発売時点ではマリノスの逆転優勝の可能性が残っていたのもあり、2020年の開場以来歴代最多となる18,500人の観客動員数を記録。ほぼ満員の中での試合は、前半にマリノスが先制するも前半の内に退場者を出し、後半は完全にホームのサンガのペース。キャプテンの川崎のゴールなどで3−1で最終戦を勝利で締め括った。
 サンガスタジアムは開場してまだ4年目の最新スタジアム。紫の座席がとにかく映えるし見やすさも抜群なスタジアム。またスタメン発表映像では毎年京都出身バンドの10-FEETを使用しているが、2023年は紅白出場曲にもなった『第ゼロ感』を使用。この演出が見たくて2023年中の観戦を…と思っていた。

紫が映えるサンガスタジアム

 先の理由で終了後の亀岡駅は大混雑。少し時間に余裕を取っていたのでホーム最終戦のセレモニーまで残って混雑回避を待つことに。私は挨拶が終わってから退場したので17時頃には乗車出来たが、最後の選手1周まで見届けたサンガサポーターの混雑で一時は入場規制がかかっていたようである。満員ギチギチの嵯峨野線を約30分乗車して京都駅へ。

手短な京都らしさ

ライトアップされた京都タワー
夜に映える東本願寺

新幹線の時間まで少し余裕があったので、夜の京都タワーと本願寺をサクッと見てから帰路へ。実質3泊4日の国内ではかなり長めの旅が終わった。

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