ソロキャンプ 2021.12.3-4②羊肉と星空編
6回目のソロキャンプ記録、前回からの続きです。
午後4時を過ぎて、富士山が朱に染まり始めた。ということは、そろそろ晩ごはんのお時間であります。
この時期の日没はあっという間だ。暗くなってから料理をしたり食事をしたりすると、粗忽者は何かをひっくり返したり、焼かなくていいものをウェルダンにしたりする可能性が高まるので、早めに晩ごはんに取りかかるようにしている。個人的には、日没と同時に晩ごはんが終わっているくらいがベストだ。
さきほど林間サイトで拾ってきた松ぼっくりを着火剤にして、焚き火台に火を起こす。松ぼっくりがめちゃくちゃいい仕事ぶりでびっくり。すんげー燃えるでやんの!冬の間に地元でも拾っておこうかしら……(片田舎ゆえ、そこらじゅうにごろごろしている)。
今回のキャンプ飯は、
ラム肉(100g198円)、王族ウィンナー・ジョンソンヴィル(チーズ味)、男爵野郎を焚き火で焼くだけのお手軽メシ。
焼けたらクレソンと共に一皿に盛り合わせて、強欲モロ出しの肉プレートであります。日頃、100g100円以上ノ肉ヲ食フベカラヅという戒律に則って暮らしているので、もはやこれはセレブの晩餐と呼んでも差し支えあるまい。
ラムステーキは半分にカットして、それぞれほりにしとベルの成吉思汗たれで食べる。ソロキャンプで肉を焼くのはこれが初めてだったけれど、語彙という語彙が失われるレベルでうまいです……(感涙)。香ばしい炭火の香りが移ったお肉から、肉汁がジワ~っとね!ジワア~っと!!ちょっとクセのある羊肉の匂いが、野外で味わうと実にたまらない。直火でお焼き申し上げた王族ウィンナーも、毎度のことながら涙ぐむほどおいしい……!王族からやんごとなき芳醇なジルがブシャーて!ブシャアーってね!そんでこの王族ジルが、クレソンのほろ苦さにまあ合うこと合うこと。もう二人付き合っちゃいなよってくらいの相性の良さである。赤ワインがすすむくんです。
寒冷キャンプに熱い汁物は欠かせないってーことで、今回はザワークラウトのスープ。おてだまさんに教えていただいたザワークラウト、あまりに気に入りすぎてソロキャンプにも連れてきてしまった。先日作った白菜漬け鍋がとてもおいしかったので、このザワークラウトも鍋で煮てみたらおいしんではないの……?と思ったのだ。ちょっと調べてみたらレシピもたくさん見つかったので、欧州ではポピュラーなメニューなのかな。
作り方はこれまた簡単、鍋にザワークラウト、薄切りにした玉ねぎ、水を入れて火にかけ、煮立ってきたら王族ウィンナー・ジョンソンヴィルを投入し、コンソメ顆粒とほりにしで味を整えたらできあがり。ザワークラウトの酸味が玉ねぎの甘みでまろやかになっていて、ほどよいしょっぱすっぱさ。洋風の酸辣湯といった風情で、とてもさわやかだ。にんにくとアンチョビの風味も効いている。くたくたに煮えたキャベツと白菜に、王族ウィンナーから迸るチーズ味の肉汁が、これまた文句なしに合う……ウマイッ!!
この時点で気温はすでに1℃台。風はほとんどないものの、どんどん強まっていく冷え込みが身に凍みる。そんな中ですする熱いスープ……正直、肉よりうまいです……(感涙)。これ本当においしかったので、今度家でも作ろう。
お肉部隊より遅れて焼き上がった男爵野郎も、皮はゴリゴリに焦げていたけれど(お肉にかまけて面倒見るの怠った奴)、中はホッコホコに焼き上がってくれていた。焦げた皮を剥がしつつおいしくいただく。甘い……どこまでも果てしなくやさしい甘み。何もつけずにひたすら芋を貪るマッスィーンと化す。
晩ごはんを貪る間にも、目の前の景色は一刻ごとに変化してゆく。マジック・アワーだ。大変お行儀が悪いけれど、肉を頬張り芋をワシワシと咀嚼しながらも、ついついカメラのシャッターを切る。蒼い夕闇が少しずつその濃度を増し、富士山の真っ白な雪がうつくしい赤紫色に染まってゆくさまは、何度見ても見飽きるということがない。
とまあ、そんな具合で片手間に晩ごはんを食べたせいか、いつになく大量であったのに気づいたら全て胃に納まっていた。ごちそうさまでしたゲフー。しかしちょっと食べすぎたなあ……苦しい。もう、お酒しか入らない……。
日が完全に沈みきり、空に瞬く星々がその輝きを増してくるまで、赤ワインをすすりながらしばしボーっとする。
と、湖畔サイトの下段側からひとりの男性が近づいてきて声をかけられた。
「あのー、もしかしておひとりですか?俺も一人なんですけど、よかったら一緒に呑みません?」
な、ナンパでございますかッ?!!!(非モテ系らしい過剰反応)
初対面の殿方からお誘いを受けるなんて、実に百億万年ぶりである。正直ちょっとうれしかったけれど、丁重にお断りさせていただいた。わたくし既に心に決めた方がおりますし(自意識過剰すぎて草)、たった今遭遇したばかりの初対面の方と呑んだりしたら、緊張のあまり酒が進みすぎて間違いなく泥酔する。それは困る。そんなことになったら星撮り練ができなくなってしまうのでな。
今までのソロキャンプでこんな風にお誘いされることはなかったので、ちょいとドキドキいたしました。
こんなんはキャンプ界隈ではありふれたシチュエイションで、これをナンパと捉えるのは過剰反応だと自覚はしている。しかしながらこちとら、長年遊びで非モテ系やってないんでね……!!ここはひとつ貪欲に『モテた♡』カウントに加えさせていただきたい。
そうこうしているうちに、いよいよ星明かりが増してきた。テントに戻って防寒着に着替え、ぶんぶくれのモッコモコスタイルに身を固めて、いざ、出陣であります!
