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残り物一掃スープ、でパンダ飯店

台所を切り盛りしている者に、つねづねつきまとう悩み。

それは冷蔵庫のハンパ者たち。



お宅の冷蔵庫の、主に野菜室あたりに潜んでいませんか?人知れずひっそりと色を変え、肌艶を失い、朽ち果ててゆかんとする有象無象が。

えっない?あっハイ大変失礼いたしました……ここから先は、あなたのように崇高な意識をお持ちの方のお目には大変毒でございますんで、どうぞお進みになりませんように。えっ我が家?常になにがしかの野菜が絶妙に中途半端な量で余ってますけど何か?(逆ギレ)


日ごろ呑気なひとり住まいをヌフーンと堪能している私なのだけれど、そういう呑気な暮らしの代償として、中途半端に残ってしまう食材。彼奴等をいかにして穏当に成仏させるか……ってのは、けっこう切実な命題だったりする。お肉とかお魚はいい、とりあえず冷凍できるから。まあ冷凍したっきり平気で半年くらい放置しちゃって、気づいた時には化石化してたりもするのだけれど。

しかしお野菜は、なかなか冷凍が難しいわけです。ねぎとかきのこ類は、まとめ買いしてきたらいっぺんに刻んだり切ったり裂いたりして、小分け冷凍ができる。ほうれん草や小松菜なんかの青菜も、さっと茹でて小分け冷凍できる。でもにんじんとかキャベツとかなすとか、何かと使い勝手がいいのに冷凍が難しい奴ら……非常に悩ましき存在なわけです。

そうやって中途半端に残してしまった野菜たちを、うっかり野菜室の中で死に至らしめてしまった時の絶望感たるや……同じ罪に手を染めた経験のある方なら、お分かりいただけるかと思う。私も今までに数々のハンパ者たちを、人知れず闇へと葬り……ああ……(悔恨)。過去の過ちを文字起こししたら、玄武の章白虎の章青龍の章朱雀の章くらいまで余裕でいくよ。各巻全108話。

食べ物を粗末にすることは言うまでもなく愚行である。それに、そうした惨劇は自己肯定感を著しく傷つけることにもなる。よってなるべく避けたい事案だ。さて、そういう時めんどく星人はどういう手段でフラグ回避するか?


むろん汁物一択。

切って煮ちまえばなんとかなる。


というわけで今夜の晩ごはん、残り物一掃中華スープ。冷蔵庫の中でご臨終を迎えかけているあれやこれやを、手厚く葬って成仏させてやろうという試み。

切り口が、真冬のソロキャンプ時の私の鼻の中(真冬に野外で一晩を過ごすと、びっくりするほど鼻の穴がカラッカラになる。豆知識な)みたいに乾きかけていた玉ねぎ半個を、薄くスライス。切り口がうっすら黒ずんできているキャベツ1/4個は、変色した部分を切り落としてからざく切り。末端に苦悶の皺を刻み始め、もう少ししたらマンドラゴラに進化してしまいそうな風貌のにんじん半分は、皮つきのままよく洗ってから、薄めのいちょう切り。これらを切る傍から鍋に放り込んでおく。(※損傷が激しい部分は適宜カットしています)

冷凍室から発掘した、今や立派な化石となり果てているベーコンを、1cmくらいに細切り。同じくいつから居座っているのか分からないひらたけと一緒に鍋に放り込んだら、適量の水を入れて火にかける。最初は強火でガンガンあおり、煮たってアクが浮いてきたところで、これをていねいに掬い取る。おろしにんにくとおろししょうが(チューブのもの)を追加して、さらに鶏がらスープの素とお酒少量。火加減を弱めの中火に落として、全体がいい感じにしんなりするまで煮込んでゆく。……といっても唯一の根菜は薄めに切ってあるので、わりと早くいい感じになります。そうしたら水気を切ったスイートコーンの缶詰(賞味期限ギリギリアウト)を入れて、もう一度アク取りをする。ここで味をみて、物足りなければ塩か醤油をちょいと落とす。黒こしょうも振る。スープの味が決まったら、ちぎったレタス(これは新鮮なもの)を入れ、さっとかき混ぜて火を止める。丼に盛りつけて、仕上げにぬるま湯で戻しておいたクコの実を飾ってできあがり。


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週末に届いたまんぷくパンダシリーズのオーバルプレートには、4割引きで買ってすっかり忘れていた冷凍焼売をレンチンしてスタンバイ。へっへっへ。簡易版のパンダ飯店じゃーい!


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くっ……まったく、なんという


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なんというかわいらしさよ……(震え)


なんかどのパンダちゃんも「コテン」とか「コロン」みたいな擬音が似合う感じなのがたまらん。そのうちマジックで擬音を書き足すかもしれない。


とまあ、そんな感じで。冷蔵庫の残り物を適当にぶちこんだだけの手抜き中華スープ。なのだけれど、これがなかなかにおいしいのだから侮れない!油っけは少しだけ入れたベーコンのみなので、スープはさっぱりとした口当たり。けれど最後の力を振り絞ってくれた野菜たちの旨みが、鶏がらスープ味にふんだんに溶け込んでいて、とてもおいしい!玉ねぎとキャベツの甘さがうれしいねぇ。しんなりした野菜のあっさり味に、ベーコンとにんにくのパンチがさりげなく効いている。火を止める直前に投入したレタスは、一瞬の加熱によってうつくしい翡翠色になっていて、シャリシャリっとした食感が楽しめるのもグッドグッド。そして、どかんと一缶投入したコーン!これがねえ、ほんのりとした甘みでもって、有象無象たちをやさしくまとめ上げてくれている。コーンと中華味って、なにげに相性いいですよねー。とてもよい働きぶり。最後に散らしたクコの実の、フルーティな甘酸っぱさもいい感じだった。うーん、大半が死に体だったとは思えない味わい!野菜もたっぷり取れて、大満足。ごちそうさまでした。


こうして無事、重篤患者だった残り物を処理できた……と思ったのだけれど、汁物を作る時の常として、微妙にお椀いっぱい分くらいのスープが残ってしまった。タッパーに入れて冷蔵保存したので、残りは近日中に食べようと思います。今度はナンプラーかごま油でも落としてみようかな。


汁物ってさ、なんで多めにできあがっちゃうんですかね。

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