「雨天のためお休みにします」
今日は朝から雨だ。勤務先からメールが届いた。ちょうどいい機会。わたしの仕事のことについて書くことにする。
大きなくくりだと林業。林業というと、ヘルメットとチェーンソーというイメージだが、わたしが働いているのは苗木屋さん。畑で小さな苗木を種から育てる。どちらかと言えば、農家さんに近い。
わたしは、ただのパートのおばさん。経営者でも家族でもない。知らないことも多いし、苗木屋さんの企業秘密もあるかも。多くは語れないが「そんな仕事もあるのか」と思ってくださるとうれしい。
仕事は4月、種を蒔いて1〜2年経った苗木の選別から始まる。畑に植え替えるのだが春はまだ先。雪を敷きつめた冷蔵庫に保管する。ここ北海道は、まだまだ色々なものが降る。雨、みぞれ、雪、あられ、ひょう。晴れた日に苗を抜いて、ストーブをつけた倉庫の中での作業となる。
平行して、植え替えて2〜3年経った苗木の出荷もある。扱っている種類は、スギ、ヒバ、カラマツ、トドマツ、アカエゾマツ。昨日は50㎝ほどに育ったトドマツ16,000本がお嫁に行った。北海道のどこかの山に植えられるらしいが、詳しいことはわからない。誰も尋ねない。治山のためなのか、材木になるのか。たまに役人らしき人が工事現場みたいに黒板と写真を撮っていく時は、国有林や道有林に植えられるのだろうと思っている。
基本的には家族と親戚が中心。わたしのようなパートは何人かしかいない。6年前、青空の下で働きたくて仕事情報誌に載っていたこの苗木屋さんに連絡、その日のうちに面接してもらった。“ここで働きたい”アピールが過ぎただろうか。後で仕事仲間に「スーツに長靴で面接に来て、畑まで見学して行った人は他にいない」と笑われた。
倉庫での選別作業が終わったので、これからは畑での仕事ばかり。選別した苗木の植え付けや種まき。で、今日のように雨が降ったら休みになる。誰?「いいなぁ」なんて言った人。8時から5時までのフルタイムなのにパートなのは、働いた時間だけの時給だから。雨が降ってきたらその日の仕事は終わり。行ってからの雨でそのまま帰ってくることもある。
この仕事をはじめてから、四季の移り変わりに敏感になった。もともと木や花、鳥や虫も好きだったので、自然と一緒に生きていることを実感している。色々あって離婚もしたけど、今は好きなものに囲まれていて幸せ。ようやく本当の自分らしくなれたと思っている。
時々、仕事をしながら青空を見上げる。苗木が植えられた山の上も青空だろうか。どこの山かはわからないけれど、元気に育っていってほしい。「わたしの仕事は、未来につながっている」と、ひとりひそかに自慢している。
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