新月の夜、空は雲ひとつない快晴のピーカン。そして微風。
完璧です……完璧すぎるシチュエーション!ありがとう浩庵……!!!(拝み)
さすがに前回の長野と比べると、光害はきつめだ。けれど、予想以上に星がくっきりと見えて感激する。
自サイトでしばらく撮影したあとは、坂を上って管理棟横の展望スペースに移動する。カメラと三脚をかついで上がると、あの勾配はなかなかにエグかった。ふうふう言いながら展望スペースまで辿り着き、お楽しみの星シャー真撮影に取り掛かる。
ライヴコンポジットで50分くらいかけて撮影。午後7時半とまだ早い時間帯のせいか、飛行機の軌跡がかなり写り込んでいる。飛行機って、小一時間くらいの間にずいぶん飛んでるんですねえ……。
展望スペースには誰もおらず、撮影中は満天の星空を独り占めすることができた。ただ、展望スペースの反対側の暗がりから、撮影中ずーっと「ガサゴソガサ…ゴソ…ゴソォ!」みたいな物音がしていたのがだいぶ怖かった。まさかとは思うが、ひょっとして暗がりの中に井戸があって……そこから世界的にも著名なS女史が今正にご出陣なさらんとしていたりして……等と考え始めたら精神に恐慌をきたしかけたので、すみやかに考えるのをやめました。
音の大きさ的に、たぶんタヌキか何かだったと思う。
その後は再びテントサイトに戻り、
マイテントと星空を撮影。やはり前回の長野に比べると周囲の灯りも多いので、アングルを決めるのに四苦八苦した。
その後、湖畔ぎりぎりまで移動する。
おおっ。
私が唯一認識できる星座ことオリオン座がだいぶ昇ってきてるじゃないのォ。ヨッシャヨッシャ!
何十枚か撮影したのち、ここにカメラと三脚をセットして、再びライブコンポジットで星シャー真の撮影を試みることにした。
今度はサイトからすぐに様子を伺える場所にセットしたので、自サイトに戻って再び焚き火タイム。ワインが空になってしまったので、ウィスキーのお湯割りをすすりながら炎に見入る。
星空も素晴らしいけれど、炎の揺らめきもまた、素晴らしい。いつまでも眺めていられる。本当に飽きない。
合間にカメラの様子を確認するため、自サイトと湖畔を行ったり来たりすること1時間ちょっと。
70分後、こんなん撮れてました。
富士山を入れての星シャー真、念願だったのでとてもうれしい……。対岸の灯りもいい感じだ。
私の三脚は安物なので、あまりに風が強いと耐えきれずに揺れたりぶっ倒れたりするのだけれど(経験済み)、この夜は午前中の強風が嘘のように静かだったのがありがたかった。しかも湿気も少なかったので、前回の長野みたいな「レンズもんやり現象」も発生せず、ハクキンカイロは頼もしい温度で私の身体を温めてくれていた。
ソロキャンプに来るとついつい夜更かしをしてしまうのだけれど、今回は明け方の富士山を狙うという野望も秘めていたので、午前0時頃に後ろ髪を引かれつつテントに戻った。全身に「貼るマグマ」を鎧のように装備し、寝袋に潜り込んで就寝。でもやっぱりさぶくて、夜中に何度か目が覚めてしまった。寒さ対策は、あともうひと工夫必要だなあ。
次回は完結編。朝の富士山をお届けいたします。